2話:魔道士と魔術師
森に倒れ込んだフキの目の前に1人の少年がいる。
――この出会いがまさか、ここまで大きな事になると思いもしなかった。
「ま、魔術師?」
その言葉を知っているはずなのに、なぜか聞き返してしまった。
「そう。さっきの竜巻は君で間違いない?」
「あ、うん」
最悪の存在とされた魔術師が1人、普通なら命はない――そう思うが、フキはこれまでにないほど胸が熱くなっていた。
だが、警戒は緩めずにフキは問う。
「星一は……どうしてこんなところに?」
「二ヶ月前くらいにこの辺に着いたんだけど、迷ってね、今やっと人に会えたってとこ」
二ヶ月彷徨った星一の服はところどころ埃が目立っていた。
敵意はない。そう感じ取ったフキは立ち上がり、星一の目の前に立つ。
背丈は同じほどで年齢も近いだろう。
星一は目の前に立つフキの顔を見て口元だけ笑い、話を始める。
「名前は?」
「フキだ」
即答する。
フキは星一と話がしたくてうずうずしていた。
「いい名前だ。フキは魔道士で間違いない?」
「そうだけど..….」
フキの返答を聞いた星一は顔つきを変え、真剣な眼差しで話を続ける。
「出会っていきなりですまないけど、俺に協力してくれないか?」
いきなりの要請にフキは一瞬戸惑う。一般的には絶望するところなのだろう。しかし、フキの好奇心はそんな絶望を上回っていた。
「まずは、助けてくれてありがとう。そして——教えて欲しい! 魔術師について!」
その返答を聞いた星一はホッとしたのか下を向いて深く息を吐く。
「ありがとう。一回座ろうか」
そう言って二人はその場で座り込む。
「俺はこの大陸よりずっと北にある大陸から来た。目的は俺たちと一緒に戦ってくれる協力者を探しにね」
「一緒に?」
「一言で言うと人手不足だ。俺たちが相手にしてる奴らは数が多い。しかも強い。故に人手が足りてない。だから俺が一緒に戦ってくれる人たちを探しに来た」
そして星一は再度確認する。
「この話を聞いた上で、フキ。君は協力してくれるか?」
「協力する」
フキは即答する。
自分の知りたいことが目の前にある。それに、もう帰る当てはないのだろうと心の隅で感じていたことからの返答だった。
フキの返答の速さに意表を突かれたのか少し驚いた様子で星一は言う。
「決めるの早いな!」
その言葉にフキは返さず、じっと星一の目を見つめる。
「わかった。じゃあフキのことを教えてくれ」
フキは語りだす。
「俺は三ヶ月前に追放された。理由は魔術師に興味を持ったからだ。自分の覚悟を見せるためにここでの生活に耐えて見返すつもりだったけど、今まで何にもない。それでさっき魔獣に殺されそうになったとこを星一に助けられた」
その話を聞いた星一は首を傾げながら言う。
「なんで、魔術師に興味を持ったら追放されるんだ?」
星一にとってはなぜそんなことになるのかわからなかった。
「魔術師はこの世界で禁忌とされている」
「はぁぁぁ〜?」
星一はここでの魔術師の歴史を知らない。そんな彼にとっては衝撃的な理由であった。
どうして、そんな扱いされるのか。その真相が知りたくなった。
「何でそんなことになってんの?」
「その前に、星一は魔法についてどのくらい知ってるの?」
「あれだろ? 水とか風とか出せるんだろ」
身振り手振りジェスチャーしながら星一は軽い口調で言う。
「あははっ...」
知らなそうに言う星一を見て苦笑する。
咳払いをして、フキは魔法について話す。
「魔法は、炎、風、水、木、岩の5種類ある」
魔法体系やそこから派生して生まれる魔法について大まかに説明する。
その説明を星一は静かに拝聴していた。
そして500年前のエレメントマスターと一人の魔術師の歴史についても話し、魔術師が忌み嫌われる理由を告げる。
「そのせいでこの世界で魔術師は禁忌とされて、タブーな存在となってるんだ。だから――」
星一はフキの頭に優しくチョップする。
「なげぇわ、話」
しばかれたフキも魂が抜けたようにポカンとしている。
これまで友達すらできたことないフキにとって、話すことが楽しかった。ましてや同年代となると嬉しさのあまり先走ってしまっていた。
「要は魔術師は嫌われてるってことだろ?」
「うん。だから星一は魔術師であることを隠したほうがいい」
星一はため息をつきながら立ち上がり、緊張を解いた表情で言う。
「何となくはわかったよ。とりあえず人がいるところに行こうぜ」
フキは神妙な面持ちで考える。
「え? 街とかあるよな?」
深刻そうな表情で悩んでいるフキを見て星一は焦りながら聞く。
「あるよ。俺が案内する」
フキも立ち上がってそう言った。
「うっし!」
ガッツポーズをする星一は歩き出そうとした時にこう言った。
「ここでは俺たちはパートナーだ。フキにできないことは俺がやる。俺にできないことはフキがやる。互いに助け合っていこうぜ」
フキの胸は高鳴っていた。初めて対等に話せる友をえたのだ。
夜風が冷たく、周囲の木が風に揺られて影が踊っているようだった。
二人はこの月の光に照らされた山脈の森の中この日の満月の下から歩き出す。




