じゃあ、どうして
じゃあ、どうしてアタクシが幽霊になってしまったのか、あなただけに、お・し・え・ちゃ・う。そうね、どこから話したら良いかしら?あぁーあ、忌々しいあーの田舎娘の事から話そうかしら?名前はメリアンヌだったかしら。そう、メリアンヌ。あの雌豚ったらどういう手を使ったのか、アタクシの通う学園に入園出来たのよ。平民のクセに。そうそう、あのクソ女ったらバカ男どもから聖女って言われてた。
「あなた、またそんな。アタクシ、そんな言葉遣い致しませんわ!書くならもっとちゃんと考えてお書きなさいよ。あのですね、アタクシの事をお書きになるのであれば、そのような…ええ、そのような下品な言い回し、アタクシ断固として拒否致しますわ!」俺の頭上であの少女の声がする。うぜえー。
「良いだろ。俺が書く俺の作り話なんだから。なあニャニン。」俺は頭上を見た。うお!今夜は天井に張り付き技を使ってる!
「アタクシの名はニャニンでは、ありません!それに、どうしてアタクシをあのような目に合わせた女の名前がアタクシよりずーっと普通なのですか?余りに理不尽!無礼の極致!アタクシ、本気の本気であなたを呪いますわ。よろしくて?」こうして見ると、確かにこの少女って悪霊っぽいなあ。首も取れるし。
「もう呪われてる気がするけど。呪うってどうやって?」すると少女は天井からふわりと離れ、俺の背後へ移動した。
「こんな感じで如何かしら?」少女は出来るだけ低い声を出し、俺の肩の上にその細い腕を乗せ覆い被さった。これ、多分、俺に取り憑いたポーズのつもりだ。
「ねえ、これって何の愛情表現?」
「愛情ー?!」少女はまた天井に戻った。「あ、あり得ませんわ。あなたに、愛情など…。」
俺は天井を見上げ、照れた表情をする少女に微笑んだ。夜になっていた。そろそろ消灯時間だ。
俺はベッドに入った。少女は天井から降りてきて、俺のベッド傍に座った。
「なあ、少し話をするか?」
「許します。」少女は不敵な笑みを浮かべた。
「お許し感謝いたします、お嬢様。」少女は僅かに肩を竦めただけだ。
「お嬢様は田舎娘に陥れられたんだよな。」
「その通りです。あの女の名前はお聞きにならないで。教える価値も、覚える価値も御座いませんもの。」
「うん、それは良いけど、その価値のない女は平民の娘だったんだろ?どうやって王子に取り入ったんだ?難しくないか?側近は何をしてたんだ?」
「側近もその女に騙されていたのですわ。まあ、そもそも普通なら平民如きが王子の側近に接近など無理なのですが。」
「聖女って言われてたんだろ、その平民の女。聖女ってどんな基準で選ばれるんだ?」
「あの女は自分で聖女って吹聴していただけですわ。でも、どうやって周囲を騙し通せたのか、アタクシには解りませんわよ。そもそも、アタクシとあの女には接点が御座いませんでした。アタクシは濡れ衣で処刑されたのです。無実を訴えても無駄な足掻きでしたわ。」
「なあ、前にも聞いた気がするけど、どうしてこの学園にいるんだ?」
「アタクシ、この学園だけが行動範囲ではありませんのよ。この学園にアタクシがいるのは、あなたがこの学生寮にいるからですわ。あ、誤解の無いように予め言っておきますが、アタクシの姿を見られて、アタクシとこうやって会話できるのが今のところあなただけだからですからね。」
「いや、でも俺と出会った時に学園の、しかも男子寮にいたのはなんで?俺のこと知らなかっただろ?」
「あ、あれは…。あの…。」
「言いづらいことなんだな。まあ、良いや。眠くなってきたよ。お前も寝ろよ。」
「アタクシは既に永遠の眠りについているのですよ。お忘れ?」少女の表情は寂しかった。俺は少女に背を向けた。
「おやすみ。」
メリアンヌは聖女の振りをするのが上手かったの。でもアタクシに言わせればあの女は性女よ。売女ってこと。嗚呼、アタクシとしたことが、こんな汚辱に塗れた言葉を使ってしまうなんて、恥ですわ。もう死んでしまいたいほどですわ。あ、もう死んでましたわ、アタクシ、ほほ。
とにかく、メリアンヌはそうやって王子の側近に取り入って、遂に王子と二人きりになるチャンスを手に入れたの。アタクシという婚約者がいながら、王子はアタクシを裏切ったの。そしてあの女メリアンヌはアタクシをあの手この手で陥れようと、ありもしない噂を流し始めたの。本当、噂の真偽も確かめないバカばかりだったわ。特に女たちは酷かった。アタクシ、そんなにあなたたちに憎まれるような事、したかしら?
「ここまでだよ、ディルソン。」朝俺の部屋に来たディルソンは、早速俺の作り話を読んでいた。
「お前って遅筆なんだな。あと、ちょっとこれ…直したほうが良く無い?このままだと、そのお、女子に見せられ無い気がする。」ディルソンは申し訳なさそうに言いながら俺に紙を返した。
「あー、はいはい。俺は素人だからなあ。これでも何回か書き直したんだ。」俺は自分の書いた話を読み直した。確かにちょっと女子にはキツい部分があるかも。
「お前って、意外にキツい書き方するんだな。」ディルソンはクスクス笑った。
「そうか?」俺は眉を顰めた。
「ま、いいや。早く食堂行こう。朝食だ。」俺たちは部屋を出た。
朝食を終えてクラスへ向かう途中、アラウと俺たちは合流した。
「ねえ、ベニーモ。お話書けた?」アラウは俺をキラキラした目で見ていた。
「あー、それが、そんなに進んで無いんだ。ダメ出しされたし。」俺はクラスに向かいながら頭を掻いた。
「ダメ出しぃ?誰に?あ、ディルソン?何がダメなの?」アラウはディルソンを睨みつけた。
「え?あ、ちょっと、表現が過激かなって…。」ディルソンの顔は紅潮していた。
「は?過激?え?何?バイオレンスなの?私、バイオレンスなの好きよ。」アラウはニコニコしていた。




