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ダブルワールド  作者: 東城陽一
1章:学園
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3話:メルベリア王国

 フキと星一は3日後の朝に街へと到着する。


 メルベリア王国。


 ここフロア大陸の東に位置し、海があり、国民の多くが海を愛している。また、魔法学校が置かれ、数多くの若者が己を鍛えるために挑戦することでも有名である。


 「3日だと……俺の二ヶ月はなんだったんだ〜!」

 星一は、大声で嘆き、自分の方向感覚を国の前で四つん這いになりながら恨んでいる。


 そんな星一を見ているフキは、「ははっ」と苦笑いをしていた。


 「ここはメルベリア王国。ここから協力者集めも十分できるし、いい環境だと思うよ」


 「ならいいけどさ」

 立ち上がって星一は弱々しい声で言う。


 二人は街へ入り、歩き出す。


 歩けば出店や立派な家が並び立つのが見え、繁栄具合が伺える。


 「星一はどうゆう人を仲間にしたいの?」

 

 「面白くて、真面目なやつかな」


 星一は両手を頭の後ろで組んで空を見上げながら言う。


 「強さは求めないんだ?」

 

 「別に弱くたって鍛えればいいだけだ。フキにももっと強くなってほしいからな」


 星一は優しそうな笑顔をこちらに振りまいて言うが、フキにはとんでもない特訓でもさせられるんじゃないかと思い渋い表情をする。


 「でも最初にすることは決まっている」

 歩きながら真剣な表情でフキに言う。


 「そ、それは……?」

 ゴクリと唾を飲み込んでフキは聞き返す。


 「ああ。これがないと始まらない!衣食住の確保だ!」

 人差し指を立てながら、必殺技でも放ったかのような声で星一は言う。


 「そうだった! ずっと野宿してたから忘れてた」

 

 「ってことで手っ取り早く衣食住が手に入る方法ってないの?」


 目を輝かせて星一は言うが、フキはそんなものあるはずがないと心の中で思い、左手で頭を触りながら、目を瞑って首を横に振る。


 しかしフキは会話を続ける。


 「宿屋に泊まるくらいしか思いつかないな」


 「お金あるのか!?」


 「ないよ」


 「ないのかよ」


 一瞬期待して愕然とする星一だった。


 「ギルドに聞きにいくのはどう?」

 思い出したかのようにフキは提案する?


 「ギルド? 漫画かゲームの話?」

 星一は、いまいちギルドがピンと来ていなかった。


 「ギルドは街にある案内所みたいなとこだよ。あと漫画とゲームの方が知らないよ」


 フキのその言葉に星一は信じられない表情をする。


 ギルド。一言で言えば観光案内所みたいなところだ。親切な人が多く、悩み相談なんかもやっていたりする。


 その評判を知っていたフキはそのことを星一に伝え、二人はひとまずギルドを目指す。


 向かう道中にフキは心配していそうな顔で星一に聞く。


 「なぁ、変な奴って思われないかな?」


 「なんで?」


 「だって、急に来て衣食住はどうすれば手に入るか?なんで聞く奴なんかいないだろ」


 自分で提案しておいてなんだが、すごくアホなことをしているような気がした。


 「二人で話し合って時間食うより、いいんじゃないか」


 星一はそう軽く言う。


 そうこう話しているうちにギルドに辿り着く。


 古臭い木の看板などをイメージしていた星一は期待を裏切られる。


 外観は白く石出てきた建物だ。


 中は広く、食堂のスペースもあり、多くの人がいて活気がある。


 二人は窓口的な場所に行き、お姉さんの前に立つ。


 「いらっしゃいませ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」

 満面の笑みを浮かべながら優しい声で応対する。


 「あのーちょっと変なことをお聞きするのですが、手っ取り早く衣食住が手に入る方法ってないですかね?」


 フキは尋ねる。


 「はい?」


 当然の反応だろう。少年からそんな言葉が来るとは思いもしない。


 お姉さんは一瞬固まるが、すぐに答えてくれる。


 「お二人ともまだ若いので、十分仕事に就くことができます。なので今急ぐ必要はありません。地道にお金をためて、服を買ったり、家を買ったりするのが、一番の近道だと私は思います」


 お姉さんは、優しく答えてくれた。当たり前すぎる回答にフキは言葉が出なかった。


 「お姉さん! 俺たちはちょっと急いででさ、何でもいいから! 他になんかないかな?」


 お姉さんの前にある隔たれた木の机に手を置いて前のめりに星一は聞く。


 お姉さんは困惑しながらも、寮人差し指を頭に当てて頭を回しながら考えてくれる。


 「なんでもでよければ、一個あるのですよ」


 二人は何も言わずに聞く姿勢をとる。


 「メルベリアの魔法学園に行くのはどうでしょうか?あそこは全寮制ですし、制服も支給されて食堂も学生ならお金はかからないはずです」


 「お姉さん、それを待ってたんですよ」


 星一はそれしかないと思い、目を輝かせる。


 「ですが、入学式は2ヶ月前に終わってしまっていて……次の入学試験は5ヶ月後となってます……」


 お姉さんは言いにくそうな顔で言う。


 二人は再び絶望して下を向く。


 そんな二人を見てお姉さんは、声をかける。


 「編入試験ならいつでも受験できたはずです」


 二人はハッとして顔を上げる。


 お姉さんは続きを話すが声のトーンが下がった気がした。


 「ですが、入学試験と違って編入試験は難易度が桁違いということで、命の落とした人もいるとかを噂で耳にしたことがあります……」


 「どうして難易度が変わるのですか?」


 フキは少し震えた声で聞く。


 「入学試験では、魔法が使えなくても、将来が期待される生徒をじっくり選抜します。ですが編入試験は即戦力を求めるため、合格は大変厳しいものとなってるという、噂ですよ」


 「え!? あ、なんでもない」


 星一は大声で驚き、ギルド内にいた人たちの視線が集まる。


 「どうする?」

 フキは星一の方を見て聞く。


 「受けよう」


 「わかった……」


 「お二人で決められたことでしたら、私は止めません。心から応援しております!」


 2人はギルドを出て学園に向かおうとするが、お姉さんは外に出て、ありがたい言葉を残して手を振りながら送り出す。


 フキは不安がっていた。果たして合格で効くのかどうか。3ヶ月の間山脈にいたとはいえ、一度死にかけている。


 「大丈夫だよ。あの山脈での経験は、必ず自分の力になってる」


 フキは心が読まれているような気がして目を細めるが、静かに少し笑う。


 フキは自分の顔を両手でパン!と叩き、覚悟を決める。そして、2人は編入試験を受験しに学園を目指すのだった。

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