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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第二部 魔術編 1章:交錯乱世

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18話:連休明けの憂鬱

 北海道での戦いから5日が経った。特別任務を1日で終わらせた作見は残りの休みを有意義に使えるなんてことはなかった。


 学校は休みとなっても、魔術師の任務に休みはない。心身ともに疲弊している。


 そんな中、連休最終日の任務をこなし、連日通り、睡眠に時間を割こうと自室へと向かおうとする。


 「ん? どこいくんだよ?」


 1人で歩いていく作見を見た司は廊下に顔だけ出して引き留める。


 「えっ? 風呂入って寝ます」

 何を当たり前のことを聞くんだ。と言いたげな表情で作見は返す。


 「風呂はいいけど、今日学校だぞ」


 その言葉を聞いた瞬間、作見の中で雷が落ちる。そして膝から崩れ落ち、四つん這いになって唸る。


 「忘れてたのか……」

 司は可哀想にと思いながら息を吐く。


 リビングでは、ストレッチをしている海里や片付けをしている言美が作見の嘆きを聞いていた。


 言美は紙に「あるある」と書いた紙を持って、気の毒そうに笑っていた。


 (あいつカレンダー見ないもんな……)

 体を伸ばしながら海里は心の中でそう思った。


 そんな作見に、大輝は腰を落として作見の背中を摩って、


 「大丈夫だ作見!まだまだ若いんだから!」

 と励ます。


 「はい……」

 寝ることを諦めた作見は海里達と風呂場へてくてく歩いて行った。


           ◇

 いつも通りのチャイムが鳴り、昼休みが始まる。


 机で寝る姿勢をとりながら、作見はうとうとしていた。


 「お前いつも眠そうだよな」

 圭は椅子と弁当を持ってこっちにくる。


 「俺にも色々あんの」

 腕まくらで寝ている作見は絞り出したような声で返す。


 「夜な夜なゲームばっかしてるんだろ」

 

 圭の浅い予想は当たるはずもなく、作見は聞き流して言美の作ってくれた弁当を机の上に取り出す。


 そして、2人は雑談しながら食事を始め、いつも通りの昼休みを過ごす。


 「あ、そういえば……ほい」


 作見は北海道で買ったキーホルダーの存在を思い出し、片手で鞄を漁りながら手に取って圭に渡す。


 「えっ? くれんの?」

 手のひらの上に置かれたキーホルダーを眺めながら圭は聞き返す。


 「北海道行ってきたからそん時のお土産」

 

 「まじか。おいおいうれしーじゃねぇーか!」

 圭はテンションを上げて舞い上がった様子だった。


 すぐに腰につけたキーケースにまりものキーホルダーを付ける。


 「どう?」

 ドヤ顔で圭は作見に見せる。


 「どうって、似合ってるのかそれは?」

 キーケースのセンスはよくわからない作見は正直気に留めていなかった。


 「いるだけで嬉しいんだよ! ありがとな!」

 

 「嬉しいなら何よりだよ」

 作見は弁当を口に運ぶ。


 「てか、北海道行くなら俺も誘えよー」


 「あーそんな大した用事じゃなかったから…」

 作見目を泳がせながら適当に誤魔化す。


 「そう?」


 「そう」


 そして2人は食事も終え、最後に一杯水分を補給したところで、圭は閃いたように言う。


 「俺もお返しに何か買ってやるよ」


 「え?いいよ別に、前ラーメン奢ってもらったし」

 圭にお金を使わすのはもうにわけないと思い、遠慮する。


 「じゃあ、俺も遠出してくるわ!」

 圭は人差し指を斜めに向けて言う。


 「旅行すんの?」


 「そ! 俺もどっか行ってなんかお土産渡すのはいいだろ?」


 「まあ、それなら」

 申し訳ない気持ちもあるが、止められそうにない圭を見て作見は折れる。


 「決まりだな。行ってみたいところもあったし、月末の土日にでも行ってくるわ」

 そう言って圭は弁当箱と椅子を持って席を立つ。


 「気をつけてな〜」

         

            ◇

 学校が終わり次第、作見はそそくさと帰宅してベットに潜り込む。


 「はあ〜落ち着くー」

 アラームをセットして作見は日没まで目を閉じる。


 するとすぐにアラームが鳴る。


 「えぇ?」


 携帯に表示される時間を見ると、日没の時間が迫っていた。


 「瞬きしかしてないんだが」

 作見は信じられなかった。目を閉じてすぐにアラームが鳴った感覚だ。


 全く眠った感もなく、嫌々起きて着替えに行く。


 そしていつも通り、魔術師として夜の街に繰り出す。


 ビルの上から街を見下ろしながら作見は深くあくびをする。


 「眠そーだな。ちょっと寝てたんじゃないの?」

 司はあくびをする作見を見て、面白そうに聞く。


 「なんか、一回目を閉じたらアラームが鳴ってました」

 

 「あーーたまにあるよな。全く寝た気にならないから嫌なんだよあれ」

 ポケットに手を突っ込みながら司は言う。


 「それより北海道はどうだった?」

 作見は帰還してから疲労で死にそうになっていたから、司は聞けていなかった。


 「俺は特に何もしてないですね。千咲さんが全部終わらせてましたね」

 作見は深くしゃがみながら、髪を靡かせる。


 「らしいね」


 「俺あんまし強くなってる実感が湧かないんですよね。まだ守られてるっていうか……」


 「海里が言ってたけど、作見は想像以上に動けるってね」


 「海里くんが……?」


 「そう。実感が湧かないのは作見はまだまだ経験値が足りないからなんじゃない? 魔術師を続けてると、これから戦うことってのはどんどん増える。乗り越えた先に自分がどう感じているかも変わってくると思うよ」


 「司くん……」

 作見は司を見上げて少し微笑む。


 「さっ! 行くよ作見!」


 「はい!」


 2人はビルから飛び降りて、任務を開始する。


           ◇

 薄暗い不気味な、ゴミ溜めのような場所で海里は1人立ち尽くしていた。武器である紫の棒を地面に突き刺すように立て、先端に顎を乗せて楽な体制をとっている。


 これは送られてくるシカバネと戦う場所だ。日によって数は変動するが、連戦が続くとかなりの疲労が溜まる。これが六要の役目だ。


 そんな時、海里はポケットから小刻みに振動を感じた。


 「んっ?」

 ポケットに入っているのは電話だ。ガラケーのような見た目をした携帯を海里は取り出して、着信が来ていることを確認して、電話に出る。


 「――もしもし?」


 「海里か? こちら星一」


 「星一か!? そっちはどうなんだ!?」


 超特別任務中の星一は魔力で連絡することができる電話を持っており、何かあった時に仲の良い海里に連絡が行くようになっている。


 そして、星一の近況報告を受けた海里は安心するような表情で電話を切った。この電話は魔力の都合で5階までと決められている。今回で3回目の電話だったということは、あの2回で星一は強制的に戻ってくることになっている。


 海里は携帯をポケットにしまったところで、目の前から黄緑の光と共にシカバネが現れる。


 急に瞬間移動したシカバネは周囲を見渡して混乱している。そんなことは海里には関係ない。すぐさま武器である棒を構えて、処理を開始した。

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