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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第二部 魔術編 1章:交錯乱世

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7話:作見の魔術

 初任務を終えた作見は、朝食ができるまで、食卓の椅子に座っている。


 大輝と海里の帰りを待っている間、司は言美の手伝いをしながら時間を潰す。


 「初日の感想としてはどうだった?」


 司はキッチンから振り返って作見に言う。


 「地味なことばっかですけど...毎日やってる皆さんがすごいと思いましたよ」


 机に両肘をついて掌を頬に当てながら、眠そうに作見は答える。


 「そっか。まぁ徐々に慣れてくるよ」


 そうこう話していると、大輝と海里が帰ってくる。そして、リビングに入ってきた二人は、


 「今帰った」


 「……」


 上着を右手でかけるように持っていた大輝が挨拶をするが、海里は無言で入ってくる。


 「お疲れっす」


 「あ、お疲れ様です」


 司はそう言って朝食を並べ、言美もスケッチブックを見せる。


 作見は前屈みになっていた姿勢を直して、挨拶する。


 海里は紫の棒を部屋の隅に置いて、作見に近づいて、


 「――どうだった?」

 と聞いた。


 彼なりに作見のことを気にかけていたのだろう。


 「なんとか、やっていけそうですよ」


 普通に聞きた海里だったが、作見には高圧的に見え、表情に汗を浮かべながら答える。


 「そうか」


 そう言って海里は作見の隣に座った。


 そのやりとりを見ていた大輝は、少しニヤけながら、二人を見ている。


 (大丈夫そうだな)

 心の中でそう呟くのだった。


 朝食が出揃い、皆で食事を始める。


 いつも通り、大輝は何か報告がないが、みんなに聞くが、これと言って報告することはなく、平和な昨日だった。


 そんな中、作見は手を挙げて言う。


 「言美も東院ってことは、2人もそうですか?」


 食べる手を止めて司は言う。


 「そうだよ。俺も海里も東院の二年生」


 「だから、家ここなんですね」


 下山してすぐに学校がある事に引っ掛かっていた作見だったが、近いという理由でここに家がある事に納得する。


 「てか、年上だったんすね」

 目を細めながら作見は海里と司を見て言う。


 「言ってなかったっけ?」


 少し笑いを含んだように言い、司は作見を揶揄う。


 「言ってないですよ」


 「まあ、別に敬語じゃなくてもいいけどな」


 「そうですか?」

 隣にいる海里にも確認をとるように見つめる。


 「敬語だろ」


 ジトっとした目をしながら、海里は言い放つ。


 「す、すいません〜」


 そう言いながら、静かに首を司の方に向けると、司と言美は声を出すのを堪えながら、爆笑している。


 そんな雑談をしながら、食事は進む。


 みんな食べ終わり、言美が片付けてくれている。


 「この後、張り込みに行ってくる」


 そう言って大輝は再び上着を着てスーツのまま外出する。


 「どこに行かれたんですか?」

 これから睡眠するのがテンプレだと思っていた作見は、司に聞く。


 「誰かの葬式に行ったんだと思うよ」


 「……」

 その言葉で全てを察する。


 日中でもシカバネは活動する。死体があるなら嫌でも寄ってくるだろう。それに、参加する人も標的じゃないとは言い切れない。


 それを見張る意味で、魔術師は葬式に参加する場合があるのだ。


 少し場の空気が重くなるが、作見は思い出したように言う。


 「俺の魔術っていつわかるんですか?」


 「戦ってみないとわかんないよな?」

 司はその答えを海里に投げかける。


 「まあ、そうなんじゃない」


 「じゃあ、ちょっと組み手でもするか! なぁ海里!」


 いきなりの提案だったが、作見は


 「お願いします!」

 そう言って司を見つめる。


 返答がなかった海里はこれから寝るのだろうと思っていたが、シャツの袖を捲り上げながら玄関の方へ歩いていく。


 「えっ?」


 作見は困惑しながら司を見つめる。


 「意外とやる気になってるよ、あれは」


 「まじすか」


 口を尖らせるようにして、作見は緊張してくる。


 「手加減はしてくれると思うよ――多分」


 そう言われた作見は青ざめた顔で恐る恐る、玄関まで歩き、外でストレッチをしている海里が視界に映る。

 

 靴を履いて、息を呑みながら海里の目の前に立つ。


 「こ、殺さないでくださいね」


 喧嘩しかした事なかった作見は、構えとか知らないため、なんとなくで拳を前に出して構えを取る。


 「いや、殺すわけないやろ」


 玄関で座りながら見ていた司は、呆れた声で呟く。


 司の後ろからおぼんで水の入ったコップを4つ持ってきた言美も見学する。


 「行くぞ」


 そう言われた作見は、身体中が強張るような感覚に襲われるが、海里を凝視して動きを観察している。


 だが一度瞬きをした瞬間――海里の拳は作見の腹部に直撃していた。


 「うっ!?」


 ありえないほどの激痛が腹部から全身に広がり、その場で跪く。


 「ありゃ〜大丈夫かなー」


 座りながら右膝と右肘をくっつけて、手を頬に当てながら見ている司は少し作見を心配する。


 「はぁはぁ」


 見えなかった。何が起きたか理解するまで数秒かかるほどにわからなかった。


 これが六要――凄いな。この拳を受けた事で、どれだけ自分が底辺だということが理解できる。


 いつも表情を変えない海里がわからなかったが、少し……わかった気がする。


 「もう一度、お願いします!」


 立ち上がって言う。先ほどとは違って、表情に迷いがなくなっていた。


 「わかった」


 そして、作見はもう一度構える。


 だが反応できない。


 何度も拳を受け続けるが、作見は止めようとしない。


 「まだやる?」

 そう海里は聞くが、嫌そうな素振りは見せない。何かを掴みかけている後輩を後押ししたいのかもしれない。


 「海里さん、俺は絶対対応して見せますよ」


 鼻と口から出る血を手で拭って言う。


 海里は少し微笑んで再び構える。


 これが二人の最後の対峙。


 海里が動き出した瞬間を見逃さなかった作見の目にはこう映っていた。


 赤い線が自分の腹部を指している。


 この赤い線がなんなのか一瞬で理解した作見は、赤い線を避けるように動く。


 すると海里の拳が空振り目をピクピクさせて驚いていた。

 

 「まじでか」

 ポカンと口を大きく開けて司は呟く。


 言美は口に手を当てて驚きつつも、笑顔で拍手をする。


 海里の拳を避けた自分自身に驚いている作見に近づいて海里は、


 「やるな。何が見えた?」


 「なんか赤い線が見えて、それを避けたら自然と海里さんの攻撃も避けてました」


 自分の掌を見つめながら話し、作見は海里の目を見る。


 「真眼タイプか。多分作見の魔術は自分に向けられる攻撃や敵意とかが認識できるんじゃないか?」


 「そう、なんですかね?」


 「さあ、でも自分の魔術の片鱗が見えてきたな」


 そう言って海里は玄関に向かって歩いていく。


 入れ替わりで司が近づいて、


 「何か掴めたか?」


 「はい」


 その返事を聞いた司は満足そうにして、鼻息をふっと吐いて笑う。


 「次の目標は海里に魔術を使わせることだな」


 「えっ。使ってなかったんですか!?」

 棒線みたいに目を細めて言う。


 「あれはただ魔力のコントロールだけで動いてるだけだよ」


 「あっはっは……」

 作見は失笑する。


 「作見もすぐできるよ」


 二人は玄関に戻って、言美が入れてくれていた水を飲んでから体を休めるためにこれから日の入りまで少し休息の時間が始まる。

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