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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 3章:研究所
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38話:轟く悪寒

 「僕は春山響。君の先輩だよ」


 その名前を聞いた星一は時が止まったかのように静止する。


「星一?」


 ピクリとも動かない星一をエレサは訝しげに感じ、覗き込むように顔を眺めた。


「あれ? もしかして俺のこと知ってた?」

 響はニコリと笑いながら言う。


 星一はその名前を知っている。


 10年前、自分と同じ任務でこの大陸に行ったとされる魔術師の名前だ。


 星一は考えを整理し話し出す。


「知ってます。10年前にここにきた魔術師ですよね?」


「そうそう。10年後に君が来たってことは人手不足の問題はまだ解決していないっぽいね」

 流暢に響は返す。


「苗字が西早ってことは、亜月あつきさんと陽奈子ひなこさんの息子さんかな?」


「親父達を知ってるんですか?」

 星一は冷静に返すが、内心動揺が隠せなかった。


「何度か会ったことがあるよ。亜月さんはめちゃくちゃ強かったしね。君も相当な実力者なことは戦争を見てたから、合点がいったよ」


「星一君は、どっちの所属なんだ?」


「西です」

 今までの会話で響に対して警戒を解き、この人は間違いなく味方だと感じた星一はホッとして色々話す。


「俺は西の人手が足りなくてそっちに移動しました」


「じゃあ、大輝だいきのことも知ってるのか?」


「もちろん。あなたのことは大輝さんから何度か聞いたことがあります」


「そっか。あいつもまだ生きていて何よりだよ」


 響は座っている椅子により一層腰掛け上を向いて何か思い出しているようにフッと微笑む。


「久しぶりに京都を見てみたいよ......」

 響は息を吐くように呟く。


「響さんは帰ってこなかったと聞いていたのでもう死んでいることになってます」


「どうして帰らなかったんですか?」

 星一はそれが一番気になっていた。


「あ〜それはね、帰らなかったんじゃないんだ。簡単に言うと帰れなくなった。だね」

 少し恥ずかしげに響は答える。


「帰れなくなった?」

 星一は頭を傾げて言う。


「ここに来る時に、回数制限電話は持たされたかい?」


「それなら持たされました」


 回数制限電話はフキに一度説明したことがあるが、今は森の家に置いてきている。


「数字が0になると強制的に拠点に転送されるようになっている。それが唯一の帰り方だったんだけど......」


「壊れてねぇ......帰れなくなった!」

 もう過ぎたことだから、悩んでいる様子はなく、ヘラヘラした顔で言う。


「壊れた.......?」

 星一はもっと深刻なことがあって、帰れなくなったと考えていたが、意外と軽く答えられ、ポカンとしている。


「壊れたというよりは壊されただね」


「壊された?」


「今僕たちはこのエリア帝国の跡地で5人で暮らしてる」


「クラネ。センリ達を呼んできてほしい」


 クラネはまた使いっ走りにされ、嫌そうな顔をして部屋を出ていく。


「三人が来てから続きを話そう」

 響にそう言われ、星一とエレサは部屋の真ん中にある二人ほど座れる椅子に腰掛ける。


 そうして少し待ち、部屋のドアが開く。


 クラネの後ろには二人の男性と女性が居た。


「三人って言いませんでした?」

 星一は言い間違えたのかと思い、確認する。


 エレサもそう思っており、星一の言葉に頷く。


「ここにいるよ!」


 声が聞こえるが、クラネ達は口を開いた様子はなかった。


 すると星一のほっぺたがつねられたかのように痛みが走る。


「痛! って......えーー!!!」


 星一とエレサは目の前の存在に目を疑う。


 そこには、人差し指くらいの大きさで、手のひらに乗せると丁度いい感じのサイズ感であり、羽の生えた女の子が浮かんでいた。


「驚いたでしょ?」

 響はニヤニヤしながら言う。


「なんですか!?これ?」


「これとは失礼な!」

 小さな少女は大の字に手を広げて言う。


「私はサアサ。私が君と違うのは、私が妖精族だからだよ」


「妖精族!?」

 星一はファンタジーすぎてついていけなかった。


 エレサも口元を両手で覆い驚いている。


「この二人はセンリとコニス」


 サアサはクラネの後ろにいた二人を紹介する。


「センリだ。よろしく」

 褐色の肌に薄紫色の髪をしている男性が名乗る。


「コニスです」

 薄い黄色の髪をした、少女も続いて名乗る。


「センリとコニスは兄弟なんだよ!」

 フレンドリーなサアサは色々話す。


「そうなのか......」

 グイグイくるサアサに対して、星一はまだ接し方が定まっていなかった。


「俺は西村星一。こっちはエレサだ。よろしく」


「よろぉ、しく!」


 エレサは一気に多くの人と話したことがなかったため、緊張して声が裏返る。


 エレサの声を聞いて皆がクスッと笑う。


 サアサがエレサの手に乗りニコッと表情を作る。


「自己紹介も終わったし、さっきの続きだけど、僕が帰れなくなったのはセンリと戦った時に回数制限電話を壊されたからなんだ」

 響は話を再開する。


「いや! それは何回も誤っただろ!?」


 センリは本当に悪いと思っていて、その話はあまりしたくなかった。


「なんで戦ってたんですか?」


「ここは元々クラネ、センリ、コニス、サアサの四人で住んでたんだけど、僕がここを調べに来た時に敵だと思われてね、それで戦闘になった」


 その戦闘の際、響はドジを踏み電話が壊れてしまったと話す。


「なるほど......」


「話せばいい奴だったから、今はここを拠点に暮らしている」


 センリは申し訳なさそうに話す。


 星一はセンリからとてつもない魔力を秘めてると感じる。


「まあ、僕の現状はこんな感じかな」

 たくさん喋り、響は疲れた表情で椅子に深くもたれる。


「クラネ達は魔術師《俺たち》に協力してくれるんですか?」


「それは、協力してくれるよね?」

 響はクラネを凝視して言う。


  「......別にいいけど」


 「だってさ!」


 センリ達も特にすることがないため協力してくれるそうだ。


 星一は響と出会い、協力者が集まってきていることを嬉しく思い。拳を作り小さくガッツポーズをする。


「他に質問とかはない?」

 響がそう言うと、エレサが手を挙げる。


「響さんはどんな魔術を使うのですか?」


 星一との戦闘からエレサは魔術について少し興味を持っていたため、響の魔術も気になっていた。


「.....」


「......」


「...」


「.....」


「あれ? どうしました皆さん?」


 エレサはそう言って皆んなの顔を見渡す。


「エレサ......ちょっと待って......」

 エレサの左手に座っているサアサは酷く怯えた顔で言う。


 星一やクラネ、響の表情は見たことのない、焦りを感じさせ、汗を浮かべながら顔が曇っている。


「なんだ......これ.......」

 響は汗だくになりながら呟く。


「こんなことって........」

 星一も信じられない表情で呟く。


「メルベリアの方角からか?」

 センリは遠目で窓を見る。


「このレベルは......」

 コニスも信じたくない表情をしている。


「これは、やばそうですね」

 クラネもかなり警戒している。


 エレサ以外の六人は、メルベリアの方角からとてつもない魔力を感じて動揺していた。


「エレサは魔力を感じ取れないのか?」

 星一は膝に肘をついて汗まみれの顔でエレサを見つめる。


「え?」


「いや、これは感じない方がラッキーだよ」


「どうする?」

 響は皆に意見を聞く。


「危険だが、状況を確認した方がいいと思う」


 センリはそう言うと、他のみんなもそれな賛同する。


「わかった。コニスとサアサはここで待っててくれ」

 響は瞬時に考えを出して言う。


「エレサはどうする?」


「私も行きます」


 響は頷いて立ち上がり、部屋を出る。


 それに続いてみんなを部屋を出て準備をする。


「走れば半日で到着すると思う」

 クラネは皆んなに言う。


「半日かーもう少し早く着きたいが仕方ない」


 響はそう言って、皆の先頭に立つ。


「じゃあ留守番よろしく」

 コニスとサアサにそう言って前を向く。


 そして一同は走り出す。


 一体メルベリアで何が起こったのか、今の星一達には考えもつかなかったのだった。

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