試食タイム
お昼ご飯のアメリカンドックは大好評だった。
途中から美波も準備を手伝ったので、ユーリの為のチーズドックも作ってみた。
村で作っているチーズは何種類かあるが、ピザやグラタンに使う加熱すると伸びるタイプのものではなく、トロッととろけるタイプのチーズを棒状に切って、ウインナーと同様に揚げてみたのだ。
どちらも熱々の出来立てを食べるのがポイントだ。みんな盛大にしっぽを振りつつ美味しそうに食べてくれたので、こちらの世界でもウケそうである。ただ、ネーミングは変更したいのでお祭りまでに皆で考えていくつもりだ。
「 あっつ、チーズがっ!美波~、くちびる火傷した。治癒魔法かけてくれ 」
ユーリよ……ハクとユキちゃんですら、フーフーして上手に食べているというのに。
何て残念なエルフさんであろうか。
「 わかったよ…はい、治った。もう、気を付けてよね、大人なんだから 」
わかった!といいつつ、次の揚げたてチーズドックを確保すべく列に並ぶ後ろ姿にため息をつく。
「 まったく、もう少し落ち着けないかな 」
「 無理だろ、あいつは昔からずっとあぁだよ 」
ギンはハクを膝にのせて、アメリカンドックにかじりついている。
すっかり定番の調味料と化したケチャップとマスタードで、大人仕様の味付けだ。
「 そうだよ、お姉ちゃん。ユーリは困ったエルフなんだって 」
ハクに言われると余計に刺さります……
残念すぎる。
リンも無言で頷いているが、ユキちゃんだけはユーリをフォローする。
「 ユーリはいい人だよ、助けてくれたもん 」
「 そうね、ユキちゃん。ユーリはいい奴なのよ、でも同じくらい困った大人なのよねぇ 」
コテンと首をかしげるユキちゃんをなでなでしつつ、リンが苦笑いする。
そう、ユーリはいい奴なのだ。
それが残念っぷりに拍車をかける訳だが……
「 そうだよね、ほんと。ユキちゃん美味しい?
もうすぐメープルアイスも出来るからね 」
昼食の前にアイスクリームメーカーにミルクとメープルシロップを投入しておいたので、デザートに振る舞う予定だ。
絶対美味しいと思うが、お祭り本番までにレシピを完成させるべく、分量を少しずつ変えて試作を繰り返すつもりである。
「 美味しいよ、お姉ちゃん。ウインナーのもチーズのも大好きっ!アイスも楽しみだなぁ 」
ユキちゃんはハクと手を繋ぎ、お代わりをもらうために列に並ぶようだ。
「 ふふっ、すっかり仲良しだね。本当の兄妹みたいで可愛いなぁ 」
ギンとリンは顔を見合わせて、ちょっと悪い笑みを浮かべた。
「 確かに今はそうかもな、でもハクの初恋はきっとユキちゃんになるな。無意識なんだろうけど、小さなナイトみたいで可愛いんだよ 」
「 えっ、そうなの?わぁ、幼馴染みで初恋かぁ。いいなぁ、憧れる 」
大人達の思惑など知らない幼い二人は、手を繋いで片手にチーズドックとアメリカンドックを握りしめ戻ってくる。
スマホがあったら絶対撮るのに!もちろん、動画で!そして二人の結婚式で流して恥ずかしがらせるのに!
美波の心の声は誰にも届かないが、幼い二人が知ったらこの世界にスマホがないことを、心の底から感謝するだろう。
初恋かもで、この盛り上がりようである。将来本当に二人が恋に落ちたりしたら、大人たちはどうなってしまうのか。
自制心を保ってくれることを二人に代わって祈りたい。
「 美波!アイスそろそろ出来たんじゃない?」
「 今いくよ、ミチル。じゃあアイスの準備してくるね、食べ終わったら味見してね 」
ギンたち一家に手を振りつつ、メープルアイスの仕上がりを確かめるべく調理スペースへ向かう。
結論から言うと、メープルアイスは絶品だった。
試作品とは思えぬ完成度で、ミルクのコクとメープルシロップのすっきりした甘さと香りが絶妙にマッチしている。
仕上げにメープルシロップをかければ、何個でも食べられてしまう悪魔のスイーツの完成だ。
ダイエットという言葉を一瞬忘れさせるという、恐ろしい技を繰り出す悪魔である。
「 おいしい~っ!コレにクッキーのカップを合わせたら完璧だよ 」
メープルシロップは張り切った村人達の手により、大量生産されているのでストックにはかなり余裕がある。
村で消費する分を充分に確保した残りでも、まとまった量が提供できるはずだ。
「 美味しいわ。ユーリ、悔しいけどお手柄ね 」
ミチルが珍しくユーリを誉めている。
確かにユーリのアイデアのおかげである。村人達に褒められたユーリはご満悦である。
発案者特権として、お代わりをよそってもらったようだ。
サトウカエデは広く分布しているらしいので、来年は製法を公表して量産できるようにしてもいいかもしれない。
みんなの笑顔と揺れるしっぽを見つめる美波の顔にも笑みが浮かんでいる。
毎日がほんのちょっとだけ楽しくなるのは、素敵なことだ。
春祭りまで時間はたっぷりある、楽しいことを探さなくては!




