20話:新居
星一は、訳がわからなかった。思い返せば、学園の授業で昔は竜族や妖精族がいたみたいなこと言ってたけど、いざ目の前にすると自分とそんなに変わらない印象が強かった。
ツノはあるけど。
「......二人はさ、迷宮を出たらどうするんだ?」
星一は竜を目の前に何から聞くべきか戸惑い、これからどうするかについてを質問する。
「まだわかんない。この子が回復してから決めると思う」
ピリィは少し考え、おんぶしている仮面の人の判断を待つように答える。
「そっか......」
星一はそれ以上踏み入ったことは聞かなかった。いや、聞いちゃいけない気がした。
三人は、星一が進んできたルートを戻り、迷宮の出口が近づいてきていた。
「もうすぐ出口だ!」
星一は指を刺して出口を知らせる。
「やっとだぁ〜」
仮面の人は言わずもがな、ピリィも竜とはいえ、かなり疲労しきっている様子だった。
「俺はもう街に戻るけど、どうする?」
「この子が起きるまでは森でゆっくりするよ」
ピリィはそう言って、今にも座りたそうにしている。
「気をつけろよ〜。国から近い森でも魔獣は出るからな」
「うん。覚えておくよ」
「明日また様子を見にくるよ」
「それは助かる!」
ピリィは明日も星一に会えそうで嬉しそうな表情をする。
星一はフッと微笑み、ピリィの頭をポンッと撫でるように叩いて街へ歩き出した。
「竜か......すごいのに出くわしたな」
星一は歩きながら呟く。
「フキに教えたら、めっちゃ喜びそうな気がするな」
星一はフキの喜ぶ顔を浮かべながら、街へ帰還する。
「今日は宿に泊まるか......」
ギルドのお姉さんに貰ったありがたいお金を使うことにした星一は宿を探す。
宿はどこでもいいと思っている星一は最初に目に入った宿屋に入ることにする。
建物は木で作られており、中に入ると木造の椅子やテーブルが目につく。
「おっちゃん! おいくらすか?」
星一は宿の支配人っぽい人に一泊の値段を聞く。
「一泊300メルだ」
「300メル?」
値段を提示されるが、星一は300メルがどのくらいか全くわからなかった。
硬貨ってことはわかるが、どれがどの硬貨か星一にはさっぱりである。
「この袋に入ってるお金で一泊できる?」
星一はギルドのお姉さんに貰った袋をおっちゃんに見せる。
「金を数えられねぇなんて変なやつだな」
おっちゃんはそう言いつつも数えてくれる。
「全部で500メル入ってる。一泊はできるから宿を利用する。でいいんだな?」
「ああ! 休ませてもらうよ!」
星一はそう言って、部屋を鍵を受け取る。
「おっちゃん親切な人だな。薄毛は気にすんなよぉ〜」
星一は、階段を上がる直前におっちゃんに声をかける。
「うるせぇ!」
おっちゃんは怒鳴り声をあげるも、少し笑った様子だった。
部屋に入ると、星一はベッドにダイブし、今日あったことを考える。
「やっぱ、気になるよな」
星一はどうして、あんな場所にあの二人がいたのかが気になって仕方がなかった。
「明日聞こうかな......」
朝早くに学園を去ってからずっと行動していた星一はうつ伏せで眠ってしまう。
朝になり、窓から日光が差し掛かり、鳥のさえずりが聞こえてくる。
「結構寝てたな。任務とはいえ......なんかみんなに悪いな......」
星一は立ち上がり、顔を洗って下に降りる。
すると、おっちゃんが食事を用意してくれていた。
「え!? 朝飯も付いてるのか!?」
星一は目を見開きおっちゃんに問う。
「あぁ! そうさ! うちは朝飯付きで300メル、破格の値段でやってるんだ!」
おっちゃんは誇らしげに答える。
「昨日は何も食べてなかったんだよ!」
星一はそう言って、一瞬で朝食を平らげる。
「美味かった!」
「その言葉が一番嬉しいよ」
おっちゃんは笑顔でそう言う。
「そのセリフは宿屋じゃなくて料理人のセリフですぜ」
星一は目を細め指を刺しながらおっちゃんに感謝する。
そして二人は笑い合う。
「また来るよ!」
星一はそう言って宿屋の入り口のドアを開ける。
「おう!」
おっちゃんも、そう返事をして見送りをしてくれた。
そして星一は宿を出て、森へ向かう。
星一は、森を散策しているとピリィを見つける。
ピリィは暇なのか、草の生えていない地面に木の棒で何かを書いている。
星一は声をかけようとするが、ピリィの奥にあるものを見て驚愕した。
家があったのだ。
まるで建築士に作ってもらったような家が。
「あ、星一」
驚愕していると、ピリィに気づかれた星一であった。
「よぉ......」
星一はピリィのそばに行くまでに状況を整理する。
まずは、ピリィが書いていた絵を見る。
誰にでもわかる絵だった。それは――
「肉だよな?これ」
「うん」
不機嫌そうにピリィは返す。
「おいどうしたんだよ?」
星一は機嫌が悪いのを察して事情を聞く。
するとピリィは小刻みに震え、天を向いて叫ぶ。
「お腹減ったあああぁぁぁ!!!!!!」
隣にいた星一の耳は終わった。
これは数分は聞こえないと感じるほどの叫びだった。
「家のことも聞きたかったのに...」
もうちょい後になりそうだ。と星一は心の中で思う。
「家はセナが作った」
すると星一は耳が聞こえないはずなのにピリィの声が聞こえた気がした。
「幻聴か?」
「幻聴じゃないよ。頭の中に直接話しかけてる」
星一はピリィの方を見ると口を開けて喋っている感じはなかった。
「頭の中?」
「そう。わちはいわゆるテレパシーが使えるの」
星一は目を見開き、汗を浮かべながらピリィを見つめる。
「竜はそんなこともできるのか」
「まあね」
ピリィは少しドヤっていた。
「耳が聞こえるようになったら、教えて。セナを呼ぶから」
「わかった」
星一は耳を塞ぎながら頭の中で返す。
ーー数分後。
「もう行けるぞ」
ピリィは頷き、家の方を見る。
すると家から仮面の人が出てきた。
仮面の人は星一の目の前に立つ。
「昨日は助けていただいたとピリィに書きました。本当にありがとうございます」
深く頭を下げてお礼を言う。
「私はドラセナと言います。ピリィはセナと呼んでいるので、言いやすい呼び方で呼んで欲しいです」
「ああ! 俺は西早星一。星一でいいよ!」
「...…星一さんですね」
ドラセナは星一の前に手を出す。
「握手です」
「あーそうゆう」
星一はドラセナがいきなり手を出し戸惑ったが握手と言われ、理解する。
二人は握手を交わし、ドラセナは星一をじっと見つめ、星一は不思議そうな顔をしている。
「ありがとうございます」
「なあ、俺たちどこかであったことあるか?」
星一は以前ドラセナと会ったことがあると直感でそう思った。
「いえ、初対面のはずですよ」
ドラセナは静かに返す。
「そうだよな!」
星一はニコッと笑って返し、思い違いだと思う。
「あの家はセナが作ったのか?」
「はい」
「どうやって?」
「具体的にはいえませんが、私の力です」
「じゃあ仮面を外してもらうことも無理か?」
「......はい」
「すいません......怪しいですよね......」
言葉通り星一は怪しいと思い、眉をひそめる。
だが、こうも思う。
「人間、隠したいことの一つや二つはあるもんだと思ってるから、気にすんなよ!」
「はい!」
ドラセナは、ホッとした声で返事をする。
「もし良ければですけど、この家に一緒に住みませんか?」
「いいのか!?」
予想外の提案だった。星一の残金は底をつきかけている状態での、この誘いに乗らない手は星一にはなかった。
「もちろん」
「じゃあお言葉に甘えて、住まわせてもらおうかな」
「話終わった?」
ピリィが割り込んでくる。
「ご飯食べたいんだけど!」
星一とドラセナはクスクス笑い合う。
「街にご飯食べに行こ!」
「いや、ツノ目立つって!」
街で竜が現れたらパニックになると思い、却下する。
「じゃあどうするの?」
ピリィの目は本気だった。
「俺がツノを隠せる帽子を買ってくるよ。だからちょっとだけ我慢してくれ」
ピリィが街に行けるように星一は新たな案を出す。
「わかった」
ピリィは理解する。
そして星一は街へ帽子を買いに走り出す。
こうして、星一の新たな生活が始まるのだった。




