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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 3章:研究所
44/58

44話:研究所

 凍てついたこの空間を焼き払うように、フランの身体から炎が広がっていく。


 「おい! フラン!」


 無自覚に周囲に広がる炎をコントロールできずに、フキ達は焼き払われそうになる。


 そんな時、メルベリアに星一達が到着していた。


 「フキ! ……なんだこれ!?」

 フキを呼びながら走って側まで行くが、炎の海を見て困惑する。


 その中心にある人影を見てこう呟く。


 「フラン……か?」


 「あぁ! そうなんだ。魔力が暴走しちまってる」


 「きっ……」

 なんとか救う術を考えるが案は出なかった。


 「僕に任せて」

 そんな時響が名乗り出る。


 「お前! 誰だよ!」

 本当にやれるのか?と言うことを言いたかったが、感情が昂り、高圧的になってしまった。


 「フキ……任せてみよう」

 エレサは汗を浮かべながらフキの背中の服を掴んで言う。


 星一も若干の不安が顔に出るが、クラネとセンリが両隣に立ち、星一の顔を見て頷く。


 こうして響は炎の渦に飲まれるように歩いていくが、火傷どころか暑がっている様子はなかった。


 そしてフランの肩にポンと手を置くと、徐々に炎が小さくなっていく。そして、フランの身体にライターの火サイズの炎が浮かび上がる程度に収まる。


 そうして、フランは気を失う。


 「どうやったんだ!?」


 フキは動揺しながら驚き、星一の隣に行って、目配せする。


 「あれが、響さんの魔術……なんだろうな」


 星一がそう言った時、フランの周りの炎が消え、マヤセが倒れているのが見えた。


 「フキ。一体何があったんだ」


 「……」


 フキは言いにくそうに黙り込む。


 星一達はマヤセの側まで行き、顔を見る。


 「笑ってる……」


 星一は静かに呟く。


 「この子って、ナギの……」


 クラネはそう言ってセンリの方を見る。


 「ああ。間違いない……そっくりだ」


 「フキくんだったかな? ここで何があったか教えて欲しい」

 響は冷静に今成すべきことを進める。


 「星一くん……?」


 響は拳を握りしめて震える星一に声をかける。

 星一の表情は酷く苦しそうであり、数ヶ月の付き合いだとは思えないほどにショックを受けている。


 だが、涙を流すことはなかった。


 「ごめんなさい。話を始めてくれフキ。」


 こうして、フキが見た今までの出来事を話す。


 ****************


「ラスカが……」


 誰もが信じられなかった。


 善人の代表とも言えるラスカがメルベリアを半壊させたことを。


 「尋常じゃない強さだった……」

 フキは恐ろしそうに語る。


 「多分星一でも……」


 「ああ。勝てないだろうな」


 「けどなんで急にそんなになっちまったんだ?」


 ここにいる全員が考える疑問だった。


 それを聞いたエレサが、恐る恐る手を挙げる。


 「多分エルヘイムに何かされたんだと思います」


 星一はその言葉を聞いてラスカが行方不明になっていたことを思い出す。


 「確かに……エルヘイムの方へ歩いていった」

 去り際のラスカを見ていたフキはその推測が間違っていないと確信する。


 「エルヘイムは奇妙な実験をしているって噂を聞いたことがあるけど、事実だったのか」


 響はそう言いながら、肘を立てて手を顎につけながら考える。


 「エルヘイムの王城の地下には巨大な研究所があって、実験台にされてる人は今でもたくさんいると思う」

 エレサは嫌そうに話す。


 「知らなかった。地下にそんな場所が」

 王城で暮らしているフキですら知らないことだった。

 

 「よし! その研究所。壊しに行こう」


 響の提案は皆んなを驚愕させる。


 「そんな研究所。無い方が良いって皆んなも思うだろ?」


 否定できなかった。ここにいる全員がそんな研究所は無い方が良いと思っていたから。


 「なら、私が案内します」

 エレサは行く気満々の表情で覚悟は決まっていた。


 「いいのかエレサ!? お前にとっても思い出したく無い場所だろ?」

 星一は心配して確認する。


 「ありがとう。けどね、そこにいた私だからこそ、あんな所壊すべきなんだって思うの」

 エレサは生きる為に自ら進もうとしている。


 そんなエレサの覚悟を否定する方が無粋というものである。星一はそれを受け入れる。


 「俺も行きます」

 そして、星一もその提案に乗る。


 「他のみんなはどうする?」

 響は全員に視線を送る。


 「お前らは行くの確定してるみたいな目で見ないでくれ」


 センリは呆れた声でそう言う。

 クラネもすごく頷く。


 「やっぱ来てくれるじゃん」

 響は嬉しそうに言いながら、フキを見る。


 「フキくんはどうする?」


 「俺も……行きます。親父と話したいこともあるので」

 フキは覚悟の決まった表情で言う。


 「仮面のきみとツノの生えた君は?」


 「ツノ?」

 声に出しながらツノが生えてるピリィを見て愕然とする。


 「わちは竜だからな。ツノもある」

 何当たり前のこと聞いたんだよみたいな顔で言う。


 「驚いたな...まさか竜の友達がいるとは」

 

 響はサアサに出会った頃を思い出す。


 エレサは声も出ずに驚いている。


 センリとクラネは特に驚いた様子もなかった。


 「気を取り直して、二人はどうする?」


 「私たちも行きます。それで良いよね?」


 セナは一応ピリィにも確認する。


 「いや、ピリィはフランと一緒に留守番してて欲しい」


 星一は横に入ってそう言う。


 「多分フランはまだ魔法が発現してまだ不安定だと思うからピリィがそばにいてやって欲しい」


 「……わかったよぉ」


 割と行く気だったピリィは少ししょんぼりする。


 「行くメンバーが決まったのは良いが、ラスカはどうするんだ?」


 センリは一番肝心なことを言う。


 「研究所潰すってことは、そのラスカと必ず戦うことになる」


 その言葉にクラネと響以外は下を向く。


 研究所の破壊は容易と考えていたが、ラスカとの戦闘は避けられない。


 そもそもラスカを制圧することは可能なのか?それがはっきりしないと全滅の可能性すらあった。


 「ラスカはクラネに任せたいけどいい?」

 響はクラネを見つめて頼む。


 「はぁー。まぁそうなるだろうとは思ってたよ」


 クラネはため息をついて言う。


 「この中でおそらく一番勝ち目があるのがクラネだ。ラスカはクラネに任せて、そのうちに研究所を破壊しよう」


 響は方針を固めに入る。


 「響さんの魔術でもラスカは厳しいのですか?」

 エレサは響の魔術を予想していた。その魔術なら勝てるのでは無いかと。


 「僕の魔術は触れた対象の魔力を操作することができる。話を聞いた限り、触れる前に殺されるよ」

 

 「……そうですか。でも一人は危険なのでは?」


 いくらクラネに勝機があったとしても、エレサの不安は高まる。


 「私も遠距離から攻撃できるサポーターが欲しい」


 流石にタイマンでやって勝てる相手では無い。クラネ自身もそう思った。


 「遠距離なら、フキかエレサだけど……」


 エレサは案内役をするため、消去法でフキしかいない。


 「いけるか? フキ」


 星一はフキの肩をポンと持ちながら聞く。


 「うん。やるよ」

 フキの目には熱い闘志がみなぎっていた。


 「よし! 大体決まったな」

 パンと手を叩き、響は皆んなを見渡す。


 「ラスカだけが障害とは限らない。おそらくエルヘイムに助言したと言う魔術師もいるだろう」


 「けど、やることは決まった。今日はゆっくり休んで明日出発しよう!!」


 その言葉を聞いた皆々があらゆる思いを持ちながら覚悟を決めるのだった。

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