春祭りの打ち合わせ ②
「 はいっ!メープルシロップ味のアイスクリームが食べたい!」
ユーリ…食べたい物になっちゃってるよ…
「 食べたいってなんだよ、売りたい物を言ってくれよ。でもメープルシロップか、どう思う美波?」
ミナトさんに聞かれた美波は、若干不本意ではあるがユーリの意見に同意した。
「 多分イケると思います。ミルモンの代わりに香り付けをメープルシロップでする感じで、ミルクと合わせて前回と同じクッキーのカップに盛り付けたら美味しいはずです 」
味を想像したらしい村人達が、ごくりと唾を飲みこんだ。
「 そうか、幸いメープルシロップは沢山採れたし今までにない味だしな。どうだ?みんな 」
メープルシロップアイスの販売は、あっさり決定した。その後、今回のクッキーはベリー系のジャムでピンクに色付けした、アイスボックスクッキーでいこうという事になった。
春祭りだし、ぴったりだろう。
「 美波は?何かないの?」
ミチルに聞かれて考えるが、お祭りで大量に販売出来て見映えがよく、作るのが簡単な物というとそうそう出てこない。
「 うーん。お祭り、屋台でしょ。日本のお祭りなら綿あめとか焼きそば、ジャガバターにフランクフルト、チョコバナナとか?
でも、ソースもチョコもないしなぁ 」
実際に出来そうなのはフランクフルトあたりか。
スモーク設備があるので、ウインナーは量産できる。
「 あっ、アメリカンドックなら、珍しくていいかも!」
ようはホットケーキの生地をちょっとかためにしたものを、串に刺したウインナーに付けて油で揚げればいいのだ。
「 揚げ物って大丈夫ですか?大丈夫なら向いてると思うんですけど 」
提案して説明してみると、みんな興味がありそうだ。
「 じゃあ一度作ってみて、皆で食べてみましょう」
アメリカンドックはとりあえず、保留となった。
「 なぁなぁ、綿あめって何だ?」
ユーリは綿あめが気になったらしい。
ウインナー食べられないしね、ベジタリアンですから。
「 綿あめはね、綿花みたいなフワフワの飴なんだよ。でも無理じゃないかな、ザラメを熱してこういう機械で巻き取って作るんだけど 」
ホワイトボードにざっくりとイラストを描いてみるが、大きな円の中心で回転するパーツにザラメを入れていた気がするくらいの知識しかない。
「 ザラメっていうのは粒子の大きな砂糖だね。
でも何度で加熱するのかとかは、私にも分からないからなぁ。食用色素で色をつければピンクとかオレンジとか、カラフルなやつもできるはずだけど 」
それに目立つけどひたすら甘いだけで、大人には微妙だと思うし……
そう付け加えたのだが、ルリさんの何かに火がついてしまったらしい。
「 金属の大鍋でやってみるか、魔方陣はどう書けばいいか 」
ぶつぶつ言いながら、自分の世界に入ってしまったようだ。
「 あー、美波。できる範囲でかまわないから、協力してやってくれ。成功すればかなり目立つだろうしな 」
「はい、思い出せることは出来るだけ伝えて協力します 」
ミナトさんに協力を約束する。他にも何かないか皆でアイデアをだすが、今一つこれといったものが出てこない。
「 あの、お祭りの時季にちょうど採れて、これぞ春って食材は何かありますか?」
美波の知らない食材があるかもしれないし、それがもとの世界と近いものなら何かできそうだ。
村人達によると、イチゴとラズベリーの中間みたいな味のするベリーや、ブルーベリーのような双子ベリーが実りはじめるらしいが、冬以外はずっと採れる果物なので、春ならではの味覚というよりは春の訪れを告げる味という感覚のようである。
「 うーん、ベリージャムはクッキーにも使うしなぁ。山菜とか他の果物で何かあれば…」
しばらく意見を出してもらったが、これといった案は出なかった。
春祭りは桜の花が咲く頃だし、まだ時間はたっぷりある。後二ヶ月といったところか、それまでに話し合いを重ねてメニューを決めることになるだろう。
「 よし、じゃあ今日はこの辺にしておくか。昼食にアメリカンドックとやらを作ってみようか?」
ミナトさんの提案はすぐに実行にうつされ、さっそく試食をすることになったようである。
簡単に出来そうだから休んでていいわよ、という女性達の言葉に甘えさせてもらい、美波は引き続きユーリ達と相談する事にした。
「 食べ物は難しいね、手早く出来て大量に作れるものって条件があるし、更に春の味覚となるとね 」
「そうだな、でも今出てる案だけでも充分な気もするけど。それよりさ、あのトランポリンのもっとでかいやつを作って、お金をとって遊んでもらうのはどうかな?子供用の可愛いやつと大人用のでっかいやつを作ってさ、町の外のスペースでやったら絶対ウケると思うんだよなぁ。あのボールプールもとかとかもいいし 」
移動遊園地みたいだ、それはもうハクロウ村の商品ではないだろう……
「 楽しそうだけどさ、コザクラ町の許可が必要だしそんなにお客さん来るかなぁ 」
美波はあまり乗り気ではなかったのだが、意外なことにミチルは賛成らしい。
「 大丈夫だと思うわよ、忘れたの?このトランポリンとボールプールで初めて遊んだ時の皆の反応を。
他の人たちも絶対喜ぶわよ 」
言われてみればそうかもしれない。しかし思い付きでやっていいスケールの話ではないだろう……
「 じゃあさ、フェル兄にハクロウ村に来てもらってこれを見てもらえばいいんじゃないか?それで町長に話を通してもらって、コザクラ町と共同でやればいいよ。稼いだお金で例のレンタルウェディングドレスの会社を立ち上げてもいいしさ 」
フェル兄とはもしやフェラリーデ様のことか?
交遊関係が謎すぎるぞ、ユーリ……
「 えーっと、フェル兄ってフェラリーデ様のことだよね?確かに軍資金にはなりそうだけど、お客さんがそっちに流れちゃうとお祭り会場の方に迷惑がかかるし、人も必要だよね。決定権のある人に相談しないと無理そうかな 」
「 話し合ってみる価値はあるんじゃない?一日中遊ぶ訳じゃないし、そっちを目当てに来たってお祭りにはいくでしょう。軍資金も必要だしね 」
「 まぁそうだね、相談してみようか。まずはミナトさんとシロガネ様に話してみよう 」
コザクラ町の春祭りは、もしかすると相当大規模なものになるかもしれない。
トランポリンが認められたら、まだ時間があるからきっと他の遊具にも手を出すだろう。
子供用のミニ列車とか……
例のエンジンを搭載すれば出来てしまうはずである。
美波の周囲だけどんどん進化している気がするが、皆が喜んでくれるならいいかもしれない。
目指せ!この世界初の遊園地!




