アップルパイを作ります!
ユーリ発案の春祭りミニ遊園地はミナトさんやシロガネ様の了承をとり、フェラリーデ様に提案することになった。
コザクラ町までの道は雪解けの為ぬかるんでいるので、ソリで向かうことができない。
そこでミナトさんが狼型で、直接行って説明する事になった。
町長さんとも相談して、もし検討してもらえるようなら、一度村に視察に来ていただくという流れである。
ちなみにイツキさん達は、じきに完成する美波専用車の製造や自動荷車や自動車椅子でコツを掴んだらしく、ミニSL的な遊具の製作に乗り気である。
実際に作るならコース上に何か目印をつけて、それに沿って動くようにするのが良いだろうか。
線路を敷いてしまうと鉄道の発明になってしまうので、あくまで子供向けの遊具というスタンスでいきたいところだ。
「 じゃあ行ってくる、夕方までには戻るから留守中は頼んだぞ 」
村人達の見送りをうけて、ミナトさんはコザクラ町へ出発した。
「 どうなるかなぁ。フェラリーデ様、来てくれるかな 」
あっという間に小さくなるミナトさんの後ろ姿を見詰めて美波が言うと、ユーリにバシッと背中を叩かれた。
「 当たり前だろ!ちゃんと来てくれるよ 」
「 痛いよ、ユーリ!もうっ 」
既にギン達の所へ駆け出していたユーリの背中に叫んで、美波はミチルと共に自宅へ向かう。
今日は休日なので、まったり過ごす予定である。
「 アップルパイ~!アップルパイ~! 」
調理台の上でパイ生地を作りながら鼻歌を歌う美波に、向かい合って椅子に腰かけたミチルが笑う。
「楽しそうねぇ、そんなに美味しいの?アップルパイって 」
そう、念願のアップルパイである。
パイ生地の再現に成功してから、ずっと作ってみたかったお菓子なのだ!
本当は村人皆にご馳走したいところだが、試作品第一号なので今日はミチルと二人でこっそり楽しむつもりである。
まぁ、かなり大きめのサイズで焼き上げるので、動物的な勘を発揮して誰かが訪ねてきても、おすそわけは可能だ。
「 美味しいんだよ~!熱々のサックサクに~、冷たいミルモンアイスを添えて食べるともう天国!」
大好物のアップルパイについて熱く語る美波の手は、順調にパイ生地を作り上げていく。
これにシロップ漬けにしておいた野りんごと干しブドウ、シナモンなどをカスタードクリームの上に敷き詰めるのが好みのスタイルだ。
パイ生地で編み目を作り、葉っぱ型に切り取った生地を飾り溶き卵を塗って焼き上げたアップルパイは、素晴らしい出来だった。
「 綺麗ねぇ、それにいい匂い!」
「 うん、上出来!食べよう!」
熱々のアップルパイを切り分けて、ミルモンアイスを添える。
既にお茶の準備も万端なテーブルにお皿を運び、久し振りのアップルパイを口に運ぶ。
「 んーっ、美味しいっっ!サックサクで熱々で冷たいっ 」
ミチルは無言で目を瞑り味わっているが、しっぽが揺れまくりなので気に入ったのは間違いないだろう。
「 美波、コレ最高ね 」
「フフフッ、でしょ?美味しいよねぇ、アップルパイ 」
もう一切れいっちゃう?もちろん!と、今日だけはカロリーの事は考えないことにしてケーキを盛り付けていると、ドアを叩く音がした。
「 お姉ちゃん、いるー?お勉強教えてー!」
外にいたのはハクとユキちゃん。ドアを開けたとたんに鼻をヒクヒクさせている。
「 いらっしゃい、良いところに来たね二人とも。
アップルパイ食べる?」
食べるー!キャー!しっぽを振りつつ席につく二人にも、大きくカットしたアップルパイを出してあげる。
「 わぁ、おいしそう。いただきます!」
「 熱々だから気を付けてね、アイスと一緒にたべてごらん 」
声にならない声をあげてプルプルする二人も、どうやらお気に召したようだ。
「 おいしいよ、お姉ちゃん。サクサクだねぇ 」
「 おいしい~!熱々で冷たくて、甘~い!」
口の端についたアイスとパイの欠片をとってあげながら、二人の笑顔にメロメロの美波である。
直径三十センチ程のアップルパイは、ミチルと子供達のお腹にあっという間に消えた。
「 はぁ~幸せ……美味しかったわ 」
「 僕もコレ大好き!おいしかったよね、ユキちゃん 」
「 うん、おいしかった。ありがと、お姉ちゃん 」
「 どういたしまして。今度は皆で食べようね!」
後片付けをしている間に、ぽっこり出たお腹を出してビーズクッションに寄りかかって、仲良くウトウトし始めた二人は、ミチルに促されて半分眠ったまま服を脱いで獣化している。
美波はユキちゃんを膝の上に仰向けにのせて、モフモフを堪能する事にしたようだ。ハクはミチルの膝の上である。
「 はぁ~、可愛いなぁ。ゴロゴロいってる 」
「 お腹一杯で眠くなっちゃったのね。この子たち勉強教えてって言ってなかった?」
「 あぁ、多分足し算と引き算の復習がしたかったんだと思うよ。だいぶ出来るようになってきたから楽しいんじゃないかな、双子たちはもう掛け算と割り算が出来るし、ナギは図形の面積とかまで進んでるからね 」
冬の間にルリさんを手伝っていた美波は完全な文系だが、かろうじて覚えている算数や数学の公式を引っ張り出して、授業に取り入れてもらっていたのだ。
こちらの世界にも数学者はいるし、それなりのレベルに達しているらしいのだが、村の学校では円周率などは教えていないようだ。
「 あぁ、アレね。この前コズエさんがびっくりしたって言ってたわよ。チーズを切り分けようとしたらカケルとハヤテが、45度ずつにすればぴったり八個になるって言ってたらしくて 」
「 あの二人らしいなぁ。授業でおやつの時間にやったんだよね、子供たちとルリさんと私でケーキを均等に分けるにはどうすればいいでしょうってね 」
手こずっていた割り算をあれをきっかけにして克服したのだ、あの食いしん坊たちは。
皆で相談して40度という答えを導きだして、お手製の分度器で目印をつけて切り分けたのだ。
「 そんな理由でマスターしたのね、らしいわねぇ。
でも良いことだと思うわよ、この村の大人たちもルリさんとミナトさん以外は掛け算と割り算までだもの。
知識が増えるのは良いことよ 」
美波にしてみれば、あれだけ緻密な作品を作るイツキさん達が設計図無しでやっていることの方が驚きなのだが。
「 そうだね、私もあんまり数学得意じゃなかったから高レベルな公式は忘れてるけどね。できる限りは教えてあげたいんだ 」
ちょっといい話をしつつも、美波の手はユキちゃんをなでなでしつつ、時たま肉球のぷにぷにを触ったりしている。
「 そうだ、ミチル。春祭りの時にさ、子供用の着ぐるみも売ってみない?可愛いからきっと売れるよね 」
自信満々でした提案だったが、あっさりと却下されてしまった。
「 売るなら秋祭りじゃない?春祭りだとこれから暖かくなるなる時期だし、あのモコモコは冬でしょ 」
「 うぅ~、忘れてたよ…確かに冬むきだよね、来年までおあずけかぁ 」
脳内で様々な着ぐるみを着た子供達のパラダイスを思い描いていたらしい美波は、分かりやすく落ち込んでいる。
「 来年やりましょうね、それまでに色々考えておけばいいでしょう?」
「 うん、そうだね、ありがと。春祭りでもいけそうなのないかなぁ。日本だったらレインポンチョもアリだけど… ねぇ、こっちって雨が一杯降る季節ってあるの?」
四季があることは聞いていたが、雨季とか梅雨については聞いていなかった事を思い出した美波は最後の希望をそこに託す事にしたらしい。
「 そうねぇ、春に種蒔きをした後くらいから雨はよく降るわよ。ずっと降り続ける訳じゃないけど、一日降って三日晴れてみたいな感じね。おかげで作物がよく育つのよ 」
「 じゃあレインポンチョは必要だよね!耳つきとかしっぽつき、あとはとりさんタイプも可愛いかも!」
レインポンチョって何?というもっともな質問に、現物を見てもらった方が早いだろうと、とりあえず作ってみることにした。
「 何をモデルにしようかな、セキセイインコの緑色バージョンにしてみよう!」
しばし集中して作り上げたのは、ハクやユキちゃんサイズのインコのレインポンチョだ。
すっぽりかぶって手を広げるとインコが翼を広げたような感じになり、フードを被るとデフォルメされたラブリーなインコの顔がプリントされているという力作だ。
「 うん、可愛い。あとは、そうだなぁ…ホワイトタイガーにピンクのくまさん、すずめも可愛いかも 」
この辺でミチルに止められました…
暴走しすぎである。
「 あとは長靴ね、ハクとユキちゃんのサイズで二つ作ってみよう 」
ベビーピンクと水色の長靴が完成したところで、二人が目をさました。
「 ん、にゃ…寝ちゃった 」
「 んー、おはよ、みんな 」
ウニャウニャ言いつつ伸びをして、シャキッとしたところで人型に戻って着替えてきた二人に、さっそくモデルになってもらう。
「ちょっと顔あげてね、ここを留めて、はいOK!」
ハクにはセキセイインコ、ユキちゃんはピンクのくまさんだ。
「 かっ、可愛い~!!」
初めて着るポンチョにはしゃいで、クルクル回る二人はそれはそれは愛らしかった。
美波が壊れるほどに……
「 なるほど、これで水を弾くのね。で、この長靴を履くと足も濡れない訳ね 」
ミチルは冷静である。
ハクは羽を広げてパタパタしたりして楽しそうだ。
ユキちゃんもクルクル回りつつ、ヒラヒラする感じを楽しんでいる。
「 はい、美波、そろそろ戻ってきてね。
良いと思うわよ、後でみんなに提案してみましょうね」
どうやらもう一つ、お祭りの目玉が増えたようである。
遠くに行っている美波には、聞こえていないようだが……
間が空いてしまいました(>_<)
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
ちょっと長めで投稿します、楽しんでいただけたら嬉しいです!




