22話: 〜 を超えた理解
日が昇り、星一はこの家で1回目の朝を迎える。
下に降りると、ドラセナが何やら出かける準備をしていた。
「どこか行くのか?」
目をこすり、あくびを堪えながら星一は聞く。
「買い出しに行って来ます」
ドラセナは淡々と返す。
「気をつけてな」
「はい」
そう言って家を出て街へ歩いて行く。
星一は何か食べ物がないか棚を物色するが、何もなかった。諦めてソファに深く座り、ぼーっとしている。
「だから買い出しに行ったのかぁ〜」
「ピリィはまだ寝てるし、夕方まですることないなぁ〜」
星一は重い腰を上げて、表に出る。
森の中にポツンと空いた空間にあるこの家の周りを歩く。
国から近いとは言え、それなりに魔獣はいるはずだが、一度も襲われてない。星一は不審がる。
「これか?」
家の屋根に木の棒のようなものが刺さっている。
あの棒から圧を感じる。ピリィの力か、セナの力かはわからないが、あの棒があるから魔獣は寄ってこないようになってるんだろうな。
やっぱりあの二人、かなり強いな。2層であんなにやられることはないと思った。
「やっぱ、何か隠してるよなー」
両手を腰に当てて、空を見ながら星一は呟く。
「もっかい寝よ」
星一はそう思って家に戻り、ソファに寝転ぶ。
*****************
「起きろおぉぉー!!!!」
ピリィはソファーで寝てる星一にダイブする。
「ンゴっ!」
星一は腹を抑えながら起きる。
「普通に起こしてよ...」
そう言いながらも、似たようなことが前にあったような気がする。
「遊ぶぞ!」
ピリィは寝そべっている星一のお腹に座り、輝く目で言う。
「遊ぶって......何で?」
星一の頭は完全には目覚めていない。
「それは任せる!」
「え?」
そう言えばこうゆう子だったと思いながら、相手してやるか。と言う気分になる。
だが、星一はフキも迎えに行くことを今思い出す。
「悪いけど、今から友達を連れて来るから今は遊んでやれないんだよ」
「えーーー」
ピリィはシュンとした顔で落ち込む。
「俺が連れて来る友達がきっと遊んでくれるよ」
「ほんとに?」
「ほんとだ!」
「じゃあ待ってる!」
「ああ!」
星一は顔を洗って、家を出る準備を整える。
「行って来る!」
買い出しから帰っているドラセナとピリィに声をかけてドアに手をかける。
「お茶用意してますね」
「頼んだ!」
星一はそう言って、学園に向かう。
この時間だと、後輩たちとの鍛錬が終わって部屋に戻ってる頃だろうか。
海側から行って窓から声かけることにする。
そう思いながら、星一は車以上のスピードで森を抜けて国に入り、学園の裏側に着く。
「部屋は2階だったっけ?」
寮を見上げてそう呟く。
高く聳え立つ建物に対して、そこが地面かのように星一は2階まで歩く。
「いるいる」
星一は窓を覗きながら呟く。
窓をコンコンとノックし、背を向けているフキはビクっとして振り返る。
「星一か!?」
フキは急いで窓を開ける。
「よお!」
星一は、ニコッと手を振る。
「どうしたんだ!? もしかして稽古付けに来てくれたのか?」
フキは、嬉しさと驚きが混じっている。
「いや、会わせたい奴がいるんだ。だから一緒について来てほしい」
「合わせたい奴?」
フキは見当がつかなかった。
「まあまあ」
星一はそう言って、フキの手を掴んで窓から外に出る。
「合わせたい奴ってどこにいるの?」
「国を出てすぐの森だよ」
星一は誰に合うかの詳細は伝えず、フキと歩き出す。
「最近どう?」
星一は、退学してからのフキの近況を聞く。
「いい感じだと思うよ。俺自身も、マヤセ達も」
「そっか......ならよかったよ」
星一は歩きながら、少し微笑む。
「マヤセとフランって仲良いんだな」
フキは意外そうに言う。
「そういや、フランがマヤセは唯一の友達って言ってたぞ」
「そうなのか」
同年代というのもあるだろうが、国の英雄の孫と王族は多少なりとも関わりはあるだろうと星一は考える。
二人は歩いていると中央通りに人だかりができているのを見つける。
「なんだ?」
星一はフキに聞く。
「さあ?」
フキにもわからなかった。二人は気になり見に行くことにする。
「あれは......魔法師団か?」
フキはそう呟く。
「へえ〜あれが......」
フキの言葉を聞いた星一もそう呟く。
「あの大人数の先頭にいる二人が師団長だ。オレンジ髪の男がラヌイって人で茶色い髪の男がメグリって人だったと思う」
フキは色々解説してくれる。
「へ〜」
星一はあまり興味がなさそうだった。
「あんな人数引き連れてどこ行くんだ?」
「そう言えば近々迷宮へ遠征に行くって学園で話題になってたよ」
「そうだったな」
星一は忘れかけていた。
二人は先へ進み、いろんな話をしながら森の家に着く。
◇
「なあ、星一。なんでこんなところに家があるんだ!?」
フキは驚愕しながら星一に聞く。
「さあ、俺も知りたいよ」
星一はそう言いながらドアに手をかける。
「フキ、中には仮面をつけたクールな奴と、めちゃくちゃ元気な竜がいる」
「くれぐれも気をつけろよ」
星一は背を向けながらフキに用心するように言う。
「え?」
フキは、星一の言ったセリフがどうゆう意味かわからなかった。
そして星一はドアを開ける。
「ただいまー。連れて来たよー」
「おかえりー!」
「その人がわちと遊んでくれるのか!?」
フキは、いきなり声を張る少女を警戒する。
よく見ると頭に2本何かツノのようなものが生えていることに気づく。
「なぁ、あの天真爛漫な少女はなんだ?」
フキは星一の方を持ち耳打ちする。
「何って竜だよ」
星一は普通に答える。
「竜って、あの竜か!?」
フキはさらに驚愕する。
「本当に実在したんだ!」
だんだんとフキが興奮して来てるのに星一は気づく。
「それで、あんた遊んでくれるのか?」
ピリィはフキの服を引っ張り遊んでくれるか問う。
「俺はフキ。君は?」
「わちはピリィだ!」
「ピリィか〜いい名前だね!」
二人は自己紹介をし、星一はそれを見ているが、気持ち悪くなっていくフキを目を細めで見ている。
「フキ。紹介したいやつはもう一人いる」
星一そう言って、フキの方を叩く。
「ああ。ごめん、」
その言葉が聞こえたセナがキッチンから歩いてフキの目の前まで来る。
「ドラセナです。二人はセナって呼んでます」
ドラセナはそう言って、フキの前に何か刻印のようなものが刻まれた手を出す。
「フキだ。よろしく」
フキも名乗り、握手を交わす。
「似ている......」
ドラセナは小さい声で呟く。
「お茶を淹れますね」
ドラセナはそう言って、キッチンに戻る。
「ありがとう!」
フキはお礼を言い、星一とソファに座る。
四人分のお茶を淹れ終わり、セナはおぼんに乗せて持って来る。
四人は、お茶を一口飲み、星一は口を開く。
「フキ。この二人はな、俺たちに協力してくれることになった!」
「協力って、え!?魔術師のことを話したのか!?」
素っ頓狂な顔でフキは少し飛び上がった。
「そうだ。それを聞いた上で協力してくれるんだ」
星一は協力者が増えたことを報告する。
「そっか!また一歩進んだな!」
「ああ」
ドラセナは少し手を上げて二人に問う。
「魔術師のことを話すと何かまずいんですか?」
その言葉を聞いた二人は、目が点になる。
「そりゃあ...だって、魔術師は最悪の存在として、500年前から伝えられている」
フキは丁寧に説明するがどこかいきいきした様子だった。
「500年前?」
「そう。500年前に1人の魔術師が5人のエレメントマスターを殺したとされ、その伝承から人々は魔術師を憎み、恐れているんだ」
フキの説明を聞いたドラセナは、硬直する。
「そ、そんなふうになってるなんて......」
胸の内でドラセナは呟くのだった。
「魔術師ついては理解しました。それでも私たちは協力しますよ」
「そっか! ありがたいな星一!」
星一は目を閉じて腕を組み、無言で何回も頷く。
「よければ、晩御飯食べて行きませんか?」
ドラセナは晩御飯にフキを誘う。
「いいのか?」
「もちろん」
「じゃあお言葉に甘えて」
右手で頭をかきながらフキは言う。
「ご飯まで遊ぼ!」
ピリィはフキを誘う。
「おう!何して遊ぶ?」
「任せる!」
ガクンとフキは崩れ落ちる。
気を取り直して、フキは話す。
「じゃあ俺と模擬戦をしないか?」
「いいよ!」
星一は嘘だろって顔でフキを見る。
「俺はお前の好奇心が恐ろしいよ......」
星一は心の中で思う。
すると外からすごい音が聞こえて来る。
「なんの音だ?」
星一は立ち上がり、窓から外を見る。
「ひ、飛行船?」
星一のその言葉を聞いたフキは顔色を変えてすぐ外に飛び出す。
三人はフキが飛び出し、後を追うように家を出る。
「どうしたんだよフキ」
星一はフキを心配する。
フキは上を見上げている。
空には巨大な飛行船が飛んでいた。
「なんだ......あれ......?」
星一の理解を超えるものがそこにはあった。
「敵か!」
ピリィも警戒している。
「大丈夫だよ」
ドラセナはそう言って、ピリィの後ろから抱きつく。
「なんで......今になって......」
フキは、静かに呟く。
その言葉が聞こえた星一はフキに問う。
「フキ、あれはなんだ?」
「あれは、隣国の飛行船だよ……」
「隣国?」
飛行船はメルベリアの方へ飛んでいくのだった。




