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幽霊は悪役令嬢  作者: Yeppie
第一章
5/8

今日も学園は休み

今日も学園は休みだ。ディルソンとラシャールは朝っぱらから街へ繰り出してった。俺も一緒に街へ行こうと誘われたが断った。俺の作り話の続きを書きたいのもあったが、学園の図書館にも行きたかった。そう、ちゃんと独立した建物なんだよな。図書館には学園の関係者しか入れない。ルミナール・フィディレテ学園は王立なので、王族は無条件で利用出来た。噂では王族しか入れない秘密の部屋があるらしい。でも男爵家の俺には遠い世界の話だ。


「あら、ベニーモ様も図書館へ?」振り向くと読書家のマガレータがいた。

「ああ、マガレータ。普通にベニーモと呼んでくれよ。」俺は口角を上げて見せた。

「そういうわけには参りませんわ、男爵様。」マガレータは俺に追いつき「父から厳しく言われてますの。」と肩を竦めた。マガレータは平民の娘だが、父親がやり手の貿易商で、その功績を讃えて来年には爵位を授与されるのではと言われていた。下手すると男爵を飛び越えて子爵になるかも知れないとすら噂されていた。

「俺は男爵家だけど俺自身は男爵じゃないよ。だから、そういう意味では君と一緒。俺はそんな大層なもんじゃないよ。」俺は図書館のドアに手をかけた。


図書館の中はヒンヤリとしていた。受付の司書の青年が俺たちの身分証を確認し、名簿に俺たちの名を記帳する。

「えー、ベニーモ・マンカスター様に、マガレータ・シェルマ様。ありがとうございます。どうぞごゆっくり。お帰りの際はこのベルをお鳴らしください。すぐ参りますので。」司書は書庫の扉の鍵を開け、俺たちが中に入るとすぐにその扉の鍵をかけた。右横を見ると警備の騎士が立っていた。


「相変わらず厳重ですよね。」マガレータは室内を見回した。

「ああ。規模も大きいし。欲しい本を魔法でチョイチョイって探せたら便利だよなあ。」俺は見渡す限り本しかない光景にまた圧倒されていた。

「ふふ。魔法ですか。あったら良いですよね、魔法。あ、もしかしてもう目的の本、あるんですか?」マガレータはイタズラっぽい目をして俺を見た。

「ないよ。何と無く面白い本ないかなって。」

「えー?面白い本ってどんなんですか?あ、その、分野の事です。」マガレータは書架の一つに向かって歩き出した。

「あー。別に、その…何でも良いんだ。」嘘だった。俺は本当はあの幽霊の少女の事を知る手掛かりになる本を探そうとしていた。でも、そんな事をマガレータには言えない。

「この書架、古典文学の書架なんです。参考になるんじゃないんですか?」マガレータはやっぱりイタズラっぽい目をしていた。

「参考って?」俺はその書架の本の背をなんとなく撫でた。

「書いてるんでしょ、小説?アラウ様が楽しみにしてましたよ。私もです、ベニーモ様。」俺は心の中で崩れ落ちた。

「ちょっと待って。アラウ?まさか、その…。」俺は多分オタオタしていた。

「え?違うんですか?アラウ様、食堂で一緒になった時に話してましたよ。何でもバイオレンスなお話とか?」マガレータはキョトンとした顔をした。バイオレンス?どういう事だ?まあ、ある意味あれはバイオレンスだ。何しろ最終的にはギロチンで首チョンパだ。

「あ、あ、あ。いや、その…。バイオレンスとは…どうかな?決まってないよ。だってまだ出だしだけだよ。紙二枚分しか書いてないし、その…ダメ出しされたし…。」

「あー、ディルソン様がチェックなさったとか。ですよね?全く。私の方が本いっぱい読んで知ってるのに。」マガレータは口を尖らせた。

「は?いやいやいや、確かにディルソンにアドバイスされたけど、それ、本をいっぱい読んでるのとは関係なくない?」


すると室内にいた司書の青年が俺たちに近づいてきた。「お静かにお願いします。」


俺は結局何の収穫もないまま、マガレータと書庫を出た。図書館には簡単な食事も取れるカフェがある。俺たちはそこでランチにすることにした。

「で、どんなお話なんですか?その、今書いてる小説って?」マガレータはサンドイッチを食べ終わり俺を見た。

「君、食べるの早いね。」俺はまだサンドイッチをモグモグしてた。「ひむ…むむむ。」俺は咀嚼していたサンドイッチを飲み込んだ。「秘密だよ。」俺はもう一切れのサンドイッチに手を出した。

「えー。ちょっとくらい、良いじゃないですかあ。」マガレータはお茶のカップを手に取り「あ、ソーサー。」と呟くとソーサーを持ち上げようとした。

「ソーサーはテーブルの上。カップの下に持って来ないんだよ。」そういう俺はテーブルに肩肘をつきサンドイッチをモグモグしてた。

「え?あれ?そうでしたっけ?」マガレータはカップを口につけた。

「そうだよ。どこで聞いたの?そんなマナーないよ。ま、俺がガタガタ言う事じゃないけど。」

「えー?肩肘ついて食べてるベニーモ様こそ、マナー違反では?」マガレータは俺を軽く睨んだ。

「だって、ここ、フォーマルな場じゃないし。俺、男爵家だけどほぼ平民みたいなもんだし。」

「あー!それ問題発言ですよ、ベニーモ様。それじゃあ平民は全員マナー知らずって言うんですか?」マガレータの目つきが険しくなる。

「あ、そういう意味じゃ…。俺に対しては気取らなくて良いって言ってるんだよ、マガレータ。」俺は肩肘をつくのを止めた。

「そういう事にしときます。」マガレータの表情が和らいだ。「なんか、どうしても意識しちゃうんですよね。だって、この学園普通に高位の貴族の方達が隣に座ってるとかありますもん。」

「え?いくら何でもそんな事あるか?」俺はサンドイッチの最後の一切れを飲み込んだ。

「ありますよお。つい三日前ですけど、私、グレイシア様が隣にいらっしゃって、ムチャクチャ緊張しましたもん。あれは一体なんだったんですかね?」マガレータは静かにカップをソーサーに置いた。

「グレイシア様って、あのグレイシア様?ヴェリセンタル公爵家の?はあー。どうしたんだろうね?俺、まだお目にかかった事無いよ。」グレイシアは気高い美貌の才媛と言われていた。

「ええええ?うっそ。…あ、ごめんなさい。意外ですね。グレイシア様は割と学園内でお見かけしますよ。偶に食堂でもお見かけします。」マガレータは口に手を当て、失敗したという顔をしていた。

「ん?と言うことは、普通の食堂をご利用になられていると、そういう事ですか。」俺は無意識に言葉が丁寧になっていた。

「そういう事です。どうします?この後また書庫に入りますか?私は入りますけど。」マガレータはナプキンで口元を拭っていた。

「あ、俺は部屋に戻るよ。」俺は立ち上がった。マガレータは遅れて立ち上がり「ごきげんよう。」と言って去って行った。

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