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遊園地プレオープン、そしてお花見 前編

 ごろりと寝転がると、淡いピンク越しに青空が見える。 

 

 時折ヒラリと桜の花びらが視界を横切ってゆく。

 

 美波は今、念願だったお花見を満喫している。


 カエン様が3日間の滞在を終えて王都へ戻り、ハクロウ村もコザクラ町も日常を取り戻した頃、ちょうどいい具合にコザクラが満開になった。

桜と違い開花時期が長いそうで、春祭りの間も楽しめるらしい。


 今日は遊園地のプレオープンも兼ねて、ハクロウ村とコザクラ町の合同お花見会だ。


 「きれいねぇ、美波。近くにあったのにこんな風に木の下に座ってゆっくり眺めた事なかったわ。もったいないことしてたわね」


 木の下に敷いたシートの上、美波と共に寝転がっていたミチルが呟く。


 「うん、綺麗。こっちの桜もいいね、ちょっといい香りもするし」


 ふわりと香るコザクラの花の香りは、控えめで優しい。


 「なぁ美波~、お弁当まだか?食べようよ~」


 ユーリ....花より団子か。

美しい景色に浸っていたところを邪魔されてイラッとした美波だったが、ハクとユキちゃんにもねだられて、いそいそとお弁当を広げる。モフモフに弱い女である。


 「はい、どうぞ召し上がれ!これが取り皿ね、お手拭きはこっち。ハーブティーもコップに入れておくね。大人はワインかな、ユーリ、ここから右は野菜だけの料理だからね」


 今日はイツキさんに作ってもらった四段のお重に、とっておきの料理を詰め込んできたのだ。

他の村人たちもシートを広げて、気の合う仲間たちと思い思いの時を過ごしているようだ。

 子供たちはお皿を手に大人たちの間をまわり、美味しそうな料理をねだっている。


 今日は村人全員でのお花見である。ハクロウ村は現在無人だが、美波がバリアを張ってきたので安心だ。シロガネ様も馬車に揺られて久しぶりの遠出である。ギンとリン、ミナトさんにカエデさんマリさん達と隣の木の下でくつろいでいらっしゃるようだ。


 「美波、これ美味いな!ギョウザか?でも中身がとろけるぞ」


 「それはマッシュポテトに生クリームとチーズを混ぜてから、ギョウザの皮で包んで油で揚げたの。

クリームコロッケみたいでイケるでしょ」


 もぐもぐと揚げギョウザを丸ごと一個口に入れていたユーリは、続けて白ワインをあおる。


 「んっ、ワインにも合う!これ好きだな、また作ってくれよ」


 「いいよ、口に合って良かった。ミチルはどう?」


 「美味しいわ。冷めても美味しいけど今度は揚げたてが食べてみたいわ」


 揚げギョウザは好評である、ハクとユキちゃんもしっぽをフリフリ夢中で食べている。

他にも定番の厚焼きたまごやハンバーグ、から揚げにマカロニサラダ、サンドイッチにデザートにはメープルマフィンまで用意してきた。

 他のグループとおかずをトレードするのも楽しそうだ。


 「じゃあ今度はおつまみに作るね。ごめん、ちょっと抜けて差し入れ届けてくる!」


 そう言って美波はカゴをもって席を立つ。コザクラ町の孤児院の子供たちにタマゴサンドとマフィンを作ってきたので早めに届けに行きたいのだ。

ミチルたちの毛で作ったお守り兼ブローチも完成しているのでそれも直接渡したいし、昼食後に子供たちが一緒に遊ぶことになっているので、先にちょっと挨拶しておきたいというのもある。

 

 色とりどりのシートの間を縫って歩き、小さな子供たちが大勢いる一角を見つけて足早に進む。


 「こんにちは、先生。みんなは初めましてだね、ハクロウ村の美波です。よかったらコレ差し入れです、こっちは動物除けのお守りにもなるブローチだよ。ちょっとづつ違うから選んでね」


 歓声を上げてカゴの中を覗き込む子供たちを眺めつつ、先生方に改めて挨拶をする。


 「今日はよろしくお願いします。トランポリンも滑り台もケガをしないように作ってあるので、ハクロウ村の子供たちとも一緒に遊べると思います。いつも同じメンバーで遊んでいるので、コザクラ町の子供たちと仲良くなれればお互いにいい経験になると思います」


 以前お邪魔したときにご挨拶したマリアさんをはじめ先生方は皆さん優しそうで、慈愛に満ちた眼差しではしゃぐ子供たちを見つめている。


 「こちらこそよろしくお願いします。頂いた寄付金でこの冬は子供たちのコートや布団を新調出来ました。村の皆さんにもよろしくお伝えくださいね」


 「お役に立てたようでよかったです。村の皆にも伝えますね、ではまた後で」


 子供たちに手を振りつつ、ミチルたちの元へと戻る。

コザクラ町から参加している人たちは、今日のために町のレストランやパン屋さんなどが開発した様々なお弁当や、自作の料理を広げている。

明日以降は一般に開放することになっているので、いい臨時収入になると皆さん張り切っているらしい。

 遊園地も本来は春祭りでお披露目するつもりだったのだが、あまりに目立つその外観に町の人や商人から問い合わせが殺到したため、早めのオープンとなったのである。


 チケットの管理などはお祭り前の予行練習になるし、結果オーライかもしれない。

臨時アルバイトには、仕事は引退したけどまだまだ元気だぜ!というおじいちゃんやおばあちゃんが立候補してくれたそうだ。(今日はプレオープンなので無料だが)


 「みんなたのしそうだなぁ。世界が違っても、お花見ってやっぱりいいな」


 ほっこりする美波だが、すでにお花見ではなく昼間からお酒が飲める大宴会に移行しているグループもちらほらいるようだ。

 まぁ、ハメを外して人様に迷惑を掛けなければ問題ないだろう。

念のためにパトロールしている警察官はめちゃめちゃゴツイ熊さんと虎さんなので、自制心が残っていれば厄介になりたいとは思わないはずだ。多分。


 「こんにちは。お久しぶりです、ロビンさん、ジャンさん。あっちでお弁当食べてるので、良かったら後で寄ってくださいね。タマゴサンドがありますよ」


 冬ごもりの前に、コートなんかを作ってあげたおかげですっかり顔なじみの熊さんと虎さんに挨拶すると、ゴツイ手でわしわしと頭を撫でられた。


 「おぅ、後で行くから取っといてくれよ!」


 「タマゴサンドってマヨネーズ味だろ?噂は聞いてるぜ」


 あの、私大人なんですけど....二メートル越えの彼らには、子供のように見えるのかもしれないが。

気を取り直して、また後で!と2人と別れて、ようやく元の場所に戻ってきた。


 「おかえり美波、どうだった?」


 「うん、喜んでくれたよ。後でパトロールしてるロビンさんとジャンさんが来るから、タマゴサンドをとっておかないと」


 「分かったわ、別にしておきましょう。ほっとくとユーリが食べちゃうからね、マフィンもとっておく?」


 ミチルの提案に頷き、二人のためにユーリに見つからない所に料理を隠しておくことにする。


 「で、ユーリはどこに行ったの?」


 「色んなグループをまわってお酒とおつまみをねだっているみたいよ、ほら若くて綺麗な女の子のいるとこを重点的に狙ってるでしょ」


 ミチルの指さす先では、ウサギとキツネと人間の女の子のグループにちゃっかり混ざったユーリが、あーんされて鼻の下をのばしている。


 「何アレ....忘れてたけど、女好きだったねユーリって」


 初対面の時に女好き認定していたけれど、最近はすっかり弟キャラだったので忘れていた。


 「まぁ、ユーリの場合は女の子と楽しくおしゃべりするのが目的だから、大丈夫でしょ。

女の子たちも分かってるわよ、黙ってさえいればヤツも美形エルフだからね」


 ヤツって....厳しいぞミチル。


 「よう、美波。なんか久しぶりだな」


 ワイングラスを片手にシートに腰をおろしたのはクロだ。最近コザクラ町のホテルに掛かり切りだったので、ちゃんと話すのは久しぶりだ。


 「そうだね、お互い忙しかったもんね。ハクモクレンの櫛は順調?」

 

 料理を勧め取り皿を手渡しつつ尋ねると、満面の笑みで返された。


 「もうすぐ試作品が完成するぞ、ギンと2人で相談しながら作ったんだ。美波にプレゼントするから、春祭りに来るエルフの女性たちにしっかり宣伝してくれよ」


 どうやら本当にプレゼントしてくれるらしい。


 「いいの?嬉しいな、楽しみ!しっかり宣伝するするからまかせてね」



 その後も入れ代わり立ち代わりいろいろな人がやってきては、おしゃべりを楽しみ料理を味わう。

ロビンさんとジャンさんもちょっと休憩とシートに座りお酒以外の料理を楽しみ、カケルとハヤテにねだられて豪快な高い高いを披露して去っていった。

 飛んでたけど、三メートル位....もはや高い高いじゃないだろ、アレは。


 楽しいひと時はあっという間に過ぎて、うずうずして今にも駆け出しそうな子供たちにねだられて、いよいよ遊園地のプレオープンである。

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