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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第二部 魔術編 1章:交錯乱世

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10話:平日初日

 シカバネとの死闘を終えた2人は、疲労困憊の中帰還する。既に戻っていた大輝と海里は俺たちの帰りが少し遅いことを心配していた。


 山を登り、宿を目の前にしたところで大輝と海里は2人の魔力を察知し、急いで玄関へ向かう。


 言美も朝食の支度中だったが、手を止めて大輝と海里の後を追った。


 血まみれの司の姿を見た3人は驚愕の表情で言葉が少し遅れる。


 「な、何があったんだ」

 大輝は緊迫した表情で司の両肩を揺らすように持ちながら言う。


 「後で話します。先メシ食いましょうよ」

 外見とは裏腹に軽く返事が返ってくる。


 その声色で、3人の心配は解消される。


 すると海里は作見へと目線を向けながら呟く。


 「作見は無事か?」


 「……幸い俺はなんともないです」


 「そうか」


 そう言って海里達はリビングへ戻る。


 作間も靴を脱いでリビングへ向かうが、司は乾いた血を落とすために洗面所へと向かった。


 そして、全員が揃い食卓を囲む。


 いただきますの挨拶をして、皆が一口食べた後に大輝が話す。


 「改めて聞く。司、何があった?」


 食べる箸を止めて、司は鋭い表情で話出す。


 「俺と作見が見回りをしている途中にシカバネに奇襲されました」


 大輝と海里は眉をぴくっと揺らすが、静かに続きを聞く。緊張感が漂うこの空気に、作見も額に汗を浮かべながら手を進めるが、耳を澄ませてみんなの表情を伺う。


 「そのシカバネは触れた相手を麻痺させるという魔術でした。不意打ちで触れられた俺たちは体を動かすことができなくて、やばかったです」


 「動けないってことは、手袋で触れることもできないってわけだ。どうやって切り抜けた?」


 「なす術もなく殴り続けられましたけど、そこで初めて極式に至りました」


 作見以外の3人は、極式というワードに目を大きく開いて驚いている様子だった。


 「麻痺そのものを曲げることができました。動けるようになった俺はちょっと腹が立ってたので、一方的に殴り返しちゃいました」


 その言葉に海里は特に反応はなく、無言でご飯を食べている。言美と大輝は少し、失笑していた。


 「まあ、2人が無事で何よりだ。いきなりシカバネに出くわすのは災難だったな――作見」


 「……」

 作見は食べる手を止めてどう返すか考えたが、結局返すことはできなかった。


 そんな作見の暗い雰囲気を感じ取ったのか海里は横目でじっと作見を見ていたが、気づくことはない。


 食事も終盤に差し掛かったところで司は思い出したかのように言った。


 「そういえば、対峙したシカバネが言ってたんですけど、あいつ――俺たちって三人称で話してる瞬間があったんですよね」


 全部平らげた大輝は爪楊枝を咥えながら推測を話す。


 「シカバネどもが組織化してる線はあるだろうな。2年前の大晦日の事も考えると尚更な」


 今そんなことを考えても仕方がない。そんな風な口ぶりだった。作見にとっては大晦日の事件を目の当たりにしていないからどれほどのものだったか想像もつかない。

 

 「それより、今日は学校だろう? 片付けはしとくから遅刻しないようにな!」


 そう言ってくれた大輝に言美はぺこっと一礼する。そして作見は絶望していた。このコンディションで学校に行かなければならないことに。


 というか、この2日で学生ということをすっかり忘れていたのだ。


 「俺は今日休みます。なんで片付けはやっときますよ」

 疲労が溜まっているであろう司は、食べ終わった食器をシンクは持っていく。


 じゃあ、俺もと名乗りをあげようとする作見だったが、


 「お風呂急ぐぞ」


 作間の肩を持った海里が急かす。


 学校を休むという希望が消えた作見は、作り笑いで「はい……」と返事する。


 そして、風呂を終え、制服に着替えた3人は学校へと向かう。


 憂鬱である。実際に経験する前と経験してからでは、全く違う。寝れないということは頭では理解していたが、これほどしんどいのか。


 (授業中に寝るか……)

 あくびをしながら下山する足が重い。加えて夜は任務――体が持つか作見は心配になっていた。


 学校に着いた3人は、各々教室へと歩いていく。席が前後の言美と作見は横並びで廊下を歩く。


 教室に入り、席に座ると作見は、「だあぁぁぁーーー」と嘆くような声を出して机にもたれかかる。


 そんな作見を見た言美はノートに「頑張って!!」と書いて見せる。


 「はは……努力するよ……」

 力のなさそうな声で返す。


 窓から外を眺めながら、ため息をこぼして色々考える。


 (そういえば海里くんは全然眠そうじゃなかったな)


 そう思った作見は言美に声を掛ける。


 「海里は眠そうじゃなかったけど、なんかコツとかあるの?」


 言美は顔を上に向けて少し考えてノートに書く。


 「コツというより慣れだね。海里は中学生の頃からこの生活の続けてるから」


 「ようは気合いってことかー」


 仰け反るように吐き捨てた作見は、再び机にひっつく。


 「2人とももう友達になったのか?」


 すると、作見の横の席の生徒が声をかけてくる。


 「うぇ? ああーまぁそんなとこだ」

 急に声をかけられて少し動揺する。


 「俺は、土林圭つちばやしけい。俺とも友達になってよ!」

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