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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 2章:エルヘイム
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26話:氷の王女

 ガインはラスカと対峙し、戦闘体勢に入る。


 ラスカもそれに答えるように構えを取り、氷で作った剣を作り出す。


 「一対一なら......」


 4人の前に立つラスカだったが、全員でかかってこられれば、勝ち目はなかった。だが、一対一の状況となれば話は変わる。他の3人を気にすることなく1人に集中できる。


 「私のこの勝負が戦況を大きく変える。負けるわけにはいかない」


 ラスカは目の前に立つガインを絶対に倒すという強い目で見据え、剣を構える。


 「なんて目してやがる」


 ガインはラスカの目を見て、その圧に身体中が武者震いを起こす。


 「行くぞぉ!!」


 始まりの合図を告げるようにガインは声を上げ、自分以上の大きさの岩弾を放つ。


 岩弾は一直線にラスカを捉えるが、氷剣を構え、真っ二つに斬り落とす。


 視界に広がった岩弾を切り、正面を見るが、ガインの姿はなかった。


 「こっちだぁ!!」


 ガインは背後に周り、拳を岩で包みラスカの背中を目掛けて拳を振り下ろす。


 気づくのに一瞬遅れたラスカは回避できないと踏み、背中に氷を纏い、鎧のようにガードの体制に入る。


 岩と氷の強度勝負になるかに見えたが、ラスカの足から魔力が広がり、足場は一瞬で凍りつく。


 ガインの踏み込んでいる足が滑り、地面に顔を打ちつける。


 その隙に、ラスカは足に氷を纏い、ガインの顔

面を蹴り上げ、浮かび上がった巨体を氷剣で貫くように突いた。


 「ぐはっ!!」


 ラスカの氷剣を喰らったガインは一直線に吹っ飛んでいく。


 「はぁ、はぁ、これなら--」


 一瞬の攻防だったがこれならなんとか勝てるかもしれない。


 戦いを見ていた周囲の兵士たちから歓声が上がる。


 「ラスカ様ぁぁ!!!」


 「これがラスカ様の力だぁーー!!!」


 息を整え、周囲を見渡しているラスカの後ろでまとめている淡い青の髪が冷たい風で靡く。


 「できれば今ので倒れてほしい」


 ラスカはあと3人も倒す気でいるため余力を残したいが、これで終わるはずないと思い、吹っ飛んでいったガインの方を直視する。


 すると、ものすごい勢いで岩弾が飛んでくる。


 「っ!?」


 岩弾を認識して、建物の上に回避する。


 建物の上に移ってラスカは周囲を見渡し、警戒するが、頭上でガインが拳を構え、振り下ろす。


 「しまった!」 


 上を向いた瞬間岩を纏った拳で視界が埋め尽くされ、重いものを落としたように、建物の真ん中に穴が開く。


 「いやー油断したぜ」

 ガインは軽口を叩く。


 「負けたと思いましたよ」

 エレサは興味のなさそうな声で言う。


 「師団長の肩書は伊達じゃないな」

 そう言って落ちていった穴を覗く。


 ピキン。と音が鳴り、鋭い氷の柱が穴から飛び出す。


 「あっぶね〜顔面が貫かれるとこだったぜ〜」


 氷柱が飛び出る直前で、ガインは身を引いていた。


 ラスカは瓦礫の下で立ち上がり、右手で額を抑える。


 拳をモロに顔面に喰らい、額から血が漏れ、唇が切れて血を流し、身体中が震える。


 「痛い......」


 「氷での防御が一瞬でも遅れていたら......」


 そう呟きながら、自分が落ちてきた穴を見上げた。氷柱が陽の光にさらされ、明るく光っている。


 崩れかけの建物の中から聞こえる。兵士隊の戦う音、魔獣達の足音、その他の雑音が耳障りで仕方ない。


 まさに戦争が始まったのだと実感する瞬間だった。


 だが今はその雑念を捨て、あの男を倒すことだけを考え、ラスカの瞳は闘志に燃えている。


 自分が倒れれば、この国は絶望に包まれる。自分が最終防衛ラインなのだと言い聞かせ、身体中に魔力を込める。

 

 「ふぅー」


 深く深呼吸し、再び氷柱を放つ。


 ガインは建物が揺れ動き、もう一度あの攻撃が来ると予想し、隣の建物に飛び移る。


 予想通り、氷柱が飛び出す。


 「同じことが二度と通用するかよ......」

 そう呟き、2個目の氷柱に近づいた瞬間だった。


 氷柱が砕け散り、中からラスカが氷剣を振りかぶり、姿を現す。


 「なに!?」

 ガインは完全に予想だにしていなかった。


 「フルブレード!!」


 ラスカの氷剣はガインの身体を袈裟に叩っ斬る。


 岩の防御も、魔力での防御も間に合わず、ガインは渾身の斬撃を喰らう。


 ガインは声も出ず、仰向けに倒れ、首元に氷剣つ突きつけられる。


 切り傷から血が溢れるが、ガインの意識はまだあった。


 「私の......勝ちです......!」


 ラスカは息を切らしながら、勝利を宣言する。


 「俺の負けだ......殺せ......」

 戦場での敗北は死という考えを持つガインは自分を殺すようにラスカに言った。


 「私は......たとえ敵でも人は殺しません」

 剣を握る手が震え、迷いのこもった声で言う。


 「その優しさは、自分を滅ぼすぞ」

 ガインは覚悟の決まった目で見つめ、素手で氷剣を掴む。


 そして自分を刺そうとした瞬間、水が体に巻きつき、引っ張られる。


 「なんだ!?」


 「死ぬのは勝手ですけど、目の前で死なれるのは少し気分が悪いです......」


 エレサは、水で縄のようにガインを縛り上げて引っ張り助けた。


 「俺は負けたんだぞ!」

 ガインは声を荒げて反抗する。


 「それでもお前はエルヘイムの要だ。死ぬのは俺が許さん」


 どれだけ信念を貫いたとしても、死ぬことだけは第二王子であるヒュダはそれを許さない。


 「次は私が戦います」


 エレサはそう言って、黄色い髪が風に揺られながら、ラスカの前に立つ。


 「始めましょう、王女様」

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