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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第二部 魔術編 1章:交錯乱世

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13話:六要最強

 凛々しい女性の後ろには、いかにもチャラそうな少年が立っていた。


 女性は海里の隣に腰を下ろし、少年は水を入れに行く。


 「2年ぶりくらいか〜?」

 その女性は海里と肩を組む。


 「――そんくらいじゃない?」

 

 そんな2人を見た作見は、


 「仲良さそうですね!!」

 とニコニコしながら言う。


 「へへっそうか?」

 少し嬉しそうに女性は返すが、海里は、


 「………」

 無言でそっぽを向く。


 「自己紹介が遅れたな! 私は高切千咲たかぎりちさきよろしく!」


 高らかに名乗りをあげて手を出す。


 「柏木作見です!」

 作見も名乗り2人は握手を交わす。


 「俺は、赤石健悟あかいしけんごだ」

 グラスに入った水を机に置いて少年も名乗る。


 今回の任務のメンバーが揃ったところで作見が注文したハンバーグが届く。


 「美味そうだな、私も頼もうかな」

 千咲はハンバーグに目を奪われていると、海里が喝を入れる。


 「――千咲」

 呆れた声で海里は千咲の名を呼ぶ。


 「おっと、じゃあ今回の任務について概要を話そう」


 皆の顔つきがキリッと変わり緊張感が漂う。


 「今回こうやって私たちが呼ばれたのは、北海道を防衛していた魔術師の行方がわからなくなったからだ」


 「1人くらいならよくあることなんじゃないんですか?」

 作見は思ったことをすぐに聞いた。


 「確かに、いつ死んでもおかしくない世界だが、今回の行方不明者は1人じゃなく5人だ」


 「しかもそれが立て続けに起きてるんでしたよね」

 この手の話は流しそうな健悟はしっかりと把握していた。


 「その通りだ――こんなくそ広い北海道で5人も失うなんて大損失だ」


 腕を組んでずっしりともたれかかる千咲の言葉には重みがあった。


 (そうゆうことか)

 海里もその説明を受け、心の中で納得する。


 「だから、この問題を絶対に解決させるために本部は六要である私と海里を指名したってわけだ」


 千咲のその言葉を聞いた作見はフォークで刺したハンバーグを持ちながら少しフリーズする。


 「ろ――六要なんですか!?」


 ハンバーグを口に運ぶのをやめて、店内に響くほどの声量で作見は驚く。


 「そうだよ。もしかして、最近この世界に入ったのか?」


 「は、はい。1ヶ月くらいです」


 「1ヶ月かー。伸び代の塊ってやつだな!」

 

 千咲はここで良い風に返したが、内心心配していた。今回だけでも5人いなくなってる現場に入って間もない新人が果たしてついてこられるのか懸念するが、海里がなんとかするだろうと思いながらも作見をサポートすると決めた。


 「俺も一年ちょっとだから、わからないことがあったらなんでも聞いてくれよ!」


 健悟も可愛い後輩が出来たと舞い上がり先輩肌を見せる。


 「ありがとうございます!」


 そんな2人を、眺めている海里と千咲は少し微笑む。


 「場所は小樽。今日の夜から散策を始めよう! それまでは各々好きな時間を過ごしてくれ!」


 「了解!!」

 3人は覇気のこもった返事をした。


 「じゃあ後でな!」

 と千咲は立ち上がり、健悟も後に続く。


 「ラーメン行こうぜ」

 と2人は雑談しながら店を後にする。


 そして、作見と海里——2人の間に少しの沈黙が生まれる。


 「なんか、たくましい人でしたね」


 作見は千咲の第一印象を伝える。


 「実際そうだよ」


 「海里くんより強かったりして?」

 冗談半分で言う。


 「強いだろうね」


 「まじですか」

 作見は千咲が始めに声をかけた時、海里が怯えている様子だったことはそうゆうことなんだろうと妄想する。


 「100回戦ったとして――多分、100回とも僕が負ける」

 険しい表情で海里はさっと言う。


 「――え?」

 水を飲んでいたコップを思わず落としてしまう。


 「というか、六要で一番強いと思う」

 

 「はっはっは……」

 作見は失笑することしかできなかった。


 千咲の強さは本部の面々も十分理解している。だからこそ、今回の任務に千咲が投入された事こそが、本部がこの案件を重く捉えていると同時にこの特別任務の危険度を示すものとなる。


 そのため、海里は千咲と邂逅した時、想像以上の任務になるだろうと考えていた。


 「まぁだから、間違っても手合わせしようなんて思わないでくれよ」


 「は、はい……」


 再び2人の間に沈黙が続くが、海里が問う。


 「まだ、食べられるか?」


 「ん? えぇ。まだ全然いけますよ」

 ハンバーグを完食した作見は正直腹の足しにもなっていなかった。


 「じゃあ、海鮮丼食べに行こう」


 ぱぁぁぁ、と満面の笑みで作見は、


 「行きましょう!!」

 と海鮮丼に釣られたのではなく、海里が誘ってくれたことがとても嬉しかったのだ。


 こうして夜まで時間を潰し、宿泊するホテルで準備を済ませた魔術師たちは、ロビーで落ち合う。


 「おっ! 来たな」

 正装に着替え、先にロビーで待っていた東組は、西組を待っていた。


 「お待たせしました」


 作見は千咲に一礼すると、赤い髪を後ろで結んでいることに気づく。


 「似合いますね」


 「へへっ! ありがと」

 

 と千咲は少し照れる。


 「海里さんのそれは棒ですか?」


 健悟は海里が持っている、紫の棒を見て質問する。


 「あぁーこれは――」


 「そのスタイルの方がいいかもな」


 海里が答える前に横から千咲が口を挟む。


 「それは良かったよ――棒の認識で合ってるよ」


 千咲に返しつつ、健悟の質問にも答える海里だった。


 初めて会った時から思っていたが、その棒の持ち手の部分に巻いてある白い包帯になんの意味があるのか、作見にはわからなかった。


 「そんじゃあ――行くか!!」

 

 千咲の掛け声と共に、北海道での特別任務が今夜始まる。

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