34話: そして
あの戦争から、2日が経った。フキは寮には戻らず、星一達と森の家に帰り、休息につく。
魔法師団は戦争の後処理で手一杯であり、多くの建物や壊れてしまった民間人の家もある。
それにより、メルベリアの民は未だ、地下シェルターでの生活を継続しているが、それもいつまで続くかわからない状況だ。
そして一番問題となっていることがある。それは、ラスカが行方不明になっていることである。そのことも含めて、魔法師団は全力で国のために働いている。
星一が部屋から降りてくると、ソファに座っているフキの姿があった。
ピリィはフキが座っている向かいのソファで寝ていた。
「どうしたよ? そんな浮かない顔して」
星一はいつも通り声をかける。
「いや、その......」
フキはもごもごした反応を見せる。
「はぁ〜じゃあそろそろ聞いてやるよ。お前、王子様だったんだな」
「......うん」
フキは絶妙にきもい返事をする。
今まで隠していたことを急に明かしたが、そのことを突っ込まれないのに耐えられず、聞いて欲しそうなそぶりをする。
だが、隠し事をしていると言う罪悪感も混在し、フキの心境はめちゃくちゃだった。
星一はソファで寝ているピリィの隣に座り、フキと話す。
「隠してて......すまない」
フキは顔を少し下に向けながら言う。
「セナの時にも言ったけど、人は隠したいことの一つや二つあると思ってる」
星一にとって隠し事とかはどうでもよい。両手を腰に当ててため息混じりに吐き捨てた。
「......ああ」
星一はこうゆう奴だった事を再び思い、学園での生活を思い出す。
「でもまさか王子だったとはな〜フキ様って呼ぶべき?」
ニヤつきながら星一は言う。
「っ!? やめてくれ!」
マジな表情でフキは断る。
「冗談だぁよ〜」
「心臓に悪い......」
フキは深くため息をこぼす。
「腹減ったなー。セナなんか食べるもんある?」
「パンならありますよ」
フキの隣に座り、本を読んでいたセナがそう答える。
「いいねー」
「持ってきますよ」
「おー、ありがとー」
まだ少し眠そうにしながら星一は礼を言う。
セナはキッチンの方からパンを木の器に用意して、持ってくる。
甘いパン特有のいい匂いがし、星一の食欲がさらに湧く。
一言で言うとクロワッサンのようなパンが3つ入っていた。
「いただきます」
手に取りゆっくりと口に運び、一口、また一口と噛みしめて食べる。
その姿を見ているフキも、食べたそうになるほど美味しそうに見えた。
「美味しいな」
星一は一言呟く。
「それは何よりです」
パンを出したセナも嬉しそうな声で返す。
そして星一の食べるペースは早まり、ペロっと完食した。
「ご馳走様!」
しっかり手を合わせて挨拶をする。
「ふぅ〜」
そう言いながら深くソファに腰掛けるが、すぐに立ち上がり、出かける支度をする。
「どこかいくのか?」
フキは出かけそうな星一を見て質問する。
「ああ、ちょっとそこまで」
「そこまでってどこまでだよ」
「王城」
真顔で星一は返す。
「王城!?なんで王城なんかに?」
フキは驚いて立ち上がり、さらに質問する。
「王様と約束してたんだよ」
星一はそう言いながら経緯を話す。
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星一が戦争に参戦する直前のことだった。
ピリィに頼んで星一はテレパシーで王と繋げてもらっていた。
「聞こえるか?王様」
「な、なんだ!」
急に脳内に言葉が走り、その場でビクッと体が揺れる。
「今ある力を使ってあんたの頭に直接話しかけている」
「何者だ!?」
「俺は魔術師だ」
「なんだと!? 一体なんのようだ!?」
「俺と取引しないか?」
「......何が目的だ?」
王様は警戒するが、話を続ける。
「俺と直接話をする場を設けてくれないか?」
「......もしその場を設けたら君はどうするのかね?」
「この戦争でメルベリアを勝利に導きましょう」
「なっ!?」
ラスカが敗れそうな絶望的な状況での交渉だった。
メルベリア王国のことを考えると断る余地はなかった。たとえ信じられない話でも、何かに縋りたくなるほど王様には余裕がなかったのである。
「本当に勝てるのかね?」
「必ず勝って見せます!」
「わかった。戦争が終わって数日後に王城を尋ねなさい」
「感謝します」
◇
「ってゆう感じになったから王城行ってくる」
星一は説明し終える。
「なんか、抜け目ないよな。星一って」
フキは改めて星一の計画性を恐ろしく思う。
「気をつけてくださいね。何かあったらすぐに逃げるんですよ」
セナは星一を心配する。
「話をしにいくだけだし、心配することないよ」
表情はわからないが、セナは心配そうに見つめる。
「なんかあったらすぐ逃げるよ」
セナの圧に押され、星一は心を入れ替え用心して行くことにする。
「はい」
「じゃあ行ってくるよ」
ドアに手をかけて、振り返り様にみんなに声をかける。
「気をつけてな」
フキはそう声をかけ、セナは両手を繋ぎ祈るように星一を見つめていた。
そして星一は用心する気持ちを忘れず王城へと歩き出す。




