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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 1章:学園
16/58

16話:嵐の子

 星一が街に出た後のことだ。


 フキはまだマヤセと鍛錬をしている。そこへ、星一との鍛錬を終えたフランがやってくる。


 「そっちはもう終わったのか?」


 「良い時間だったよ!」


 フランの声は、かなり嬉しそうだった。


 「じゃあ俺らも切り上げるか」


 フキは、鍛錬の終わりを告げた。


 「はい。お疲れ様でした!」


 マヤセはそう言って、フランと校内に歩く。

 

 鍛錬が終わり、学園を歩いていたフキは、騒がしいざわめきを耳にする。


 なんだ?と思い、人が集まっている方へ足を運ぶ。


 近づくと、ざわめきの中から断片的に言葉が聞こえてくる。


 「ひでぇ……」


 「あれが生徒会のやり方かよ……」


 フキは不安を覚えながら人垣をかき分ける。

 そして目に飛び込んできたのは――


 地面に倒れ、ズタボロの状態で息を荒げるミナの姿だった。


 「ミナっ!?」


 フキは慌てて駆け寄り、ミナを抱き起こす。服は破れ、腕や足は打撲と火傷のような跡もあった。フキの手にもミナの血がべっとりとつく。


 「しっかりしろ! 何があったんだ!?」


 ミナは薄く目を開き、フキの顔を確認する。

 震える唇からかすれた声が漏れる。


 「負け……ちゃった」


 「負け……? 一体誰に!」


 「……生徒会……長……ヘレン……ごめん……生徒会を……抜けることになった……」


 ミナは言葉を最後まで言い切れず、気を失ってしまう。

 

 「ミナ!!」

 フキはミナを抱き抱えて立ち上がって周囲を見渡す。


 「何でこんなことに?」


 フキはなぜこんなことになったか、周りにいた人に説明を求める。


 人垣の中から、一人の生徒が震え声で説明する。


 「生徒会で魔法の対決があったんです……内容は先生会メンバーと会長が戦うものです」


 「会長に認められたら、生徒会に残れる、負けたら脱退するルールで……」


 別の生徒が続ける。


 「でも……あんなの対決じゃない!開始と同時にヘレンが全力で襲いかかって……ミナさんは防戦一方で……降参しても攻撃をやめてなかった……」


 フキは奥歯を噛みしめ、怒りを抑えきれない。


 とても穏やかではない目をしている。


 フキはミナを抱えて、歩き出し、医務室へ連れて行く。


 フキはミナをベッドに横たえ、深呼吸もままならない彼女の顔を見つめる。

 ミナはまだ意識を取り戻さず、うわ言のようにフキの名前を呼ぶ。


 「フキ.....君.....ごめん....」


 「謝るなよ……悪いのはあいつだ」


 フキは心の中でそう思い、震えるミナの手を握り、そっと置く。


 フキは医務室を出て、学園の廊下を駆け抜けながら、すれ違った生徒に問う。


 「生徒会の塔はどこだ?」


 驚いた生徒はしどろもどろになりながら答える。


 「えっ!? あ、あそこをまっすぐ行って、中央広場を抜けた先……!」


 「ああ、ありがとう」


 フキはその場を離れ、全力疾走で駆ける。


 夕暮れ時、赤く染まる空を背に、生徒会の塔が威圧的にそびえ立っていた。


 「あれか……」


 フキは扉の前で立ち止まり、扉に手をかざす。

 扉越しに中を突風で埋め尽くす勢いで魔法を放つ。


 フキは、風を纏いながら中に入る。


 風の衝撃で生徒会役員達が集まり、ざわめき立つ。


 「ヘレンはどこだ?」


 フキは静かに問う。


 「何だあいつ!? 目が本気だ...」


 生徒会役員達がフキの圧に圧倒されている。


 すると正面にある大きな階段から足音が聞こえた。


 上階からゆったりと階段を降りてくる男。

 その足取りは余裕に満ち、笑みは冷たい。


 「騒がしいと思えば、俺の誘いを断った編入生じゃねぇか」


 ヘレンはフキを見下ろすように立ち止まり、薄く笑いながら問いかける。


 フキは拳を強く握りしめ、荒ぶる心を押さえ込むように深く息を吐く。


 声を荒げず、静かで力強い声で言い放つ。


 「あそこまでする必要はあったのか?」


 「あ?」


 「お前がミナを引き抜いたんだろ?実力がついてこなかったら、辞めさせるのか?」


 ヘレンの目が一瞬だけ細められる。


 フキはさらに踏み込むように続けた。


 「だったら……お前が俺に負けたら、生徒会長を辞めるんだな?」


 その場にいた役員たちが一斉にざわめく。


 ヘレンは一拍置いた後、愉快そうに口角を上げる。


 「ほう? 面白いことを言う」


 階段を降り切り、フキと対峙する。


 「新入りごときが、この俺様に勝てると思っているのか?」


 「勝つんじゃない、倒すんだ」


 ヘレンはしばらくフキを観察するように沈黙した後、不敵な笑みを浮かべる。


 「よかろう。貴様の無謀な挑戦……受けてやる」


 首を鳴らし、ヘレンは戦闘態勢に入る。


 「だが忘れるな――もし貴様が負ければ、お前は俺の下についてもらう」


 フキは一歩前に踏み出し、真っ直ぐに睨み返す。


 「望むところだ……!」


 二人の視線がぶつかり合い、その場の空気が張り詰めていく。


 「貴様の無謀、ここで終わらせてやろう」


 ヘレンは魔力を練り上げると、床のタイルが砕け散り、凄まじい熱気が吹き荒れる。


 だが――フキは一歩も動かない。

 その眼は、静かに燃えていた。


 「――消えろォォッ!!」


 ヘレンが先手を取って一気に詰め寄る。

 その拳には圧倒的な魔力が宿っていた。


 だが、フキは微動だにせず――星一の声が脳裏をよぎる。

 

 「簡単でいいんだよ。例えば魔力を右手に集中させて風を纏ったパンチとか」


 フキは拳に魔力を集中させる。


 「風穴!!」


 次の瞬間、フキの拳が閃光のように走り――ヘレンの懐に一撃を叩き込む。


 轟音と共に、ヘレンの巨体が床を滑り、壁に叩きつけられた。


 「なっ……嘘だろ……!?」


 「一撃で……会長が……!」


 その場にいた生徒会役員たちが震え上がる。


 フキは荒い呼吸を整えながら、

 倒れたヘレンにゆっくりと歩み寄る。


 ズタボロになったヘレンはまだ息があった。


 そんなヘレンの前にフキは立つ。


 「もうやめてくれ.....俺の負けだ...!」


 その言葉を聞いた瞬間、

フキの中で抑えていた感情が爆発する。


 「……ミナを……あんな目に遭わせて……!」


 拳を握りしめ、全身が震える。


 「ここで……お前を……終わらせるッ!!」


 フキは最後のパンチを振りかぶり――その拳が振り下ろされた。


 だが、その拳を受け止めている手が目の前にあった。


 フキが、前を見るとそこにはマヤセが立っていた。その瞳には強い意志が宿っている。


 「これ以上は……死んでしまいます!」


 「ヘレンはもう戦えません……!

どうか、頭を冷やしてください、フキさん!」


 フキはマヤセを見つめ、

しばらく震える拳を止められたまま、動けずにいた。


 やがて――フキは深く息を吐き、拳をゆっくりと下ろす。


 「この場は私が預かります。あなたがここで暴れ続ければ……フランや星一さんにも迷惑がかかります。」


 「……わかってる」


 フキは苦々しげに吐き捨てると、

その場を後にした。


 生徒会役員たちは圧倒され、誰一人声を上げられない。


 フキは自分のやったことを振り返りながら、考え、部屋に向かって歩いていく。

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