遊園地プレオープン、そしてお花見 後編
前後編だというのに、投稿が遅くなってスミマセン!!
「では、みなさん。遊園地を楽しんでください!」
コザクラ町の町長さんの挨拶と共に、歓声が上がる。
初対面にもかかわらず仲良しになった子供たちが、人間も獣人も関係なく遊具へと向かう。
年長の子供たちのお目当てはトランポリンと滑り台、小さな子たちは保護者と一緒にミニSLだ。
「みなさん楽しんでくれるでしょうか」
「大丈夫ですよ、待ちきれないという声がすごかったんですから」
町長さんは人間の男性で、50歳くらいの実に人のよさそうなおじさんだ。
しかしフェラリーデ様によると、ほわっとした見た目を裏切るデキる男だそうな。
「そうだといいのですが。色々と協力していただいてありがとうございます、マリウスさん」
「いやいや、こちらこそお礼を言わねばなりませんよ。遊園地の売上金で例のウェディングドレスを大量生産しましょう!」
確かにデキる男らしい、目の色が変わっている。
「新しい産業が生まれれば、町の皆の暮らしも更によくなります。
裁縫なら年寄りでも出来ますし、シングルマザーでも自宅で仕事が出来ます。軌道に乗れば託児所を設けた仕事場を作ることも可能でしょう」
しかもいい人だっっ!さすが町長さん!
「そうですね、全面的に協力しますから皆で力を合わせて頑張りましょう!」
マリウスさんと固い握手を交わす美波だった。
園内を歩いていると、ミニSLの上から呼ぶ子供たちに誘われて一緒に乗ることになった。
前の座席に孤児院所属のミアちゃん3歳を乗せてしっかりと抱え込む。
「おねえちゃん、すごいねぇ、うごいてるよ!」
大興奮で身を乗り出すので、捕まえておくのが一苦労だ。
「ミアちゃん、ほら見てごらん。お兄ちゃんお姉ちゃん達が飛んでるよ」
子供用トランポリンの横を通る時に教えてあげると、目をキラキラさせて年長の子供たちを見つめている。
「すごいね!ミアもやりたいな、あとでやってもいい?」
ミアちゃんの問いに、前の席に座っていたマリアさんがこちらを振り返って優しく言った。
「後で行きましょうね。小さい子だけで遊ぶ時間を作ってくれるそうよ、皆で遊びましょう」
わ~い!と子供たちの歓声が上がる。
バリアがあるし、小さい子だけなら大丈夫だろう。
ミニSLは3つのトランポリンの横を通り過ぎて滑り台エリアへ向かう。ちょうど大人用滑り台の出口から飛び出してくる人を目撃した子供たちは、目を見開いて固まっている。
滑り台の外の行列にはハクロウ村の村人も混ざっていて、美波に気づくと手を振ってくる。
既にテンションマックスな彼らに手を振り返して、次に向かうのは子供用の滑り台だ。
「こっちは子供用だよ、ほら町の子たちも並んでるね。あっ、ハク、ユキちゃん!」
手をつないで仲良く順番待ちをしている2人に手を振ると、ぴょんぴょん飛び跳ねて手を振り返してくれた。
「大人と一緒なら小さい子も大丈夫だから、後でやってみてね」
遊具の間を縫うようにゆっくり進むミニSLは、のんびりと一周して元の位置に戻ってきた。
順番待ちをしていた人々と入れ替わり、思いのほか長くなっていた行列にびっくりする。
「大盛況ですね、ミニSLは他と比べると地味なのでそんなに需要があると思っていませんでした」
「地味なんてとんでもないですよ美波さん。どれも見たことがないものばかりですし、小さい子たちにはこれが丁度いいです」
マリアさんの言葉に、改めてここが異世界なのだと思い出す。美波には見慣れたものも、ここでは未知の品なのだ。
「そうでしたね、でも想像以上に小さな子が大勢いるんですね。もう少し小さい子向けの遊具があってもいいかもしれません、後でフェラリーデ様に相談してみます」
マリアさんはにっこり笑ってミアちゃんの頭を撫でる。
「コザクラ町は良い町ですからね、仕事もあるし便利なので若い夫婦の移住も多いんですよ。だから子供も沢山いるんです」
そう言われて改めて周りを見ると、祖父母と孫夫婦プラスひ孫みたいなグループが結構いることに気づく。独り立ちして都市部で暮らしていた子供たちの子供、つまり孫世代が戻ってきて祖父母と暮らしていたりする家も多いらしい。
もちろん先祖代々ここで暮らす人もいるので、どの世代に偏ることもなくいいバランスになっているようだ。
マリアさんとミアちゃんと別れて、美波は遊具を間近で見るべく歩いてみることにした。
遊園地は幸せな音に満ちている、笑い声や歓声に楽しそうな会話のざわめき。(時々悲鳴も聞こえるが)
「思い出すなぁ、みんなで行った遊園地。どうしてるだろ、元気かな」
仲の良かった女友達を思い出しクスリと笑う。
今の美波を見たら皆うらやましがるに違いない、ここはケモミミパラダイスだ。
モフモフ好きの同志だった友人を思い出しつつ辺りを見回せば、人も獣人も区別なくみんな笑顔だ。
しばし日常を離れて思い切り遊ぶのは、やっぱり良いものだ。
「美波、ミニSLはどうだった?」
肩をたたかれて振り返ると、ミナトさんとフェラリーデ様だった。2人とも利用者の感想を聞きつつ周ってきたらしい。
「ええ、好評でしたよ。特に小さい子とお年寄りには喜ばれていましたね、でも予想より小さい子が多くて、ほかの遊具も作った方が良いかもしれません」
村にあるのより大きなボールプールを提案すると、フェラリーデ様はすぐに了承してくれた。
「でも美波さんの負担になりませんか?」
「大丈夫ですよ、一度作ったものなのですぐに出来ます。どこに作りましょうか」
相談の結果トランポリンの横のスペースに作ることになり、すぐに取り掛かる。
ハクロウ村の村人達はもう見慣れているが、何もない空間に突如出現する建物に、見物人は目を見開き口を開けて固まっている。
他の遊具と同じように中が見えるよう透明な壁で四角く囲んで、中は階段や小さな滑り台で移動できるようにして、高さを変えたボールプールをいくつも作る。
もちろんしっかりバリアを張って、見物人の目を意識しつつボールを大量に作り出していく。
美波の指先からこぼれ出る色とりどりのボールは、瞬く間にプールを満たした。
「こんなもんかな、これなら小さい子も遊べるでしょ」
建物から出てフェラリーデ様に確認すると問題点はないとのことだったので、待ちかねていた子供たちに遊び方を説明してドアを開ける。
大はしゃぎでボールの中にダイブする子や、階段を使って最上段まで登って滑り台で滑る子、みんな楽しんでいるようだ。
ちなみにボールは下にたまりすぎないよう、一定の量を超えると最上段に自動で戻るようにした。
「お姉ちゃん、ぼく達もやっていい?」
いつの間にか隣にいたハクとユキちゃんは、村のより大きなボールプールに大興奮である。
「もちろんいいよ、行っておいで」
手をつないで突入した2人は、ちゃんと人間の子供たちを気遣っていつものバク転を封印して大人しく遊んでいる。
「うん、いい傾向だな。自分より小さい子や力の弱い人間の子を、ちゃんと思いやって一緒に遊べている」
ミナトさんは目を細めて2人を見つめている。やっぱりおじいちゃんなんですね、客観的に感想を述べていてもしっぽがブンブン揺れてます。当たってます、ちょっと痛いです。
「フフフ、そうですね。子供たちにとってもいつもと違うお友達と交流するのはいいことですね」
微笑ましい光景にほっこりした気分になる。
ボールプール越しに見えるトランポリンでは、8メートル位の高さでひねりを加えた回転技を決めるユーリが見えているけれど....
「そうだ美波、もうじきギンの両親が里帰りするぞ、春祭りの間はいるはずだからよろしくな。
色々とびっくりするぞ、孫も一人増えてるしな」
そういえば以前聞いた気がする、ギンの両親のクロガネさんとユリさんは春祭りの時期に毎年帰ってくるらしい。ちなみにユリさんはミチルの刺繍の師匠だ。
「そうなんですか、楽しみです。ギンたちには本当にお世話になっているので、ご挨拶したかったんです」
「そうか、2人ともいい奴だからそんなにかしこまらなくても大丈夫だ。それに今年は賭けてもいいがいつもの年より早く帰ってくるぞ、ギンたちが何度か手紙を出しているから村の様子が気になって仕方ないはずだ」
ということは春祭りまであと二週間、いつ帰ってきてもおかしくないということになる。
コクガ様やソウキ様も早めに来そうだし、賑やかになりそうな予感がする。
「ハクロウ村も賑やかになりそうですね。私も久しぶりに王都の友人と会えるで楽しみです、さあお2人とも視察はここまでにして私たちも遊園地を楽しみましょう」
フェラリーデ様はいつも通りの上品な佇まいだけれど、見えないしっぽが回転する勢いで振られているのが見える様だ。
「そうですね、特に問題もなさそうですし。ユーリはきっとフェラリーデ様を待っているでしょうから、行ってやってください」
ミナトさんの言葉に、そうですか?と嬉しそうにトランポリンに向かうフェラリーデ様を見送って、美波はクスリと笑う。
「こんな言い方しちゃいけないのかもしれませんけど、時々かわいいですよね。フェラリーデ様って」
「そうだな、未知のものに惹かれるのは長命種の宿命かも知れないな。さて、私も滑り台を体験してこようと思うが、一緒に行くか?」
ミナトさんのお誘いは丁重に辞退させていただく。
自分で作っておいて何だけれど、アレは無理だ。
「もう一回コザクラ見に行こうかな、一人でお花見するのもたまにはいいよね」
賑やかな人込みを抜けてコザクラの群生地を目指す美波の目に、小さな女の子の手を引く老夫婦の姿が映る。楽しそうに飛び跳ねる女の子を見つめる老夫婦を見ていると、子供のころを思い出す。
いつもそばで見守り、愛してるってことを全力で伝えてくれた優しい祖父母。
母は早くに亡くなったし父親はクズだったけれど、記憶の中にはいつだって二人の笑顔がある。
「おじいちゃん、おばあちゃん、会いたいなぁ」
美波は無神論者だったけれど、実際に神様に会ってここにいるし。
もしかしたら死後の世界もあるかもしれない。
違う世界のどこかにいるかもしれない二人の幸福を祈り、柔らかな草の上に寝転んだ。




