21話:お願い
星一は、ピリィの帽子を買いに街へ出かけた。
走りながら街へ入り、パッと目に入った屋台の帽子に目を惹かれる。
これならと思い、星一は屋台の前まで行く。
「その帽子いくらですか?」
「これは100メルだよ」
屋台のおばちゃんは親切に答えてくれる。
その帽子は黄緑色で、ニット帽のような見た目である。2本のツノのようなものがついており、中は空洞になっていた。
まさにピリィ専用と星一は思った。
「これください」
星一はそう言ってお金を払う。
「妹にでもプレゼントするのかい?」
店のおばちゃんはお金を受け取り、袋に詰めながら聞く。
「まあ、そんなとこです」
そう言って、星一は帽子を受け取り、森に急いで戻る。
「遅くて、暴れてたりしてないかな」
星一は、ピリィの機嫌が悪いことを思い、猛スピードでぶっちぎる。
◇
「今戻った!」
家に帰還し、すぐに帽子を取り出してピリィに被せる。
サイズは丁度であり、スポンとはまった。
「どう!」
ピリィはドヤって、星一とドラセナを見る。
「いいじゃん!」
「似合ってるよ」
二人はピリィを褒め、ピリィはニッと笑う。
「じゃあご飯いくよ!」
ピリィはそう言って、街へ歩き出そうとしている。
「ちょっと待って!」
星一はそう言ってピリィを引き留めると、ピリィは振り返って睨みつける。
「なんで?」
「おかね......ない」
星一はピリィの帽子を買って、残金は100メルという、自分でもこれがいくらなのかわからない金額しか持っていなかった。
「何おかねって?」
「ご飯を食べるのに必要な物だよ」
ドラセナはピリィに説明してくれる。
「星一さん、少しでもお金を持ってませんか?」
ドラセナは考えがあるように星一に聞く。
「ああ、ちょっとならあるよ」
そう言って、ドラセナに見せる。
ドラセナはお金に触れ、すぐに星一に返す。
「ありがとうございます。じゃあ行きましょうか」
ドラセナはそう言って歩き出し、ピリィもついて行く。
「え? お金は?」
「大丈夫ですよ。私持ってますから」
ドラセナはそう言うが、星一には訳がわからなかった。
と思いつつも星一はついて行く。
三人は街へ着き、ご飯屋さんを探す。
街に入ってすぐ、ピリィの姿が見えなくなる。
ピリィは匂いに釣られ、すでに店のドアの取手を握っている。
「じゃあ、あそこにしましょうか」
ドラセナは星一にそう言って、店に向かう。
三人は店に入りテーブルに座る。
星一はメニューを見て、おそらく高いと思い、ドラセナに目配せをする。
「大丈夫ですよ」
星一の目配せに気付き、心配いらないと親指を立てる。
店員さんが注文を取りに来る。
「とりあえずおすすめを」
ドラセナはそう注文をする。
「何人前になさいますか?」
「山ほどで!」
ピリィは大きく手を挙げて好き勝手に注文する。
そして、三人は料理を待つ。
料理が出てき始めると、あっという間に、テーブルがいっぱいになり、ピリィはものすごいスピードで平らげて行く。
ドラセナは仮面の下を少し上げて、顔を隠すように静かに食べている。
かなりの金額になっていると考えながらも、星一も料理を食べ進めた。
「ふぅーー満腹ー」
ピリィは食べ終わり、テーブルには料理の乗ってない白い皿で埋め尽くされている。
「私が払っておくので、二人は外で待っててください」
ドラセナそう言って席を立ち、俺とピリィを外に行くように催促する。
「ほんとに大丈夫なのか?」
ドラセナはコクリっと頭を下げて、小ぶりに手を振り、2人は退店した。
すると、すぐにドラセナは店を出て来る。
「どうやって払ったんだ?」
「持ち合わせがあったので」
ドラセナはそう言うも、ピリィの食べた量を考えると相当な金額になっていると心配になる。
「ごはんも食べたし帰ろ!」
ピリィは能天気に言う。
その言葉を聞いて、考えるのがバカらしくなり、ドラセナを気にすることをやめた。
三人は歩いて家に帰る。
家に着き、中に入る。星一は中に入るのが初めてだったので少し見学する。
リビングには大きなソファが二つあり、その間にテーブルが置いてある。
奥にはキッチンのようなスペースもあり、一階は広々としている。
2階には部屋が四つあり、それぞれの寝室に使って良いそうだ。
家を一通り見て、一階に降りるとドラセナがソファに座っており、ピリィは膝で寝ている。
「話があります」
ドラセナは真剣な声で星一に話す。
「ああ、わかった」
そう言って目の前のソファに座る。
「これから、また迷宮に行かれますか?」
「行くつもりではいるよ。することも特にないし」
「もう迷宮には行かないってお願いしたら聞いてくれますか?」
ドラセナは深呼吸しまっすぐに俺を見つめ、そう言った。
「それは......どうしてだ?」
なぜそのようなお願いをするのか俺にはわからなかった。
「......」
「それも言えないか?」
「......はい」
星一は深く考えだが、わからない。言えない事情を無理に聞くことはしたくない。でも、なぜだかわからないがドラセナの言うことを聞いてあげたくなる。
「セナがそう言うなら......もう行くのは辞めるよ」
「本当ですか!? ありがとうございます」
ドラセナはホッとした声で感謝する。
「けど条件がある」
「はい」
「これから言うことは本当のことだ。どうか驚かないでほしい」
「わかりました」
星一は膝の上に両手で拳を作り、条件を話す。
「俺は魔術師だ。この大陸より北にある大陸からやって来た。目的は、俺たちに協力してくれる人を探すことだ。条件ってのは俺たちに協力してくれることだ」
星一は、自らの正体を明かし、目的を話す。
「それでもいいか?」
「いいですよ」
ドラセナは迷いなく即答する。星一が魔術師だったと言うことに疑いも、驚きもせず。
「私が協力するとなると、ピリィもついて来ます。それでもいいですか?」
そのセリフは、星一からすれば願ってもないことだった。
「も、もちろん1! でも本当にいいのか?」
「ええ。これで迷宮に行くのをやめてくれるなら」
「わかった! もう絶対行かない」
星一は思わずその場でガッポーズをしてしまう。
それを見たドラセナはフフっと笑う。
「明日二人に紹介したい奴がいるんだけどいいかな?」
星一は二人にフキを紹介しようと思い提案する。
「いいですよ。星一さんの友達ですか?会うのが楽しみです」
ドラセナも、星一が迷宮に行かなくなって嬉しそうな声で答える。
「明日の夕刻くらいに迎えに行って来るよ」
ドラセナは、陽気な感じで親指を立てる。
そして、3人はもう休むのだった。




