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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 3章:研究所
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54話:望んだ風景

 メルベリアに帰ってきた一同はラスカをどうするか話し合いを始めようとしていた。


 あれから2日経ったがクラネとラスカは未だ意識が戻っていない。


 マヤセとラスカの戦いがもたらした被害によりあったはずの立派な建物たちは崩れ落ち、殺風景な住宅街に入り、円になって座る。


 「僕は正直ホームに連れていきたくないんだけどみんなはどう思ってる?」

 響は膝に肘を置いて両手を握り皆に問う。


 「俺もここに置いていくべきだと思います」

 星一はホームに連れて帰るとフランにバレる可能性を危惧してラスカを置いていくべきだと考えた。


 その他のメンバーもその意見に賛成なのか誰も意を唱えずにいた。

 

 満場一致でラスカをメルベリアに置いていくことに決まり、かつて星一とエレサが入った王城のあの部屋に向かう。


 荒れ果てたメルベリアを歩きながら周囲を見渡すもひとっこひとりいない。


 戦争が終わってから魔法師団が瓦礫の撤去など復興に勤しんでいたが、師団長3人を失ったこの国の統率力は失われたと言える。


 そんなこの国を見る一同は、なんとも言えない顔をし、落とし所が見つからない様子だった。


 王城に着き、ラスカを抱き抱える星一は皆に言う。


 「行ってくる」

 そう一言残し、埃臭い王城に入って階段を降りる。


 クラネをおんぶしているセナは心配そうに見つめていた。


 フキとエレサはついていくべきだと思っているが、一人にして欲しそうにしていた星一を尊重して王城の目の前で待つ。


 星一は薄暗い階段を降りながら呟く。


 「なぁ。どうして――こうなった?」

 眠るラスカに訴えかけるように小さく問いを投げかける。


 答えが返ってくるはずもなく、部屋にたどり着いた星一はラスカを寝かし、扉に鍵をして最後に顔を見て、その場を去る。

 

 「置いてきたよ」

 

 「今日は森の家で休みませんか?」

 疲れ切った星一を察したセナは提案する。


 「僕もそう思ってたところだよ。2日歩きっぱなしだったからね、ホームまでまた結構歩くし、一度ここで休もう」


 響が休息を推したことで一同は森の家で休むこととなる。


 家に着き、それぞれの部屋で時間を過ごす。


 だが、センリだけは部屋に戻らず、セナに声をかける。


 「ホームに戻ったら、コニスとサアサとついてきて欲しいところがある」


 いつも寡黙で冷静なセンリがより一層真剣な表情で言う。


 「………わかりました」

 

 用を済ませたセンリは二階へと上がっていく。


 部屋に戻った星一はベッドに仰向けになって何か考え事をしている。


 その姿を見ているフキは自然と声をかけていた。


 「どうしたんだよ。浮かない顔して」


 「いや、なんでもないよ」


 「そんなわけないだろ。明らかに、いつもより表情が暗い」

 今まで共に過ごしてきたフキには星一の様子がおかしいことをずっと気にしていた。


 「……今になって思うんだよ。もっとやりようがあったんじゃないかって」

 

 仲間集めのためにこの大陸に来て、今いるメンバーに感謝している。


 目を瞑ると想像してしまう。フキやエレサ、フランやピリィにセナ、響さんたち、みんなと並んでいる姿を。


 そんな仲間たちの中にマヤセとラスカがいる風景が頭から離れない。


 「確かに残念なことは多かったけど、星一はそういう時いつもこう言うじゃないか」


 「過ぎたことは仕方ないって」


 「お前は言葉通りに受け取りすぎだよ」

 星一はため息混じりに言う。


 星一にとってその言葉はいつまでも引きずるなってことだ。前に進むための隠れ蓑みたいなものであって、過ぎたことを軽くするようなことは決してしない。


 「でも、まぁちょっと元気出てきたよ」

 星一は少し微笑みながらフキに感謝する。


 「そっか」

 強張った表情で話していたフキも表情が軽くなり、少し笑う。


 そんな時部屋のドアがノックされた音が聞こえる。


 ドアが開き、響きが中へ入ってきた。


 「星一くん、ちょっといいかな」

 神妙な面持ちで響は言う。


 「どうしました?」

 響の表情を見た星一は身体中に緊張が走り、ゴクリと息を飲み、話を聞く姿勢をとる。


          ◇

 レーベとルインは暗い洞窟のような空間に辿り着く。地面に火を焚いていて辺りを照らしている。


 「よぉ、ミラ。あの王女はどうなってる?」

 レーベは洞窟の石に座っている赤みがかった短い髪に小柄な体格の女性に陽気に話しかける。


 「はぁー。負けたよ」


 「嘘だろ!?」

 レーベは大声を出して驚き、ルインも目を大きく開けて驚いている。


 「相手が悪い、ってわけじゃないけどあの白髪の子相当強いよ」

 三角座りをしながらミラは淡々と話す。


 「やっぱあの目――本物なんじゃないの?」

 珍しくルインが声を出す。


 「ってことはリーダーか統括者レベルってことか。吸い上げた魔力全部注ぎ込んだのにな〜」

 

 「それにトウキが死んだ」

 

 「へぇー。単独で動きすぎるからそうなるんだろ」

 レーベは頭の後ろで手を組みながら、興味なさそうに言う。


 「それと私たちがシカバネってこと見抜かれてたよ」


 「じゃあ目標を見つけたってことか!?」


 「うん。本当に生きてるとは思ってなかったけど、間違いない。でも、トウキが手も足も出ないくらい強いから下手に手を出すの控えた方が良さそう」

 長く喋っているがミラは表情一つ変わらない。


 「今後の方針はミラに任せる」

 レーベはミラに全てを一任している。


 「今の所は様子見かな。向こうの連中に動きがあれば動こう」


 「了解」

 レーベはその意見に納得し、ルインも頷く。

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