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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 3章:研究所
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46話:突撃

 日が昇り、木々達がおはようの挨拶をするかのように美しく風に揺られていた。


 そんな日が窓から差し込み、起きろとでも言っているかように輝いている。

 

 セナはその静かさの中で一人早くに起きていた。


 白布を絞り、冷たい水でマヤセの肌を拭う。


 「ごめんなさい。私は従ってしまった……」

 勇気を出して戦っていたら結果は違っていたかもしれない。そんな自分に失望している。


 「おはよう」

 星一がそう言いながら階段を降りてくる。それに続いて上で寝ていた皆んなも下ってきていた。


 腫れた目をしたフランが、マヤセの前に膝で立ち、手を握る。


 「……マヤ」

 魔力の暴走は今の所は収まっている。昨日と比べて精神面も回復しているが、まだまだ不安定な状況である。そんなフランを全員が見守っている。



 「ありがとう。この国を救ってくれて……」

 エレサとクラネからマヤセは国を救うために戦ったとだけ聞かされていた。誰と戦ったか、それだけは綺麗に伏せながら。


 「棺は用意してあります」

 セナはフランと同じ目線まで腰を落として話す。


 「ありがとうございます」

 フランは穏やかな表情で感謝し、マヤセを抱き抱えて棺に移す。


 「国を出て東に行くとナギが埋葬されてる場所があります」


 「そこで眠らせてあげましょう」

 フランがそう言う姿を見た星一はマヤセの姿と重ねる。


 「……フラン」


 一同は国外の東へと向かい、フキと星一で穴を掘る。


 ある程度掘り終わった二人は地上へ出て棺桶を運ぶ。


 そして、静かに、土を被せていく。


 土が被る音は重く、その場にいる全員の耳に深く刻まれた。


 それを見ているフランは今までのマヤセとの思い出を振り返り、目に涙を浮かべる。


 「これじゃ、ダメだ。こんなんじゃマヤを心配させちゃう」


 そう呟きながら右手で涙を拭う。


 埋葬し終え、全員がその場所を見つめてさまざまな感情を注ぐ。


 フランは右手を天に高く上げながら誓う。


 「見ててマヤ、これからの私を!!」


 そしてこの場を去り、一度森の家へ帰る。



 エルヘイムに向かうメンバーは各々準備を始め、軽食を摂るものもいればストレッチをするものもいた。


 「どこか行くんですか?」

 フランはそのことを知らず、純粋に質問をした。


 「エルヘイムの研究所を壊しに行ってくる」


 星一は隠しても意味がないと思い、本当のことを話す。


 「それなら、私も行きます」

 王女という立場であるフランは噂程度であるがエルヘイムの研究所について少し知っていた。


 「いや、フランはピリィと待ってて欲しい」


 「どうしてですか!?」

 酷く激昂した様子で、納得がいっていない様子であった。


 「まだ魔法に目覚めて日が浅いし、戦闘になる可能性がある。いきなり実戦するんじゃなくて段階を踏んで強くなっていって欲しい」


 それにまだ暴走する可能性も危惧して、フランを待機させることが良いと星一は思う。


 「分かり……ました」

 しばしば納得した様子で下を向いていた。


 「二人はエリア帝国に行って欲しい」

 星一とフランの話が終わったとこで響がお願いをする。


 「そこにコニスとサアサっていう人がいるはずだから合流して、俺たちのことを伝えて欲しい」


 ピリィなら竜化して飛べば一瞬で行ける距離であった。


 「わちはいいけど、フランは?」


 「構わないよ」


 「じゃあ、お願いするね」

 響はそう言って外へ出る。


 それに続いて、センリ、クラネ、そして星一達も歩き出す。

 

 ここからエルヘイムに行くには境の山脈を越える必要があり、走っていけばおそらく2〜3時間で到着する。

 

「それじゃあ、行ってくる」

 響達が歩き出す後ろを続いている星一は立ち止まって振り返り、二人に声をかけた。


 その掛け声に対してフランは声を出さず、両手を組んで胸の前に祈るようにしてただひたすら星一を見守っている。


 その横で両手を大きく上げながら手を振っているピリィは元気そうに送り出す。


 そうして森の奥へ消えていった星一達は、初めは歩いていたが、ギアを上げる。


 「フキとエレサを先頭にそろそろ走ろうか」

 エルヘイムまでの案内を兼ねてフキとエレサを先頭にし、一同の足は躍動する。


 山脈に入ると足場が悪くなっていく。以前この地で籠っていたフキ自身にあの時の恐怖感は存在せず、一同の戦闘に立つに相応しいと言えるほど成長していた。


 そして数時間走り続け、エルヘイムが見えてくる。


 崖側に立ちながら星一達はエルヘイムを見下ろす。


 「ここが……」

 星一はそんな言葉を漏らしながら呟き、想像していた風景が目の前にはなかった。


 活気はなく、澱んだ空気、星一のエルヘイムに対するイメージはそのようにネガティブなものだった。


 だが、実際に見てみるとまるで違った。多くの人が出歩いている街並みに国のシンボルのように中心に聳え立つ塔が一際存在感を放っている。


 そしてその奥に見えるのが、王族が住んでいる馬鹿でかい王城である。


 「あの塔の地下に研究所があります」


 エレサのその言葉は皆を驚かせた。何故なら一番目立つ場所にそんな所があるからである。


 塔の地下から研究所に入ることができるがそれは裏口であり、本当の入り口は王城の地下から入ることができる。


 今回は塔から侵入して研究所を破壊し、塔から脱出するのがベストであるが、そう簡単にはいかないだろう。


 本来あの塔はエレメントマスターを祀られた場所だ。


 この国は、100年前エリア帝国が滅亡した際にその国民がその地を離れて作った国がエルヘイムである。


 「それじゃあ、国に入りましょう」

 そう言ってエレサは歩き出し、次々に皆んなはついていく。


 はたして、研究所の破壊は上手くいくのだろうか。

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