17話:仲間を討った者
作見と海里が3階についた頃、千咲は白い手袋で女の子の姿に戻ったウカノを転送するところだった。
千咲はそっと触れて転送し、立ち上がって2人に情報共有をする。
「ここでの任務は完了した。明日帰ることにしよう」
千咲はそう言い放ち、1人で階段を降りていく。
「千咲さ――」
作見が声をかけようとしたところで、海里が肩を持って首を横に振る。
少し間を開けた後に廃病院を跡にした2人はホテルへと帰る中川辺で少し話す。
「千咲さん……酷い顔してましたけど大丈夫ですかね?」
作見はペットボトルの水を飲んで海里の方を見る。
「大丈夫…ではないだろうな。多分シカバネになった赤石を自分の手で斬ったんだ。そうなってしまった後悔は強いと思う」
「………」
「作見もこのことを忘れずに覚えておくんだぞ。時には仲間の格好をした敵と戦うかもしれない。こんなふざけた世界で僕たち魔術師は戦っていることを」
「はい……」
「うん。じゃあホテルに戻ろうか」
2人はギアを上げて走り、ホテルへと帰還した。
今回の北海道特別任務は東西六守要——高切千咲、鳴瀬海里、両名の名の下に解決された。
負傷者 0
死者 1
◇
真夜中の森林は樹海のように映る。そんなじゃないの中にポツンと現れた円形の校舎のような建物はその樹海に負けない雰囲気を醸し出す。
「痛ってー、結局何もできなかったな」
タバノは、左手から血がポタポタ落ちながら、円形校舎を見上げる。
そしてヒョンっとジャンプして上の階へと飛び乗る。
「2人ともごめーん。失敗しちゃった」
タバノはその階にいた2人組に挨拶程度に軽く謝る。
「えぇ!? タバノでも無理ってことは俺らが行ってたら死んでたんじゃない!?」
灰色の髪に吊り上がった目をした高校生くらいの少年は隣に座っていた青髪のツインテールが特徴的な女の子に目を向ける。
「まあ、高切千咲が来てるなら下手に手は出さないほうが利口ね」
デミアは判然と言う。
「で、結局対象はやられちゃったの?」
ヒョウは話を本題に切り替える。
「間違いなく逝っただろうね」
タバノは首を横に振る。
「そっかぁぁー。10人って案外すぐ集まんないんだね」
ヒョウは伸びるように仰向けになる。
「でも後2人なんでしょ?」
デミアはヒョウを覗き込む。
「ナイルが認める、が抜けてるよ。早まって2年前に仕掛けるから3人も失うんだよ」
ヒョウは上半身を起こし、胡座を描く。
「でも魔術師側の戦力は大体把握することができた。これは大きいと思うよ」
タバノは残った右手の人差し指を立てて言う。
「でも現状の勝率は3割くらいなんだろ?」
「まぁーそうだね。10人揃った時には5割と予想しても、ナイルはそのメンツを駆使して勝てる作戦を考えてくれるはずさ」
タバノも錆びたパイプに座る。
「そううまくいけばいいけどね」
心配そうな口調でデミアは言葉を濁す。
「それまではとことん暗躍しようじゃないか」
タバノのその言葉に呼応するようにヒョウとデミアは希望を宿した表情をする。
「それより腕誰かに直してもらえよー」
ヒョウはバカにするような口調で笑う。
「誰か直してくれるといいんだけどね」
タバノは少し困惑した表情で腕が無くなったこことに凹んでいる。
◇
昼過ぎの空港で、3人はどこで昼ごはんを食べるか揉めていた。
「僕はラーメンが食べたい」
海里はまっすぐに千咲に言う。
「だぁかぁらぁ! ラーメンは昨日食べたんだよ!!」
千咲は二食連続でラーメンになることを絶対に避けたかった。
かれこれ30分2人は言い合っている。
「俺はなんでもいいんで、終わったら呼んでください。そこ座ってるんで」
作見に怪物2人の喧嘩を止められるはずはなく、諦めて近くの椅子に腰を下ろす。
そしてさらに20分後—2人は作見の前に立つ。
「あ、終わりまし――」
「「作見は何が食べたい!?」」
2人は迫真の表情で迫る。
「えっ?」
意味がわからなかった。作見に聞いてくるのなら今まで話していた時間はなんだったのか、頭を抱えて、悩み出す。
「2人の食べたいものの話は?」
「こいつと喋ってても解決しねー」
腕を組みながら千咲は親指で海里を指す。
「だから、作見が食べたいものを食べにいくっていうことに決まった」
海里は動じず表情を変えずにに言う。
「えぇぇっっっーーー!!!」
驚愕した表情で作見は圧倒される。
「ちなみに私は海鮮系を推したい!」
千咲はあえて食べたいものを言うことで、作見がそう答えてくれるように手を合わせて祈る。
「作見、信じてるぞ」
海里も同様に無気力さしか感じないお祈りをする。
「えーっと、じゃあ、……ラーメンで」
申し訳なさそうに小さい声で控えめに宣言した。
それを聞いた海里は、無言で肩を組んできた。
千咲はというとその場で崩れ落ち、白くなっている。
「ごめんなさいっ! 海鮮は昨日食べたんです」
作見は笑いながら手を合わせる。
そして3人でラーメンを食べた後、お土産を物色していた。
「買いたいものあるなら買いなよ」
海里はまだどれにするか悩んでいる。
千咲はカゴからはみ出すほど商品を入れていた。
作見はキーホルダーを眺めながら、
「圭に何か買うか」
と言ってまりものキーホルダーを手に取る。
買い物を済ませ、そうこうしているうちに千咲の飛行機が出る時間になる。
「それじゃあな。まぁ海里はまた近いうちに会うことになるか」
「そうだね」
「お疲れ様でした!!」
「お疲れ。作見も海里を追い越すくらい強くなるんだぞ」
千咲はそう言って手を振りながら歩いていく。
「元気そうで良かったですね」
「自分の中でちゃんと着地させたんだろ。こういうのも魔術師にとっては必要なものとも言える。辛い時にしっかり発散できる何か自分の支えになるものをな」
「発散ですか」
「要は1人で溜め込むなってことだ」
「わかりました」
そして、2人も飛行機に乗り、この北海道という地を跡にする。




