33話:終結
綺麗な夜空がメルベリアを照らしている。
「し、んど〜」
星一は決着がつき、一気に脱力しながら息を吐くように言う。
「星一ぃーー!」
ピリィは倒れる星一に走りながら駆け寄ってくる。
「ちょっとの間戦えなくなるから、俺の護衛よろしくー」
今にも寝落ちしそうな、力の入っていない声でピリィに頼む。
「わかった!」
ピリィは瞬時に理解する。星一から僅かにしか魔力を感じないことに。
そして歩きながらマヤセも来てくれる。
「お疲れ様です」
膝をついて目線を合わせながら、言う。
「お前はまだまだ元気そうだな」
「そりゃ、私も結構やりますからね!」
敵を倒して浮かれているのか、マヤセは冗談っぽく話す。
しかしここで三人は異変に気づく。
魔獣の数が減るどころが、勢いが止まらずまだまだ押し寄せてきていることに。
「どういうことだ......」
敵は倒したはずなのに、魔獣が止まらないことを不審に星一は思う。
「何か機械を使っているんじゃないですか?」
マヤセは、魔獣のコントロールをしている機会があると予想する。
「機械?」
星一とピリィは首を傾げる。
「飛行船から変な音が出た直後に魔獣が押し寄せてきたから、何か機械のようなもので操ってるんじゃないですか?」
「可能性はあるな......」
飛行船から、電波のようなものを発信しているのか、何かコントローラーのようなものがあるのか、謎が深まる。
「そういえば、わちが戦ってたやつが銀の棒みたいなの持ってたよ」
ピリィは戦闘の中でルオラがコントローラーのようなものを持っていたことを思い出す。
「絶対それやん」
星一はそれがコントローラーだと思う。
「じゃあ、そいつのとこに行って止めてもらおう」
「そうですね!」
「どこにぶっ飛ばしたっけ......」
ピリィは記憶の中を歩く。
「とにかく探しに行くぞ」
魔獣たちを掻い潜りながら、星一はピリィとマヤセの後に続く。
すると瓦礫に溺れそうになっている、ルオラを発見する。
「いた!」
ピリィはすぐさま駆け寄り、寝ているルオラを揺らしながら起こそうとする。
「俺は......」
意識がはっきりとしていないが目を覚ます。
「はっ! お前らは!」
意識がはっきりとしたルオラは顔に汗を浮かべながら警戒する。
「魔獣を止めてください!」
マヤセは風の剣を作り出しルオラの首元に突きつける。
「くっ! それは...できない」
ルオラは目を逸らしながら言う。
「何故です?」
「この戦での指揮権は第二王子のヒュダ様だ」
ルオラは自分の意思では魔獣を止めることはできず、ヒュダの命令がなければ止められないことを伝える。
「じゃあ、そのヒュダが言えば止めてくれるんだな?」
「その......通りだ.......」
その言葉を聞いた星一はため息をこぼす。
「ヒュダってどいつのことだ?」
「多分...私が倒した人です......」
マヤセは、顔を曇らせて言いながらすぐに意識を取り戻すか不安そうにしている。
するとーー
「俺はそんな命令はしない!」
片足を引き摺りながら、口元に血を浮かべているヒュダが、こちらに歩いてくる。
「あ、あいつです!星一さん!」
マヤセはすぐに立ってきたヒュダに対して少しドキッとして、星一の右肩を揺らしながら知らせる。
そして、星一は問うた。
「どうして?」
「俺たちは、まだ何も成し遂げていない!」
エレサを倒され、他のメンバーも戦う気力は残っていない。
そんな中魔術師を捉えると言う目的すら達成できない今、ヒュダはせめて、魔獣たちがメルベリアを蹂躙してくれることを祈っている。
何もできなかった。それがヒュダの選択肢を狭める要因となる。
星一は無言で立ち尽くす。
「聞いただろ? 魔獣を止めることはできない」
王族の命令を忠実に守るルオラの意思は絶対に曲げられないものだった。
「じゃあどうするんだよ!?」
ピリィは焦りながら言う。
星一もマヤセも下を向く。
「今こうしている間にも、魔獣と戦っている人はいるんです!」
マヤセは命の話をする。
「あなたは自国の方が死んでいく姿を見たいですか!?」
ルオラはその言葉に動揺を見せる。
「しかし、俺は......」
「そんな奴らに耳を貸すな! 俺たちはエルヘイムの人間だ! この国の奴らがどうなったって——」
ヒュダがそう言いかけた瞬間、何者かに頭を押し付けられ気絶する。
「魔獣を止めてくれ......ルオラ」
ヒュダを攻撃した人が静かな声でルオラに話す。
「まさか.......そんな......」
ルオラはその人を見て驚愕している。
「生きておられたのですね...フキ様!!」
ルオラは涙を浮かべながら叫ぶ。
「様ぁ!?」
星一たちも驚く。
「この戦争の勝敗は決した。大人しく退いてくれないか?」
フキは冷静な声で言う。
「もちろんです!」
その直後侵入してくる魔獣たちは止まり、国内にいる魔獣を倒すだけとなる。
そしてフキは建物の上へ移動し、話し始める。
「俺の名はフキ・エルヘイム。エルヘイム王国の第一王子だ! ここに戦争終結を宣言する!」
フキは映像として放映させるように、高らかに告げた。急すぎる結末である。そして、
「すまない、俺がもっと早く動いていれば……」
「いいや、フキはちゃんと終わらせてくれた。それに、このタイミングじゃないと無理だったと思うぜ」
今まで隠していた自分の正体、それに対して突っ込まれると思いながら拳を震わせていたが、星一は触れずに、肩をポンと叩いて感謝した。
そして、ルオラはフキの元まで行く。
「フキ様は!?」
「俺は帰らない。他にもやることがある」
「承知しました」
そう言ってルオラたちエルヘイムは飛行船で撤退した。
飛行船が飛び立った直後、迷宮遠征に出掛けていた魔法師団が帰還する。
魔法師団の帰還により残りの魔獣の掃討はすぐに終わった。
これにより、メルベリアとエルヘイムの戦争は幕を閉じるが、これは序章に過ぎないのだと後にフキたちは感じることとなる。




