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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 3章:研究所
55/64

55話:明日へ

 ベッドで眠る少女のいる部屋に窓から光が差し込み、起きろとでも言っているかのように瞼を照らす。


 「――うぅっんっ」

 ゆっくりと目を開けたクラネは周囲を見渡す。


 その景色は何年もそこで過ごした、自分の部屋だった。


 「家に帰ってる?」

 最後に覚えている記憶は急に目の前に現れたセナの姿であり、なぜ自分が家にいるのか少し混乱して、頭を傾げる。


 体を起こし、赤い絨毯に足を伸ばして歩き、クラネはドアを開ける。


 廊下に出て、左奥にある響の部屋を目指して赤い廊下を歩く。


 歩きながら自分の身なりを見て思う。


 (服、結構汚れたと思ったけど、誰か着替えさせてくれたのかな。頭に包帯もついてる。そう言えば切ったっけ。ここにいるってことは何とかなったってことかな)


 クラネは響の部屋の前まで来た。ドアノブに手をかけると話し声が聞こえてきた。


 クラネは少し微笑んで部屋に入る。


 「起きたか!」

 部屋のソファに座っていた星一は立ち上がって嬉しそうに言う。

 

 「おはよう!!」

 クラネに飛んで抱きついたピリィも嬉しそうにしていた。


 響やセンリ、コニスたちは目を閉じて何も言わないが、安心した表情だった。


 座っていたフキとエレサ、フランも表情を明るくする。


 「特に問題なさそうですね。とりあえず何か飲みましょう」

 セナはクラネの隣に行ってそう言う。そして何か飲み物を取りに行くがその足音はリズムを奏でていた。


 「7日も寝てたんだよ」

 サアサはクラネの肩に乗ってほっぺをツンツン触る。


 「えっ!?」

 そんなに寝ていたとは思わず自分でも驚く。


 「心配したんだよ〜」

 サアサは飛んで、指差してクラネの鼻を何度もツンツンする。


 クラネは皆が暖かく迎えてくれたことが嬉しいのか少し下を向いて微笑む。


 「ここに座ってください」

 ソファの前にある机に飲み物を置いたセナは優しく手を指して誘導する。


 「はい」

 クラネは座って一口水分を取る。


 「クラネも回復したし、さっきの話の続きをしよう」


 響は先ほど重要な話を始めようとしていた。


 「星一くんとフキくんは知ってると思うけど――僕は帰ろうと思う」


 「「……いっ!?」」

 一同はその言葉に驚愕する。


          ◇

 響はホームに帰る前、森の家で星一と話し合いをしていた。


「星一くん、電話の使用回数はあといくつかな?」

 

 「……あと2回だったと思います」

 ベッドに座り、顔つきをキリッと変えた星一は言う。


 「単刀直入に言うね。僕が帰るのはありかな?」

 響はさらっと大事なことを言った。


 その言葉を聞いた星一は右手で顎を触りながら考える。


 星一の目の前にいたフキは顔に汗を浮かべながら二人の会話を聞いていた。


 少しの間沈黙が続き、星一は答えを出す。


 「俺は――全然良いと思います」

 

 「いいのか!?」

 フキは予想外の星一の返答に咄嗟に声を出してしまう。


 「ああ。響さんも六要ろくようでしたよね?」


 「そうだよ」


 「今の西側は俺が抜けて六要が二人の状態なんだ。響さんが戻ればかなり楽になるはず」

 星一はそう響に言うが、フキに説明するかのように話す。

 

 「そうなのか?」

 説明してくれたが、フキはよく分からず、腕を組みながら少し頭を傾ける。


 「じゃあ、あと1回になったタイミングで僕は帰るよ」

 ベッドに座る響は目を閉じながら立ち上がり、そう告げる。


 「星一くんの帰る当てが無くなるのは心配だけどね」

 去り際に本当にいいのかもう一度確認する。


 「大丈夫ですよ。みんなまとめて帰れる可能性が少しあります」

 星一は自信ありげにそう言うが、響は心配させないために強がっているのか分からなかった。


 「君がそう言うなら大丈夫なんだろう」

 そう言って響は部屋を後にする。


          ◇

 「ということになったんだ」

 響は経緯を話し終える。


 「だから、星一くんの持っている電話の回数があと1回になったらしばしのお別れだね」


 部屋の空気が重くなる。


 「皆んな重く捉えすぎだ。二度と会えなくなるわけじゃない。俺が帰る時皆んなも行くんだからその時会えるよ」

 星一は皆の不安を取り除こうと細部まで説明する。


 「それにまだ2回残ってる」

 そう言って電話を取り出して見せるが、その電話には1と表示されていた。


 「うぇっ!? なんで!?」

 その表示を見た星一は両目が飛び出そうな勢いで驚く。


 それを見た皆んなも同時に驚いていた。


 ただ一人だけ気まずそうに青ざめている。


 「ご、ごめん。前にそれいじってたら回数減った」

 ピリィは白状する。フキに注意されたにも関わらず気になって遊んでいたことを。


 「ま、まじかよ」

 星一は魂が抜けたように呆然としていた。


 「ごめんっ! そんな大事なものだと思わなかったんだよーー!!」

 ピリィは懇願するように座る星一の膝に両手を置いて跪いて謝る。


 「あっはっは!!」

 響はその光景をみて笑い転げていた。


 「はぁー。もういいよ、やったことは仕方ない」

 星一はピリィの頭をポンポン撫でて慰める。


 「うぅぅ」

 

 「もうやっちゃダメだよー」

 サアサはピリィの肩に乗って言う。


 「じゃあ、今から帰ろう」

 残り一回になったことで響の行動は早かった。


 星一は電話を響に渡す。


 響は部屋の中心に立ち、電話を開く。


 最後に電話をこちらから掛けることで、響は元いた大陸に転送されることとなる。


 「じゃあ後は頼んだよ」

 真っ直ぐに星一を見つめて後を託す。


 「はいっ!!」


 そしてボタンを押した響は青白く光り輝き、数秒たった後その場から姿を消した。


 「一瞬だな」

 フキはボソッと呟く。


 「これが俺らんとこの最高技術なんだよ」

 フキの方をポンと叩き、星一は言う。


 「これで俺の帰る当ては無くなったけど、帰り方を探していこう」

 ポジティブに星一は皆に宣言する。


 「無鉄砲だねぇ」

 壁際にもたれかかるコニスは腕を組みながら呟く。


 「人間はこうでないとな」

 センリは微笑みながら小声でコニスに返す。


 「それまでは、鍛錬あるのみ!」


 「特にフキ、フラン、エレサ。お前らはまだまだ伸びしろ大だ!」

 指を刺して堂々と言う。


 「すぐに並んでやるよ!!」

 望むところであるフキだった。


 「またお願いね!!」

 フランは再び教えを受けれそうでかなり嬉しそうだった。


 「わ、私もですか?」

 エレサは困った表情だったが、星一ならいいかと飲み込んで少し笑う。


 その返答を聞いた星一はこれまでのことを振り返る。


 死ぬ覚悟で受けたこの任務。ここに来たからこそ、こうして巡り会えた。この仲間たちを俺たちの都合で協力してもらうのはやっぱ申し訳ないな。


 そんなことを思う奴らでもないか。そんなふうに思いながらも、これからも戦いは激化していくだろう。


 けどこいつらなら――いや、このメンバーならきっとやれると思う。


 とりあえずは、明日を全力で生きよう。


 様々な思いを胸にこれからを、未来のために繋げていくのだった。



            第一部

           魔法編 完


            NEXT

            第二部

            魔術編


ここまで読んでくださった皆様ありがとうございます!

初めての小説をここまで書けたことに自分でも驚いています。そして、この作品は第二部があります。現在執筆中ですので更新頻度は以前より落ちると思いますが、何卒よろしくお願いします!

ブックマークやコメントなども励みになりますので、よろしくお願いします!

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