表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 3章:研究所
34/61

34話: そして

 あの戦争から、2日が経った。フキは寮には戻らず、星一達と森の家に帰り、休息につく。


 魔法師団は戦争の後処理で手一杯であり、多くの建物や壊れてしまった民間人の家もある。


 それにより、メルベリアの民は未だ、地下シェルターでの生活を継続しているが、それもいつまで続くかわからない状況だ。


 そして一番問題となっていることがある。それは、ラスカが行方不明になっていることである。そのことも含めて、魔法師団は全力で国のために働いている。


 星一が部屋から降りてくると、ソファに座っているフキの姿があった。


 ピリィはフキが座っている向かいのソファで寝ていた。


 「どうしたよ? そんな浮かない顔して」

 星一はいつも通り声をかける。


 「いや、その......」

 フキはもごもごした反応を見せる。


 「はぁ〜じゃあそろそろ聞いてやるよ。お前、王子様だったんだな」


 「......うん」

 フキは絶妙にきもい返事をする。


 今まで隠していたことを急に明かしたが、そのことを突っ込まれないのに耐えられず、聞いて欲しそうなそぶりをする。


 だが、隠し事をしていると言う罪悪感も混在し、フキの心境はめちゃくちゃだった。


 星一はソファで寝ているピリィの隣に座り、フキと話す。


 「隠してて......すまない」

 フキは顔を少し下に向けながら言う。


 「セナの時にも言ったけど、人は隠したいことの一つや二つあると思ってる」


 星一にとって隠し事とかはどうでもよい。両手を腰に当ててため息混じりに吐き捨てた。


 「......ああ」

 星一はこうゆう奴だった事を再び思い、学園での生活を思い出す。


 「でもまさか王子だったとはな〜フキ様って呼ぶべき?」

 ニヤつきながら星一は言う。


 「っ!? やめてくれ!」

 マジな表情でフキは断る。


 「冗談だぁよ〜」


 「心臓に悪い......」

 フキは深くため息をこぼす。


 「腹減ったなー。セナなんか食べるもんある?」


 「パンならありますよ」


 フキの隣に座り、本を読んでいたセナがそう答える。


 「いいねー」


 「持ってきますよ」

 

 「おー、ありがとー」

 まだ少し眠そうにしながら星一は礼を言う。


 セナはキッチンの方からパンを木の器に用意して、持ってくる。


 甘いパン特有のいい匂いがし、星一の食欲がさらに湧く。


 一言で言うとクロワッサンのようなパンが3つ入っていた。


 「いただきます」


 手に取りゆっくりと口に運び、一口、また一口と噛みしめて食べる。


 その姿を見ているフキも、食べたそうになるほど美味しそうに見えた。


 「美味しいな」

 星一は一言呟く。


 「それは何よりです」

 パンを出したセナも嬉しそうな声で返す。


 そして星一の食べるペースは早まり、ペロっと完食した。


 「ご馳走様!」

 しっかり手を合わせて挨拶をする。

 

 「ふぅ〜」

 そう言いながら深くソファに腰掛けるが、すぐに立ち上がり、出かける支度をする。


 「どこかいくのか?」

 フキは出かけそうな星一を見て質問する。


 「ああ、ちょっとそこまで」


 「そこまでってどこまでだよ」


 「王城」

 真顔で星一は返す。


 「王城!?なんで王城なんかに?」

 フキは驚いて立ち上がり、さらに質問する。


 「王様と約束してたんだよ」

 星一はそう言いながら経緯を話す。


******************

 

 星一が戦争に参戦する直前のことだった。


 ピリィに頼んで星一はテレパシーで王と繋げてもらっていた。


 「聞こえるか?王様」


 「な、なんだ!」


 急に脳内に言葉が走り、その場でビクッと体が揺れる。


 「今ある力を使ってあんたの頭に直接話しかけている」


 「何者だ!?」


 「俺は魔術師だ」


 「なんだと!? 一体なんのようだ!?」


 「俺と取引しないか?」


 「......何が目的だ?」

 王様は警戒するが、話を続ける。


 「俺と直接話をする場を設けてくれないか?」


 「......もしその場を設けたら君はどうするのかね?」


 「この戦争でメルベリアを勝利に導きましょう」


 「なっ!?」


 ラスカが敗れそうな絶望的な状況での交渉だった。


 メルベリア王国のことを考えると断る余地はなかった。たとえ信じられない話でも、何かに縋りたくなるほど王様には余裕がなかったのである。

 

 「本当に勝てるのかね?」


 「必ず勝って見せます!」


 「わかった。戦争が終わって数日後に王城を尋ねなさい」


 「感謝します」


            ◇


 「ってゆう感じになったから王城行ってくる」

 星一は説明し終える。


 「なんか、抜け目ないよな。星一って」

 フキは改めて星一の計画性を恐ろしく思う。


 「気をつけてくださいね。何かあったらすぐに逃げるんですよ」

 セナは星一を心配する。


 「話をしにいくだけだし、心配することないよ」


 表情はわからないが、セナは心配そうに見つめる。


 「なんかあったらすぐ逃げるよ」

 セナの圧に押され、星一は心を入れ替え用心して行くことにする。


 「はい」


 「じゃあ行ってくるよ」

 ドアに手をかけて、振り返り様にみんなに声をかける。


 「気をつけてな」


 フキはそう声をかけ、セナは両手を繋ぎ祈るように星一を見つめていた。


 そして星一は用心する気持ちを忘れず王城へと歩き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ