28話:魔術解禁
戦場の中心に1人の少年が降り立つ。
彼を知る人たちは、以前の彼とは違うことが一瞬でわかるほどに、異様なオーラを放つ。
「星一さん!?」
「星一くん!?」
「星一......」
学園を守るフキ達からもその姿が見える。
「誰ですか? 君は」
エレサは星一のオーラを感じ取り、警戒を強め、質問する。
「当ててみな」
星一は、はっきりとしない言葉を吐き捨てる。
「なら、力ずくで聞き出します」
エレサはゴクリと息を呑んで、魔力を高めた。
「訳あって、俺はメルベリアに力を貸す!まさか、もう諦めたりしてないよなぁ!?」
星一はメルベリアの兵士たちを煽るように声を上げる。
「諦める訳ないだろ......」
「ラスカ様が守ろうとするこの国を......」
「俺たちが守るんだ!」
星一の煽りはいいように働き、兵士たちの指揮をさらに上げる。
「さて......始めようか」
星一はエレサを見つめる。
**********
数分前のメルベリア王国上空にて。
竜化したピリィの背中に乗った星一は、戦争を見守っていた。
竜化したピリィは赤い鱗を纏い、大きな翼を広げ、人が5人は乗れるほどの大きさである。
「やるなぁ〜フランのねーちゃん」
ラスカとガインの戦闘を観戦している。
「次はあの黄色髪のやつが戦うのか...」
星一はあの中で一番気になるエレサの戦闘が気になっていた。
「あれが星一が強いって言ってた人?」
「そうそう」
ラスカの弓矢の攻撃を見る星一はその姿に釘付けにされる。
「力が及ばずも戦略を練って戦う人は嫌いじゃないんだよなぁー」
星一はラスカを全力で応援していた。
「勝てるんじゃない!?」
「ああ! このままいけば!」
だが雷魔法で避けられたことを知る星一が呟く。
「雷って強すぎない?」
ピリィの背中を両手でわしゃわしゃしながら言う。
そしてエレサの口から出た魔術師の存在を聞く。
「どういうことだ?魔術師って......」
魔術師というワードが出たことで星一の脳内は働き出す。
そいつの入れ知恵で戦争になったと考えると、星一を誘い出すのがこの戦争の目的ってことだと悟る。
「どこでバレた?」
星一には見当がつかなかった。助言したやつは星一が出てくると踏んで、倒せる自信があるから戦争を引き起こしたと考えるのが妥当だろう。
その魔術師がここにいないことを考えると、星一とエレサの対決に持ち込むめば、向こうの思惑通りか。
星一は思考を巡らせる。
「ピリィ。ちょっとテレパシー貸してくれ」
星一はそう言ってある人物と話し、その直後に、ピリィの背中から飛び降りる。
「あなたは知っているのですか?魔術師について」
「知ってるっていったら?」
「あなたを捉えます」
エレサは凄まじいスピードで距離を詰め、星一の顔面を目掛けて拳を振りかざす。
だが向かってくる拳をふらっと横に避け、エレサの手を掴む。
「よっっと!」
腕を掴んだ星一はその場で勢いをつけるように回り、エレサを放り投げる。
放り投げられたエレサの勢いは凄まじく、多くの建物を貫通して行っても止まる気配はなかった。
「重い!?」
自分が投げられた瞬間体重が何倍にもなったかのように身体中が重く感じた。
「ゲホ!」
国の端まで飛ばされたエレサは咳をしながら立ち上がる。
おでこが切れて流れる血が左目にかかる。
「飛ばしすぎたか〜」
星一は呑気な声で遠くを見つめた。
そんな星一に精鋭の3人が襲いかかる。
「お前を倒す!!」
ヒュダ、ルオラ、ガインが星一に飛びかかろうとするが...
暴風がヒュダを阻害して身を引かせた。ルオラはそのまま飛びかかるが、顔面に衝撃が走り、近くの建物に突撃する。
そしてガインは星一と対峙し、身長差を活かして襲いかかる。
「隙がだらけすぎる」
ガインが接触する前に距離を詰めた星一の拳を腹部に喰らった。
「重すぎる」
ガインは心の中で呟き、白目を剥いてその場で倒れる。
「誰だお前!」
ヒュダは攻撃を1人の少女に防がれる。
「あなたの相手は、私がします!」
「そいつは頼むぜ!マヤセ!」
マヤセは一歩引いて星一に近づいて言葉を交わす。
「星一さん、私はあなたが何者か察しがつきました」
マヤセの心の底にあった疑問は確信へと変わる。
「それでも私は、これまで通り接しますよ!」
星一という人間を理解しているマヤセにとっては魔術師とかそうゆうことは関係なかった。
「いい後輩を持ったよ!」
星一は、ルオラの方を見る。
ルオラの顔面に蹴りを入れたのはピリィだった。
「はっはぁー! 楽しくなってきた!」
ピリィは猛烈にテンションが上がっている。
「殺さない程度に遊んでもらいな〜」
ピリィは足を正面に向けながら振り返り、親指を立てる。
「さて、行くか」
星一はエレサが吹っ飛んでいった方角に走る。
その間に遭遇した魔獣達の相手はせず、スピードでぶっちぎり、風圧で薙ぎ倒していく。
「いたいた」
星一はエレサの後ろに立ち止まる。
「よお」
「っ!?」
エレサは咄嗟に前に屈み、右足で水刃を繰り出し、星一の首を捉える。
星一は冷静に見つめ、水刃が首に到達する直前に左手で触れ、水刃の形が崩れた。
星一の手には、シャボン玉のように一粒の水がいくつも浮いている。
それを見たエレサは理解した。
「それは魔術ですね!?」
「2回しか使ってないのによくわかったね」
魔術が見えない力というのは、エルヘイムにいた時から耳にしていたエレサは星一の扱う奇怪な能力に気づく。
そしてその映像が、この大陸中に放映された。メルベリアの民衆はパニックに陥るかに見えたが、意外と冷静だった。
「あれが魔術師」
地下シェルター内ではざわざわと声が行き交う。
「初めて見た」
「あんなやつ信じていいのか……」
「あんなやつ? どっからどう見ても純情な少年じゃないか!」
「そうだ! それに、彼はこの国のために戦ってくれている!」
「彼に託しましょう」
民衆はやじを飛ばし合うが、後方から王妃が現れる。民衆は道を開けて、膝をつく。そして、この国の命運を魔術師の少年に委ねた。
「星一くん……」
その映像を学園から見ていたフランやミナは不安そうか表情で名前を呟いた。
「--」
フキは静かに流れるモニターを眺めて、じっと星一を見つめている。
◇
「重力ですね」
「まじか、そこまで……」
最初に触れられた時の重さと、水中に入った時のような無重力状態を実感したエレサは答えを導き出していた。
「意外と賢いな」
星一は見下ろすような目で見つめながら呟く。
「まだ出てこないな......」
誘いに乗った星一は助言の魔術師を逆に誘き出せるか思案する。
まあ、まずは目の前の相手に集中するとしよう。
「さて、ここからは第二ラウンドだ!」




