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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第二部 魔術編 1章:交錯乱世

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34話:10年越しの再会

 ダクと戦っていた謎の男が気になる永遠と迅だったが、消えかかってる司の魔力を辿って、永遠はと迅はすぐさま向かった。


 司の目の前に瞬間移動した2人は、その負傷度に絶句する。その側で作見は自分の服を破って、司の両腕を縛って止血している。


 「君は確か……」


 永遠は前に傷を元に戻した少年だということを一目で理解する。恐怖に取り憑かれ、そのどうしようもない表情は助けを求めている。


 司の表情は病人のように青黒い。体温も低く、一刻の猶予を争う。


 「少しどけ」


 迅は作見の首根っこを掴んで後ろに下げる。司の前にしゃがみ込んだ永遠は、司の右腕に触れて魔術を発動させる。


 すると、腕から流れ出る血が体内へ戻っていく。そしてダクと響の戦闘で吹き飛ばされた司の腕が、ゆらゆらと浮いてやってくる。

 

 その腕は取り外し可能みたいな動きでガチャン、とはまって骨や血管、神経――まるで腕は離れなかったように元に戻った。


 「ふぅ、ほんの少しでも遅れてたらやばかったかもね」


 顔から垂れた汗を拭って、真っ先に京都に戻って本当に良かったと、永遠は心から思う。


 もし東京で昼ごはんでも食べていたら――司の命はなかっただろう。


 「さっきのあいつ、相当強いな」


 迅は目の前にしたダクを敵ながら称賛する。


 「そうだね。司のこの傷と――」


 2人はまだ体を震わせて怯えている作見に目を向ける。


 「おい、しっかりしろ」


 と迅は作見に目線を合わせてしゃがみ込み、ペシペシと頬を叩く。


 「無理もないよ。彼は魔術に目覚めてまだ3ヶ月そこらと聞いてる。さっきのあいつは、マジになった千咲くらいの圧を感じたし――」


 永遠から見たダクの評価は間違いなく六要以上――今の作見や司がどう足掻いても太刀打ちできる相手ではない。


 「……お前、立てるか?」


 迅はそう声をかけるが、特に反応もなく作見に聞こえてるのか聞こえていないのかわからない。まるで魂を抜かれたみたいだ。


 「肩を貸してあげなよ。僕は司をおぶっていくから」


 「いや、飛んでったほうが早いだろ」


 「あ、」


 永遠は司に使った魔術で集中力が切れたのか、迅が瞬間移動できることをすっかり忘れていた。


          ◇

 西の拠点の前までテレポートで飛んできた永遠たちは、先ほどダクと戦っていた男と話している大輝は泣きそうな顔をしていた。


 「ちょ!? 大輝さん?」


 司を肩に担ぎながら、永遠はその表情に驚きを隠せない。


 「あぁ……すまない。旧友だったもんでな」


 大輝は目を擦って響を紹介する。


 「こいつは、春山響。行方不明だった俺の同期だ」


 「は、春山響って……あのですか!?」


 その名前に聞き覚えがあった永遠と迅は目を見開いて一瞬瞬きを忘れる。


 10年前に東西六守要に席を置き、魔道士が存在するとされた大陸の有無をはっきりさせた人物だ。


 「なぜ今になって、姿を見せたんですか?」


 迅の問いかけは、彼の疑問どころか――全魔術師が思うところだ。


 「さて、どこから話そうか」


 戦闘での負傷は浅いもので、響自身問題ない顔をしている。


 「大輝さん、明日また会議をしましょう。他のメンバーには僕から伝えておきます」


 「確かにな。ここで聞いたとしても、本部や東の連中に報告するのは二度手間だもんな」


 今回の会議で海里がもたらした情報は、魔術師たちにとって確実な一歩だった。だが、響の帰還により、一歩どころではなくなったかもしれないという可能性が永遠や迅の気持ちを高揚させ、表情から期待感が滲み出る。


 「東は僕が声をかける。迅は本部に連絡お願いするよ」


 「わかった、今すぐ行こう」


 と言って作見と司をお願いしようとしたところで、買い物から帰ってきた言美が、「何があったんだ」と顔に書いた表情で周囲を見渡していた。


 「あ、おかえり言美!」


 買い物袋を下げた言美はイマイチ状況が飲み込めていないが、永遠は司を預けて迅に触れる。


 「もう1人で立てるだろ」


 迅は支える肩を解いて、作見を離す。


 すると全身の力が抜けたみたいに崩れていくが、響は腕を絡めて起き上げようとする。


 「頑張ったね。あんな奴相手に、よく立ち向かったよ」


 その言葉に、作見は自然と涙が溢れていた。


 「では、僕らはこれで!」


 颯爽と迅と永遠は瞬間移動で行ってしまった。


 響たちは、拠点の中に入り、しばしの雑談に入る。司は自室に寝かせ、言美は作見の面倒を見ながらリビングの椅子に座らせる。


 「やっぱ、変わってないねー」


 「ここは京都だぞ。和テイストをガラリとはかえねーよ」

 

 室内を見た響はリビングの椅子に腰掛ける。


 「あれから10年…やっぱ老けたなお前」

 響はため息混じりに大輝に視線を送った。


 「うるせぇ!」


 この懐かしさが2人を10年前に戻し、互いに笑い合う。


 「久しぶりに秋人や冬乃にも会いたいな」


 そう呟いた響の言葉は、大輝をすぐに曇らせた。なぜなら、大輝と響の同期は誰も残っていないのだから。


 「どうした?」


 「響、秋人と冬乃はもう死んだよ――もしかしたら、シカバネになってるかもしれない……」


 響は一瞬目をぴくっと動かせるが冷静を装う。


 「そっか、やっぱり、ここは地獄だな」


 10年前に経験した壮絶なこの世界を再び実感した響の目には何も反射しないほど黒く塗りつぶされていた。

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