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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 1章:学園
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14話:極式

 今日もフキと星一は早朝に組み手をしている。


 「なかなか魔力の扱いが良くなっているぞ」


 「本当か! 毎日やってる甲斐があるよ〜」


 星一はフキの成長に目を細めた。

 焦らず、確実に強くなっている――その姿が嬉しかった。


 「そろそろ必殺技とか考えてみたら?」


 星一は技の提案をする。


 「技? 例えばどんなのを?」


 フキは技と聞いて、あまり考えが湧かなかった。


 「簡単でいいんだよ。例えば魔力を右手に集中させて風を纏ったパンチとか」


 「それならできそうだ!」


 フキは、その技をやっていることを頭で想像し、かっこいいなと思っている。


 「技名はいるよな〜」


 星一は腕を組んで頭を回しながら考え出す。


 「ウィンドパンチは?」


 「ダサい」


  フキは撃沈した。だが、次の瞬間、星一が閃いたように表情が明るくなった。


 「決めた!風穴かざあなとかどうだ?」


 考え出した渾身の技名を発表した。


 「かっこいい......かっこいいなそれ!」


 その技名を聞きフキは、その名前をもらうことにする。


 技の話が終わり、星一は真剣な眼差しで言う。


 「魔力コントロールもできるようになってきてるから、これから極式を教える!」

 

 「極式?」


 「まあ、教えるというより知っててほしいだな」


 ほう、という面持ちでフキは星一の話を聞く。


 「フキは戦う時100%の力を出して戦っているか?」


 「ああ!俺はいつだって本気だ!」


 「だろうな。でも......人の脳ってのは厄介で身体を壊さないために無意識に制御をかけてる」


 実際に本気を出していると思っても、人間は80%くらいしか自分の力を発揮することしかできない。


 フキは愕然とする。


 「じゃあ、俺は本気の力を出せてないってことか?」


 「そうゆうことだ。極式はその制御を一時的にに外し、100%以上の力を解放する状態のことだ」


 「極式を見せてくれるのか?」


 ここまでの説明で、フキは極式というものが見たくなった。


 「いや、それは無理だ。極式はやろうと思ってできるものじゃない。極式に至るには、自分が本気で死ぬと思った時だけだ」


 「でも、俺は山脈で死ぬと思ったよ?」


 「あの時のフキは魔力が殆どなかったから無理だったんだよ」


 「そーゆんもんなのか」


 「俺たち魔術師は、命のやり取りを何度もしてきた。だから極式に至るやつは結構いた」


 フキはその言葉を重く受け止める。


 「極式に至るって自分でわかるものなのか?」


 「わかるよ。普段の魔力は白、いや透明に近い淡い光をしてるだろ。でも、極式に至ると魔力が燃え盛る炎のように赤くなる」


 「赤く?」


 「実際に極式を経験すればわかるよ」


 「それに一度極式に入ると、自然と次は入りやすくなる。そうだな、ペットボトルの最初の蓋みたいなもんだ」

 

 「ペットボトル?」


 フキは初めて聞いた言葉だった。


 「そうか...こっちには無かったな。じゃあ映画とかも知らないのか」

 

 フキは、星一から出る未知のものに対し、興奮している。


 「いつか見せてやるよ」と言い、星一は極式の説明を終えた。


 質問!とフキは言って、星一に聞く。


 「じゃあ、極式に至ると100%の力を発揮できるのは分かったけど他に変化はあるのか?」


 「魔道士の極式は見たことないからわからないけど、魔術師の場合は、触れなくても魔術を与えられるようになる」


 「え!? それって最強過ぎない?」


 フキは驚愕しながらゴクリと唾を飲む。


 「まあな。でも極式には代償もあるから万能ってわけじゃない」


 「難しいものなんだな」


 フキは、自分が極式に至ることができるのか少し不安になる。


 「大丈夫だ! いずれ体現するよ!」


 フキは星一のその言葉で元気を取り戻し、二人は授業に向かう。


 **************


 授業を終えた二人は、食堂で昼食を取っている。


 「星一ってさ、魔術師の中じゃ何番目くらいに強いんだ?」


 フキは肉を頬張りながら、星一と話す。


 星一は唸りながら頭の中で数える。


 「んー。10番目くらいじゃない?」


 フキは目を見開き絶句する。


 「星一で10番目!? あと9人も上がいるのかよ...」


 「あっちは、化け物みたいな奴がウジャウジャいるとこなんだよ。俺一人じゃ戦況は覆せない。だから仲間を集めに来たんだ」


 星一はスープを飲みながら答える。


 フキは改めて星一が背負っている使命の重さを感じ、拳を握りしめる。


 「実は、10年前にも魔術師が協力者を探しにここに来てるんだ」


 星一たち魔術師がこの大陸の存在を知ることができたのは、10年前に来た人の証言があったからである。


 「え!? 星一が一人目じゃないのか!?」


 フキは一瞬氷のように固まる。


 「違うよ。名前は確か......春山響(はるやまひびき)だったかな」


 「じゃあその春山さんが何人か連れて帰ってきたの?」


 「いや、春山さんは帰ってこなかったんだ」


 10年帰ってこないということは、何かハプニングがあったのかもしれないし、下手したら死んでいるかもしれない。


 「すぐに助けに来なかったのか?」


 「この大陸に来るだけの魔力が貯まるのに10年かかったから、その10年後に俺がきた」


 再度人員を送り込むか議論されたが、魔術師たちの人員不足解決には魔道士の力を借りる以外の手段がなかった。


 「そっか......」


 二人は食事と話を終え、マヤセとフランとの訓練にそれぞれ向かった。

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