12話:ペア授業
ペアの授業を行うにあたり、生徒たちは国を出てすぐの森に集められた。
生徒達は立ち並ぶ先生の前に密集して、話が始まるのを待っていた。
「マヤセが来たし、行ってくるよ」
フキは星一にそう言って、マヤセと合流しに行く。
「フランは〜あ、いた!」
星一はフランを見つけ、走って側に駆け寄る。
「昨日はどっか行っちゃうから、心配してたんだぞ」
「心配する必要はないです、私はあなたをペアとして認めてないので」
フランはそう言って口を閉じ、星一から離れるように距離を取る。
二人の間には緊迫した空気感が漂う。
星一は打ち解けるためにも、フランの腰に刺してる剣について触れた。
「フランは剣で戦うのか?」
フランは星一を横目でじっと見つめ、質問に答える。
「剣を持ってるってことは、剣を使うってことでしょ」
「……そうだな」
星一がフランと次何を話すか考えている時、先生達が授業の説明を始めた。
「今回の授業では、この近くに生息するコーナーポークという四足歩行型の魔獣のツノを持って帰ってくることだ!」
ツノを持って帰ってくるということは魔獣を倒す必要はないということだが、そう簡単な話ではない。
「ペアで協力し、5着以内にツノを持ってきたペアには特別点を授けることとなっている」
説明は終わり、生徒達は開始の合図を待つ。
「はじめっ!」
生徒達は一斉に森に足を踏み入れていく。
「魔獣を見つけたら俺が囮になるからその隙にツノを落としてくれ」
星一はフランに作戦を伝える。
「あなたの力は借りません」
フランはそう言い放って、一人で森に入っていく。
「おい、マジかよ...…」
星一はため息をこぼし、フランを追う。
フランは、森を直線に走っていると、ツノの生えた魔獣が、前を横切る。
「あれだ!」
コーナーポークはフランが視界に入ってすぐに、突進してくる。
フランは剣を構え、突進してくるコーナーポークのツノを目掛けて切り込む。
ツノと剣の触れ合う衝撃で互いに弾かれ合い、後退する。コーナーポークは前を向き、攻撃を続けようとするが、フランはいなかった。
コーナーポークはその場で立ちまり、首を振ってフランを探している。
「ここだぁー!」
フランは木の上に飛び乗っており、落下の勢いを利用し、コーナーポークのツノを叩っ切る。
ツノを失ったコーナーポークは後退し、森に逃げていく。
「やった!私一人でもやれるんだ!」
そう胸の内で思い、勝利を喜ぶフランはツノを拾う。
フランはツノを先生達のところへ持って行こうとするが――後ろから攻撃が迫っていることに気づいていなかった。
後ろからの炎魔法での攻撃をフランはモロに喰らい、木に叩きつけられたフランはツノを落とす。
そこに二人組の生徒が現れる。
「悪いがルール違反じゃねぇんだよ。この試験」
炎の魔法を放った男がそう言う。
そして、もう一人の少年が素早くツノを拾い上げる。
「返してっ……これは私が!」
フランは立ち上がり、ツノを取り返すべく立ち向かう。
ツノを拾った少年が、掌からサッカーボールほどの岩を放出し、フランの胸に直撃する。
「グッ……!」
フランは、木に打ち付けられたように吹っ飛び、頭が割れるような痛みを感じながら血を吐く。
だが、フランは諦めていなかった。震える足で再び立ち上がり、剣を握りしめる。
「もういいだろ……何を必死になってやがる」
「それは……私のだ!」
「魔法も使えないやつが何を偉そうに!」
炎の少年は、魔法を放つ構えをとる。
「魔法が使えない王女様は、おとなしく王城で人形でもやってろよ!」
ツノを拾った少年もフランを馬鹿にし、二人はフランを嘲笑う。
フランは唇を噛み、悔しさで震えながら涙を流す。
「私は……ラスカ姉さんみたいに……」
「お前じゃ無理だ! ラスカ様のようになるなんて夢のまた夢だ!」
フランは剣を構え、闘士のみなぎる目で相手を見据える。
「じゃあ焼かれてろ!」
炎魔法がフランを焼き尽くそうとした瞬間、星一が横から現れ、魔法を素手で受け止める。
「……え?」
フランは目の前で起きたことが信じられず、その場で倒れ込む。
「なんだこいつ!?」
自分の魔法を塞がれ、少年は驚愕している。
星一は倒れ込むフランの前にしゃがみ込む。
「一人で突っ走るなよ」
星一は叱るが、声はどこか優しい。
「....っ.....でも....私だって、できるって....証明したくて....!」
「証明する相手は俺じゃないはずだ。お前が一番わかってるだろ?」
フランは言葉が出てこなかった。
「後は任せろ」
星一は立ち上がり、二人の少年を睨みつけ、低い声で吐き捨てる。
「お前ら、フランを散々笑ってたな……」
「あ?」
「お前らに、フランを笑う資格はねぇよ」
「はぁ? 王族なのに、魔法も使えない無能だろ、コイツは!」
「じゃあ聞くけどさ。お前らなら、ここまで必死に足掻いて見せられたか?」
一瞬、相手は言葉を失う。
「生まれた時から才能や環境に恵まれたから、魔法が使えるんだろ? じゃあもしその才能がなかったら、お前らは、ここまで戦えたか?フランはな..….才能がないって烙印を押されても、それでも戦うって決めたんだ! その覚悟を笑うな!」
フランは震える唇を噛み締め、泣きながら星一の背中を見つめる。
「うるせぇぇ!」
「調子に乗るなぁ!」
二人の少年は、怒り、魔法を放つ。
星一は周囲を確認してから、向かってくる魔法を空に蹴飛ばし、一瞬で二人を地面に叩き伏せた。
星一の完全勝利であった。
そして、星一はフランに手を差し伸べる。
「立てるか?」
「うん……」
「お前がここまで必死なことは、ちゃんと伝わったよ。もう一人で抱え込むな」
フランは涙を流しながら、初めて星一に素直な気持ちを打ち明ける。
「……教えて、私は強くなれるかな?」
「うん。フランは必ず強くなる」




