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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第二部 2章:EXTRA

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38話:施設案内 前編

 目に映るのは多数のデスクにPCだ。いかにも想像しやすい会社というのが5階の第一印象だった。


 「ここは会社の事務所ですか?」


 想像しやすいが、作見の想像とは真反対の光景にゆっくりと後ろを向いた。


 「ここは技術部だよ。とりあえず、副部長に挨拶しよう」


 ここが技術部の本丸、このビルの5階から7階までが技術部の仕事スペースである。

 

 「副部長……」

 と呟きながら、進んでいく永遠の後をついていく。


 横引きの扉を開けて、作業場に入っていくと、技術部の方の視線が集まる。3人ともそんなことは気にせず、一番奥に1つだけ置かれたデスクに向かって歩く。


 それに気づいた副部長らしき人は立ち上がって、手を振った。


 「流合はぎえさんじゃないですか〜」

 

 「どうも」


 永遠は軽く手を振った。


 「EXTRAが一体何用でこちらに?」


 副部長らしきその女性は、黒と茶色の混ざった長い髪のスーツ姿がよく似合う人だ。そして、永遠の後ろにいる海里や作見に目を向ける。


 「新人を紹介しようと思いまして、彼がこれからここに所属になります」


 永遠は一歩横にずれて、作見は前に立つ。


 「柏木作見です! これからお世話になります!」


 頭を下げて名を名乗った作見は、もしかしたら今日は名を名乗る日だと内心思う。


 「はい! 技術部副部長の吉岡裕子よしおかゆうこです。相談事があれば、いつでも仰ってください!」

 と裕子は手を出して握手を求める。


 作見も手を出して握手を交わした。


 「裕子さんは、主に人事担当をされているんだ」


 「人事ですか?」


 永遠の説明に作見はあまりピンときていない様子だった。


 「どこで任務を行うかとか、欠員が出た場合の対処などが主な役割ですね」


 5階で働くメンバーの役割は人事担当だ。裕子は最終の確認をして訂正したり、など、いかに今いるメンバーでどう回していくかを考えるのが仕事だ。


 「仕事のお邪魔になっちゃうし次行こうか」


 3人は裕子に笑顔で手を振られながら次の階を目指す。


          ◇

 「次に行く7階も技術部だけど、ここに部長さんが居られるんだ」


 エレベーターで移動中に永遠は説明しながら移動する階数の数字を見ている。


 7階に着くと、また違った風景が広がるのかと思っていたが、そんなことはなかった。5階と同じに、多数のデスクにPC、普通の会社だ。


 「一緒ですね……」


 「5階と7階はそうだね。でも、6階はもっと変な機械とか置いてあるよ」


 永遠の言う通り、6階には普段見ることのない機械がたんと置いてあるが、作見がそれを目にするのは少し先の話である。


 7階の間取りは5階と同じでデスクの配置なども全く同じである。裕子に挨拶した時と同じように歩いて行き、作業中の部長さんに挨拶へ行く。


 「創愛そうあさん、今いいですか?」


 「今はちょっと――って永遠くんじゃん」


 下を向いて書類に目を通していた部長さんは、自分の部下かと思って断ろうとしたが、隠しきれない永遠の魔力が近づいたことで顔を上げた。


 「今日入った新人の紹介に来ました」


 「へぇ〜その後ろの子かい?」


 と部長さんは短く綺麗な青い前髪をかき分けて、指を指した。


 作見は前に出て、


 「柏木作見です。よろしくお願いします!」


 と意気揚々に名乗った。


 「よろしく。私は、池創愛いけそうあ。この技術部の部長を任されている」


 この7階で働く人たちの主な仕事は、バネに乗っ取られた人の身元確認や死亡した際の親族への連絡など、なかなかしんどい役割だ。


 技術部に所属する人は皆魔力を持っている。魔力持っているということは、バネを認識できるということだが、彼らは街には繰り出さない。


 なぜなら――()()を持っていないからである。全員が全員持っていないわけではないが、戦闘に向かないタイプであったり、本人が戦うことを望まない場合もある。


 魔術師はみんなで魔術師だ。向き不向きは考慮し、最大限に尊重し合う。それが、この世界を守っている者たちだ。


 「作見くんは見たところ戦闘タイプだよね? 誰の下につくの?」


 創愛は書類をまとめて端に置いて、肘をついた。


 「一応、零花さんです」

 と永遠は横から師匠らしき名前を呼んだ。


 「えヅ!? あの人面倒とか見れるタイプなの?」


 その名を聞いた、創愛はかなり驚いた様子で、作見に心配の目を送る。


 「そんなにヤバい人なんですか……?」


 作見は海里に耳打ちする。


 「やばい、というかクセが強いというか」


 みんなの反応を見た作見はだんだん、会うのが恐らくしなって、体が震え出す。


 「苦労するかもだけど、頑張ってね」


 創愛は立ち上がって作見の肩を持つ。まさに同情されているような表情だった。


 「は、はい」


 「じゃあ次行こうか」


          ◇

 ――8階。


 ここは、先ほどのオフィスのような作りとは違い、例えるなら旅館全体がそのまま入っているみたいだ。和を感じる木の廊下に、襖で隔たれたいくつもの部屋。異質すぎる空間だ。


 「ここはどうゆう階なんですか?」


 「ここはね――」


 「永遠だぁーー!!!!」


 襖からちらりと覗いていた小学生くらいの少年が永遠に抱きついた。


 「ここは子供たちの家だよ」


 永遠は少年の頭を撫でながらそう答えた。


 「家?」


 どのような意味かよくわかっていなかった作見は頭を傾げる。隣に立った海里が、


 「バネの被害に遭った家庭――特に両親を失った子供たちがここで暮らしている」


 とさらに説明してくれた。


 「………」


 それを聞いた作見は、少し顔が陰る。


 祖父母に引き取られる家庭も多いが、ここでの暮らしを本人が了承した子供だけがここで生活している。


 その子たちは、揃って魔力に目覚めている。幼い頃から魔力に目覚めると、成長と共に魔術を発現する可能性がある。


 もしそうなれば、バネから狙われることとなり、被害が拡大する恐れがある。そのことを理解した子供たちはここでの生活、いわば保護している状態である。


 そして、成長した子供たちは永遠や千咲のように魔術師になる例や技術部で働く例もある。


 「僕や千咲もここで暮らしていた時期がある。だから、たまには仲良くしてやってよ」


 永遠は取り繕った笑みで振り返って言った。


 「わかりました……」


 永遠は少年に手を引かれて、食堂の方へ向かった。


 その間、襖から大勢の子供たちが覗いている。年齢は小学生から中学生までと幅広い。


 作見は大勢の子供達を見た時に思った。


 「ここまで……」


 これまで、バネの被害というの防いできたが、いざ、被害者の数を見ると瞼が重くなってくる。


 食堂に着くとそこは、まさに食堂だった。大学などに設置された食堂にも引けを取らない。


 食券機があるが、お金はもちろんのこと必要ない。値段は書かれておらず、ボタンを押すだけで紙が出てくるようになっている。


 メニューも中々豊富であり、昼も近いことからいい匂いが食堂に漂う。


 「なかなか便利でしょ?」

 

 永遠はドヤりながら食券機に手を置いた。


 「これは、凄いですね」


 「でも、ここにはもっと凄いのがある」


 目を輝かせながら感心していた作見だったが、海里はボソッと呟いた。


 「もっと?」


 「次行こう」


          ◇

 ――9階。


 8階のような異質さもなければ、技術部のようなオフィス感もなく、目に入るのは、エレベーターの扉より少し幅のある廊下だが——赤黒く、もふもふで高級そうな絨毯が引かれている。


 まるでホテルの廊下みたいだ。そして、黒いドアが5つあるのが見える。


 正面に一つ、そして左右に二つずつ部屋に続いているのだろう。


 「ここは一体?」


 作見は考えるが一向に答えが出ない。


 「ここはEXTRAの個人室だけがある階になってるんだ」


 永遠は前に進み出して、左側の一番手前にあるドアを指差して、


 「ここが僕の部屋」


 と言った。


 この階は永遠の言った通りEXTRAが使う部屋がある。


 正面にある部屋はリーダーの部屋であり、右奥の部屋が副リーダーの部屋である。そのほかの3部屋はメンバーの部屋だ。


 「じゃあ、早速だけど作見の師匠になるかもしれない人の部屋に行ってみようか!」


 固唾を飲んだ作見は頬に汗を浮かべながら武者震いする。


 「は、はいっ!」


 そんな作見に対して海里は目尻を下げて、鼻で息を吐くように笑った。


 そして、3人は右奥のドアの前に立ち、中指の第二関節で3回ドアを叩いてノックした。

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