6話: ヘレンジーカー
--朝が来る。
窓から美しい光が差し込み、部屋全体を明るく包み込む。
「朝か……こんなにゆっくり寝れたのはいつぶりだろうか」
星一は目覚め、フキは布団にしがみつくようにまだ寝ている。幸せそうだ。
星一はベットから降りて頭を掻きながら熟睡するフキの前に立つ。
「起きろーーー!!!」
星一は、フキの布団を引っぺがし、起こしにかかる。
「なんだぁぁー!」
フキは絶叫して飛び起きる。
「おはよう」
星一はニヤつき、楽しそうな声で言う。
「なんだ……星一か。まだ眠いし寝かせてくれ」
フキはウトウトしながら、また横になって布団に巻きつこうとする。
「何言ってんだ。もうすぐ点呼の時間だぞ!」
「ッッ! もうそんな時間なのか!」
「だから起こしたんだよ」
二人は急いで制服に着替え、部屋で待機している。
コンコン、とドアから音がする。点呼の人が回ってきたと思い、フキはドアを開ける。
ドアを開けると、そこには、華麗な容姿で濃い青い髪が特徴的な女性が立っていた。
「君たちが、編入生だね。私は、ミアレ・フリフィス。君たちの担任教師だ、よろしく」
「よろしくお願いします!」
二人は元気よく返事をする。
「うむ。いい返事だ! 二人の点呼はもう済ませてある。教室に案内するから私についてきてくれ」
そう言われ二人はミアレの後をついていく。昨日は入らなかった校内の様子は星一が在籍していた学校とは大きく異なり、天井の高さから目に入る教室の大きさまでスケールがまるで違う。
品があっていかにも貴族が通うような内装だ。星一は正直場違い感が半端なかった。
歩きながらミアレは二人に説明する。
「教室に着いたら、私はホームルームを始めるから、二人はその最後に教室に入ってきてくれ」
「わかりました!」
教室に着き、ミアレはホームルームを始め、フキと星一は、ドアの前で待機している。
「では、今日は編入性を紹介する」
ミアレは一通り話終わり、最後に教室に入ってくるよう掛け声をする。
フキがドアを開け、星一がそれに続く。教室に入ると20人ほどの生徒がおり、こちらをじっと見つめている。
「編入生のフキです」
「同じく星一です」
教室はざわめき始める。あの編入試験を合格した人が二人もいるということに。
「二人はこの学園についてわからないことが多いと思う。みんな仲良くするように!」
ミアレはそう言って、教室を去る。
まるで大学の講義室のような教室であり、後ろの窓際の席に二人は座る。
「授業ってどうゆうのをやるんだろーな?」
机に肘をつきながらフキに聞く。
「よくはわからないけど、選択で歴史と乗馬があるみたいだよ」
「へえ〜別にどっちでもいいなぁ〜」
興味がなさそうに星一は答える。
「なら一緒に歴史を選択しないか!」
フキは前に乗り出しながら星一に言う。
「ここの歴史を知っておいたら、今後役に立つかも知れないよ!」
歴史が好きなフキはどうしても星一と歴史の授業が受けたそうだった。
「なら歴史でいいよー」
フキの熱量に押され、星一は歴史に少し興味を持つ。
「よっしゃ! ありがとう!」
今日の夕飯が自分の大好物だったかのようにフキは喜ぶ。
二人は、雑談をしていると教室のドアがドン!と勢いよく開く。
長身の男が入ってくる。鋭い目つきに山吹色の髪を上げたその男の威圧感に星一以外の生徒はとてつもない威圧感を感じ取る。
生徒たちはその場を動かず、まるで災害が過ぎ去るのを待っているかのようだった。
男はフキの目の前まで行き、ニヤリと笑い、こう言った。
「お前がフキだな?」
「そうですけど」
(誰だこの人)
「俺は、ヘレン・ジーカー、この学園の生徒会長だ!」
堂々と名乗りを上げる。
ヘレンの鋭い眼光に身体中が震えそうになるが、フキは臆せず聞いた。
「生徒会長がなんの用ですか?」
「単刀直入に言う、生徒会に入らないか?」
ヘレンの声が聞こえた生徒達は、口をポカンと開け、驚いていた。
「なぜ俺を?」
フキはすぐには返答しない。
星一は横目でじっと見ている。
「編入試験の映像を見た。お前の力は役に立つ!生徒会に入って俺の下で働かないか?」
フキは、困惑した表情で尋ねた。
「..….あの、星一は?」
「必要ない!」
ヘレンは強く即答する。
「魔法が使えない者に、生徒会は相応しくない。戦えないものは足を引っ張るだけだ」
星一はヘレンの言動をまるで気にしてない様子で窓から外を眺めている。
フキは真剣な表情でヘレンをまっすぐ見据える。
「悪いけど.…..お断りします。俺は星一と一緒にやっていくって決めてるんで」
急にガラスでも割れたみたいになった教室全体が静まり返る。
ヘレンはフキをじっと見つめ、わずかに笑みを浮かべる。
「...…そうか。俺の誘いを断った奴は、お前で二人目だ」
「二人目?...…それって--」
フキの質問を聞く前にヘレンは後ろを向き、教室を後にする。
静寂が戻った教室で、フキは不安そうに呟く。
「不気味な人だったな...…」
「最後の一言は気になったな。最初に断った一人目が誰なのか興味が湧いてきたよ」
「...…でもヘレンさんって強そうだったな」
「まあまあって感じかな。今のフキじゃちょっと厳しけど鍛錬次第ですぐに追いつくよ」
星一は笑っているが、その眼差しは計算高く、何かを思案している。




