19話:帰還
星一は、ギルドを出てすぐに山脈にある大穴を目指す。
迷宮には魔法師団のメンバーしか出入りできないと言われたが、そんなことは星一には関係なかった。
国が総力を上げて攻略に力を入れている割にはまだ一層も踏破できてないっておかしいと感じていた。魔法師団がそこまで強くないのか、迷宮がそれだけ厳しい場所なのか、星一の想像は膨らんでいく。
「まあ、着いてからのお楽しみだな」
星一はそう思いながら、街を見回し歩く。
街を抜け、国の門を通り過ぎてから森に入り、迷宮への期待を膨らませながらてくてく歩く。
「これか……」
森の中に突如として現れるように、その大穴は存在感を放つ。
「こんな穴があったのに、二ヶ月彷徨っても見つけられない俺って……」
星一は右手で顔を覆いながら自分の方向感覚をありえないほどに疑う。
星一は半径200mほどの大穴を一周するように歩き始める。
数日後に遠征があるって言ってたことから、流石に人の気配はない。でもこれどうやって入るんだ?
そう思いながら、歩いていると、階段らしきものを見つける。
「こっから入るのか?」
明らかに人工的に作られたであろう階段があった。
俺なら飛び降りることもできるけど、普通はここから降りてそうだな。
星一はそう思いながら、階段を降りていく。
100mほどの深さであり、地上の灯りは見えるほどである。
底につくと、洞窟の入り口のような穴が一つだけあった。
そこが迷宮の入り口だと、星一は直感で判断する。
中は、漫画や映画で見る迷宮って感じだな。これといって驚くようなところでもない。
すると魔獣の群れが前方から押し寄せてくる。
「めっちゃいるじゃん」
星一は、戦闘体勢に入り、先頭にいる魔獣が飛びかかってくるが、蹴りを一発いれる。
蹴られた魔獣は、まるでボーリングの玉のように吹っ飛び、後方にいた魔物達を薙ぎ払って行き、全滅するのだった。
星一は奥へ進む。魔獣を倒しながら1時間ほど歩くと、開けた空間に出る。目の前に巨大な扉が現れる。
「ボス部屋っぽいのが来たな!」
星一はテンションが上がり、中に入ろうとするが後方から、また魔獣の大群が押し寄せてくる。
はぁ。とため息をつき、先ほどと同じで先頭にある魔獣を吹き飛ばし、、後方を巻き込む攻撃で魔物達を倒す。
一体一体の強さは脅威じゃないが、まとめてこられるとめんどくさい。
魔法師団の遠征が大人数だったらここまでくるのに相当時間がかかるんじゃないか?
ラスカやマヤセレベルなら一人でも来れる。1層を攻略できてないのも、下のレベルに合わせて進んでるからなのか?
星一はここまで進んだことで、国がまだ攻略に時間をかけてる理由を考えていた。
まあ、いいか。と思い、扉を開ける。
中に入ると、そこには巨体で鎧を着たふとマッチョのような魔獣が座っていた。
「……ゴリラ?」
見た目はまさにそれにしか思えない見た目をしている。
その魔獣は、立ち上がり星一に向かってき、拳を振り下ろす。
星一は華麗に避け、魔獣の懐に入り込んだ。
足に力を入れて踏み込み、魔獣の顎目掛けて飛び、蹴り上げる。
蹴り上げられた魔獣は、天井を向き、朦朧としている。
星一は宙で一回転し、魔獣の右肩に踵を落とす。
鎧が砕け散り、地面が割れるほどの威力である。
「タフな奴だな」
魔獣は攻撃をモロに喰らっても倒れない。だが、魔獣にもう余力は残っていなかった。
「あいつの後ろに下に続く道があるな……」
やっぱり階層主かと星一は呟く。
動けない相手を攻撃することはしたくなかったが、星一は進むために、魔獣に近づいていく。
「悪いが倒すぜ」
星一は踏み込み、魔獣の腹を目掛けて蹴りをかます。
その威力はまるでサッカーボールがゴールネットに入ったように、鎧ごと貫いていた。
鎧は砕け散り、魔獣はその場で倒れる。
「ふぅ、これで一層クリアだな」
星一はそう呟きながら、奥にある道へと進みだす。
「やっぱり、下に続いてるのか」
体感まだまだ下に階層があると考えるが、1日でクリアするには無理がある。
「今日は2層を見て帰るか」
そう吐き捨てて、星一は迷宮の下へと進む。
道が平坦になり、2層に到着するが、風景は変わらず洞窟という印象である。
星一は歩きながら進んでいると、奥の方から騒がしい音が聞こえてくる。
「なんの音だ?」
奥から聞こえてくる音が気になり、星一は走って見にいく。
するとそこには魔獣の大群に襲われている二人組が居た。
二人はすでに満身創痍であり、抗う気力は残ってなさそうに見えた。
星一は石を拾い、魔獣達に目掛けて、投げる。
投げた石は、空を切るかのような速度と重さで飛び、それが石だとは到底思えないほどである。
その一撃で大半の魔獣は倒れ、残った魔獣は、恐れをなして、逃亡した。
「大丈夫かー!?」
星一は襲われていた二人にすぐさま駆け寄る。
一人はフードを深く被り、仮面をつけている。もう一人は、桃色の髪が特徴的で野生のような力強さを感じる少女だった。
「助かったよ!そろそろ力尽きるところだった」
桃色髪の少女は仮面の人を肩で担ぎながら感謝する。
「ああ! 見つけれてよかったよ!」
星一は二人を救えてホッとしている。
だがここで星一はあることを思い出す。
(どうゆうことだ?今俺が一層を攻略したばかりなのに、なぜ二人はここにいる?)
まあいいか、と難しい事は考えないことにした。
「俺は西早星一。二人は?」
星一は名乗り、二人に名前を聞く。
「そうか……あんたが!」
桃色髪の少女は嬉しそうにそう言って名を名乗る。
「ピリィだ!」
「ピリィか、いい名前だな!そっちの人は?」
「――お」
仮面の人はそう言って気を失う。
「お?」
「気絶しちゃった。ごめんだけど起きたら名前を聞いてほしい」
ピリィは星一にそうお願いをする。
「わかった……まずはここを出ようか!」
星一は二人と共に迷宮を出る提案をする。
「うん。早く出たいんだ」
ピリィの目は本気でここから出たがっており、いろんな目にあったんだなと星一は察した。
星一は来た道を戻るルートで案内をする。
星一は歩きながら、ピリィの頭に何かついているのが気になり、ツンツンと触る。
「なあ、これってなんだ?」
「ツノだ」
ピリィは自然に返す。
「ツノ!?」
「うん」
「なんでツノなんか生えてるんだよ!?」
星一は、この大陸にきて一番驚いた表情でピリィに問う。
「なんでって、私は竜だからな」
ピリィの口から衝撃の言葉が告げられる。
「りゅう?」




