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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 2章:エルヘイム
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29話:雷と星

 星一とエレサ、2人は互いに見つめ合い、ただならぬ緊張感が生まれる。


 この空間に他者が入る隙はなく、静寂に包まれる二人の時間が止まっているかのように。


 「この人は強い。普通のことをしても勝算はない......」


 水属性はまったく通用しないと判断したエレサは、雷をバリバリ纏う。


 「水と雷は同時には使えないのか?」

 星一は心の中でそう思う。


 本来雷のスピードを再現できる力なら、反応することはできない。


 だが、星一は容易に対応することができた。


 雷魔法と言っても、雷そのものの力を発揮することはできないと星一は考える。


 しかし、水と雷が合わさればどうだろうか。星一は顔に汗を浮かべる程にゾッとした。


 ただ、最初の攻撃と2回目の攻撃を踏まえて考えると、分けて使用していることに気づいた星一は2つの属性を同時に使うことはできないと結論づける。


 それは憶測に過ぎない。だから手を抜くようなことはしない。


 「ほら、いつでも来な」

 人差し指を縦に振りながら言う。


 エレサは右手で雷を放った。


 先程ど同様に星一は軽やかに避ける。だが、避けた先にはエレサの足がそこにはあった。


 エレサはあえて避けるコースを絞って雷を放ち、先回りをして、蹴りを放つ。


 星一はミサイルのようなエレサの蹴りをしゃがんで回避する。


 「嘘でしょ!?」

 命中するかに思われた渾身の蹴りも回避され、心の中で驚く。


 「あっぶねぇ〜」

 蹴りを回避し、建物の上へ移動しながらそう呟く。


 エレサも追いかけるように建物の上へ行く。


 「じゃあ、次はこっちから行くよ」


 星一はそう言って、距離を詰める。


 右手で拳を振りかざし、エレサの顔面をかする。


 「くっ!」

 ギリギリ避けたと言えるが、攻撃は続く。


 パンチをした勢いのまま回転し、左足の踵が命中する。 

 

 エレサはただの一発の蹴りとは思えないほどに吹っ飛ぶ。


 「かはっ、」

 口から血を吐きながら飛んでいく。


 星一はすぐさま追いかける。しかし、何体もの魔獣が行く手を阻む。


 四足歩行型の魔獣が飛びかかるが、猛スピードで薙ぎ払う。


 そしてさらに星一の前に巨大な魔獣が立ちはだかる。まるで、巨大なゴリラのようだ。


 魔獣は拳を振りかざすが、星一は回避すると同時に魔獣の頭へ移動し、踏みつけて先に進む。


 踏みつけられた魔獣は、建物が崩壊しながら一直線に落下する。


 「この魔獣ってゆうことも聞いてくれるのかよ」


 エレサは大型の魔獣の背に乗り、向かってくる。


 星一はすぐさま魔獣の頭部に蹴りをかまし、エレサと魔獣を引っ剥がす。


 エレサは、建物を利用しながら、雷でジグザグに移動し空中に逃れるが、その先で星一は待っている。


 「トン」と肩を叩かれたエレサは、宙で浮かび上がり、体がふわふわと浮いてる感覚になる。


 「なにこれ!?」

 エレサは動揺が隠せない。


 「慣れれば楽しいよ」

 星一は微笑みながら言う。


 この瞬間エレサは恐怖感が湧き上がる。まさに生簀に入れられた魚のような気分になり、これからどうなるのか想像がつかなかった。

 

 星一は身動きの取れないエレサのおでこにデコピンをする。


 「アガッ」


 デコピンとは程遠い威力だった。高所から飛び降りて、最高スピードに到達した速さでいきなり落下したようにエレサは吹っ飛ぶ。


 「あ、ガハッ!」

 地面に横たわるエレサは、額から血を流して首元まで垂れる。


 その映像を見る人たちは、星一の圧倒的な強さに驚愕する。これが魔術——最悪とされた歴史の力。この力が味方につくなんで誰が想像しただろう。メルベリアの民衆は声も出ない。


 「やり過ぎたか?」

 遠目でエレサを見つめながら呟く。


 「もっと強いと思ってたけど、考えすぎだったか?」


 初めてエレサを見た時の衝撃ほどの強さは感じられず、星一は疑問に思う。


 「まだやる?」

 星一はエレサの正面に立ち、ポケットに手を突っ込みながら言う。


 「当たり前です...私は戦うためにここにたっているのですから」

 赤い顔で立ち上がるエレサの目はまだ死んではいなかった。

 

 ここまでの攻防で、エレサは考えた。


 「重力の攻撃を感じたのは、全て接触してからだった……」

 戦闘の中で、魔術のポイントを見つけた気がした。


 エレサは星一の魔術の本質に気づき始める。

 

 「けど彼の速さは一体どのような?」

 エレサは星一から目を逸らさず考える。


 「まさか......自分を最大限まで軽くすることが!?」

 それしかないとエレサは思う。


 彼の魔術は相手に触れることで発動する。自分自身に対しては、自在に使うことができるってことだと考えた。

 

 なら距離をとって戦う方がいいとエレサは思う。


 エレサは上に飛び雷を撃つ。


 星一も上に飛び回避と同時に距離を詰めようとする。


 エレサは雷で長い鞭を作り出し、攻撃で距離を詰められないようにして防戦する。


 「いきなり距離を空けて戦い出したな......」

 触れないと魔術が発動しないことに気付かれたと星一は思う。


 冷静に分析して戦いの中で改善するエレサを見て星一は目が少し笑う。


 「戦争で出会わなかったらいい友達になれたかもしれないな」

 星一は胸の内で呟き、エレサの鞭を掻い潜る。


 エレサの背後を取った星一は両手で拳を作り、躊躇いなく振り下ろす。


 地面に落ちたエレサはうつ伏せで倒れ、立ち上がってこない。


 「流石に気絶したか?」

 近くの建物の上に降りた星一は呟く。


 土煙の中倒れているエレサはピクっと一瞬揺れる。


 風が止み、戦場の音が遠のいた。


 「......交代だ」

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