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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 2章:エルヘイム
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31話:燃え盛る魔力

 戦争が始まってからかなりの時間が経過した。既に夕日は沈み、戦場が暗闇に包まれる。


 戦争の終わりが近いと告げるような夜空が戦場を見晴らす。魔獣たちが、学園に押し寄せる中フキは、それを全力で阻止する。


 マヤセが前線に行ったことで負担は大きくなったが、涼しい顔で対処し、自分の役割をこなしていた。


 「星一......」

 海岸まで吹っ飛ばされた星一を気にする。


 前線に行こうか何度も迷うが、なかなか一歩が踏み出せない。


 覚悟が決まらなかったのだ。


 もうどうでもいいはず。そう自分に言い聞かせても前に進めない。まるで誰かに足をつかまれているように。


 そしてフキは、遠目から前戦を眺める。


 エレサの相手がいなくなり、メルべリアは再びピンチに陥る。


 「なんなんだ! お前は!」


 ルオラは木を複数出現させ、絡めとるように攻撃をするが、ピリィはアトラクション感覚で遊んでいる。


 すると前方から青い光が横切って見えた。


 「星一!?」


 ピリィは建物の上に飛び乗り、海を見る。


 「やられちゃった?」

 顔を汗を浮かべながらピリィは海岸で倒れる星一の姿を見つける。


 ピリィはエレサの方を見つめるが、その瞬間背筋がゾッとした。


 「パパに匹敵するんじゃないか。あれは...」


 ピリィは自分でも勝てるかどうかわからないが、星一が負けた今自分が倒す覚悟をする。

 

 「もうちょい遊びたいけど......そうはいかなくなった」


 ピリィは目つきを変え、ルオラの木を掻い潜りながら距離を詰める。


 そして木を踏み込んで飛び、ルオラの腹部目掛けて拳を放つ。


 ルオラは拳を喰らったことすら分からず、一瞬で意識を失い、吹っ飛んでいく。


 ピリィはルオラが起き上がらないことを確認して、エレサが動き出す前に正面に立つ。


 ピリィはエレサと対峙した瞬間違和感を感じる。


 「一人の臭いじゃない......」

 直感でそう思った。


 「次の相手は君?」

 

 「いいや、わちはただの繋ぎだよ」


 「お前は必ず星一が倒すからね」

 ピリィは被っている帽子を握りながら言う。


 「星一? さっきの彼のこと? それは無理じゃないかな。俺のスピードについてこれていなかったからね」


 「お前は確かに強いけど、わちは知ってる。魔術師の本当の本気をね」


 その言葉を聞いたエレサは顔つきを変える。


 ピリィ自身もエレサのスピードに対抗する術はない。


 だが、ピリィが優っている部分もあった。


 エレサは青い雷を纏い、瞬く間にピリィの顔面を拳が捉えている。


 「うっ」

 ピリィは拳をもらい、飛ばされるがなんとか足で減速し、体勢を整える。


 「今いつ殴られた!? 見えるとかの次元じゃない」


 頬を抑えながらエレサのスピードに驚く。


 「手応えを感じなかった」

 ピリィを殴ったが、まるで手応えを感じず、不思議に思う。


 ピリィの様子を見てもダメージをさほど感じているようには見えなかった。


 ピリィの竜の鱗は打撃での攻撃は効果があまりないのである。しかし、斬撃には弱く、傷口を叩かれるとダメージを負う。

 

 だが、決定打がない。ピリィですらエレサのスピードにはついていけず、攻撃を当てることはできない。

 

 「ウィルブレード!」


 エレサの後方から風の斬撃が飛んでくる。


 斬撃に気付くのが遅かったが、難なく回避して距離を詰め、後方にいたマヤセに蹴りを打つ。


 反応が少し遅れたが、ギリギリでガードが間に合い、マヤセは身体中が痺れる。


 「身体中がピリピリする......」

 マヤセは身体を震わせ、声も震えてくる。


 「ヒュダは?」


 「倒させてもらったよ」

 

 その言葉を聞いても動じなかった。エレサは上に飛び、周囲を見渡す。


 「ルオラ......ガイン......」


 状況を把握する。エルヘイムの精鋭がエレサを除いて倒されていることに。もはやメルベリア対エレサということになる。


 「あとは、あなたを倒せば戦争は終わる」


 「ふっ」


 「俺一人でメルベリアを落として、あの魔術師を回収すればエルヘイムの勝ちだ」


 寸分の迷いもない表情で告げた。


 マヤセはエレサの圧倒的な圧と自信に押され、顔に汗を浮かべる。


 が、マヤセの表情はどこか笑っているように見える。


 互いに魔法を纏い構え、見つめ合う。


 エレサは一直線に青雷を放つ。


 避けられるものではないと思っていたマヤセは両手を前に出し青雷を受け止める。


 どうにか風で弾いているが、身体中に浴びればひとたまりも無い。


 魔力出力は互角。あとは根性の問題だった。


 「うああぁぁぁぁぁ!!!!」


 大声を出して青雷の軌道を変え上空に流す。


 「すごーー」


 それを見たいはピリィは言葉が漏れる。

 

 「はあ、はぁ」


 手を膝につき、マヤセは息を切らす。


 ピリィはマヤセの隣に立ち背中を摩る。


 「すごいね!」

 下を向くマヤセを親指を立てて覗き込見ながら言う。


 「君は......」

 マヤセは黄緑の帽子から桃色の髪を出している少女と初対面であった。


 「まさかあれを止められるなんてな」

 エレサは嬉しさと驚きが混在してる声で呟く。


 二人が会話しているが、青雷を纏い、マヤセを目掛けて拳を振るう。


 「やばい!」


 ピリィは攻撃を感じ取るが見えない。


 拳がマヤセの顔面に接触する直前で止められる。


 「星一さん......」


 「いや〜危なかったなマヤセ」


 ギリギリで拳を受け止め、マヤセを救う。


 「起きたのか!」

 ピリィは嬉しそうに言う。


 「よく立ち上がったね」

 あれだけの攻撃をくらって、立ち上がる星一を称賛する。


 「負けられない理由があるからな」

 拳を離し、エレサは距離を取る。


 「もう大丈夫だ。あとは俺がやる」


 星一は二人の前に立ち宣言する。


 「でも、三人で戦えば!」

 一人で戦おうとする星一を心配して、焦りの混じった声で言う。


 「いや、二人は魔獣の処理とか、フキやフランのサポートを頼む」


 「心配すんな!ちゃんと勝つからさ!」

 頭から血が少し垂れた笑顔でマヤセの心配を解消した。


 「頑張れよ。星一」

 ピリィはそう言ってマヤセと離脱する。


 「ふぅー」

 星一は深く深呼吸して考えた。


 こんな奴がいたなんてな。星一はあの元日の夜を思い出す。星一にとってこれほどの強敵はそれ以来だった。


 「あいつよりも強いかもな......」

 海里と共に戦った奴よりも。


 「もう一度戦っても結果は同じだよ」


 「それはどうかな」


 星一は魔力を練り上げ纏う。


 するだだんだんと透明な色の魔力に色がつき始める。




 そして、燃え盛る炎のように——赤くなる。


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