11話:比較
二人は歴史の授業に出席している。
フキは真剣に授業に取り組み、星一は退屈そうにしていた。
年老いた教授が色々と話している。
「100年前について話そう。このメルベリア王国は、100年前に滅亡の危機に瀕していた。だが、今この国はある。では、どうやってその危機を乗り越えたと思う?」
生徒に答えさせるタイプといういかにもめんどくさい授業だ。星一は指名されないことを心の中で願っていた。
「誰が分かるものはいるか?」
フキは挙手し、堂々と話し出す。
「ナギです」
100年前——この国の南にエリア帝国という武力国家があり、メルベリアは大きな侵攻を受けた。
「その通りだ。ではナギはどうやってこの国の危機を脱したと思う?」
その問いにフキは今まで読んだ文献を記憶の底から漁り出す。
「……圧倒的な風魔法」
滅ぶかに思われたメルベリアは、わずか15歳の少女一人の手によって、エリア帝国は一夜にして壊滅状態に陥いる。
「ナギが風の魔法を操るのは有名な話だ。だがはたして、風魔法だけで一国を落とせるものなのか?」
ナギの圧倒的な風魔法により、帝国の侵攻は止まり、メルベリアは歴史から消えることなく今も存続している。
「本当にたった1人だったのか、他に協力者がいたのか、その真相はわかっていない。だが、ナギ・ヴォルスーンによってこの国は明日を迎えることができる」
「星一、この授業とって良かっただろ?」
「えっ? あ、あぁ……」
この授業が楽しくて仕方がないフキは、星一に共感を求めた。
「歴史好きすぎだろ……」
星一は故郷の歴史とは違って、ファンタジーすぎる話についていけなかった。フキの楽しそうな表情を横目で見て、呆れながら少し微笑む。
「もし仮に1人だったとしたら、その強さは――今を生きる魔道士じゃ到底辿り着けるものではないとさる。、エレメントマスターと関係があるのではと考えられているが、未だ研究中である。しかし、有力とされている説がある。500年前の歴史はあまり残されていないが、人間、魔族、竜族、妖精族の四種族がこの世界に存在したとされている。ナギは混血、ないしは人間以外の種族ではなかったのかと囁かれているが、真相はわからないままだ」
教授のスイッチが完全に入り、生徒を置いてけぼりの授業になっているが、フキは目を輝かせ話を聞いている。
ここでチャイムが鳴る。
「もう終わりー!? もっと聞いていたかったよ」
フキは楽しい時間が終わり、少し悲しむ。
「話聞いてたのお前だけだったよ」
星一は机に肘をつけながら言う。
授業が終わり、ペア訓練の時間がやってきた。
二人はマヤセ、フランと合流し、別々に訓練を開始する。
「じゃあ始めようか!」
フキはマヤセに訓練の始まりを告げる。
「はい! 先輩!」
後輩らしく元気のいい声でマヤセは返事をした。
「俺は細かいことは教えられないから、実践をメインでやろうと思う」
フキはこれからの訓練の軸を説明する。
「マヤセはどんな魔法を使うの?」
「私は風の魔法を使います!」
「お、俺も風の魔法だ!」
マヤセと魔法が一緒でフキは少し嬉しくなったが、ナギが風魔法なら当たり前か。
「なら何か新しい発見があるかもしれませんね!」
マヤセは可愛らしい笑顔でそう言う。
「よし! 組み手からやろうか。遠慮はいらないから、かかってきて!」
「はい! 全力で行きます!!」
フキとマヤセの訓練が始まった。
一方星一とフランの訓練はまだ始まっておらず、二人は話をしている。
「星一さんはどんな魔法を使うんですか?」
腰に剣を下げたフランは星一の魔法について聞いてきた。
「ん? 俺は魔法は使えないよ」
その言葉を聞き、フランの目は絶望したかのように暗くなる。
「……なら、星一さんに教わることは何もありません。私は一人で鍛錬します」
そう吐き捨ててフランは星一の前から去っていく。
「えー...…まだ始まってもなくねー」
星一は困惑し、なぜこうなったかわからなかった。
フランのことを知る必要があると感じた星一は、マヤセにフランのことを聞きに行くことにした。
フキとマヤセのところに行くと、フキがマヤセにボコボコにされていた。
「何があった。フキさん」
横たわっているフキに星一は声をかける。
「マヤセと...組み手を...してて...」
「遠慮はいらないって言われたんで、思いっきりいっちゃいました!」
マヤセは、後ろに手を組みながら笑顔で言う。
「やられたのね..….」
星一は明日から厳しく行くぞと言わんばかりの目でフキを見つめる。
「星一さんはなぜここに?フランは?」
「いやぁ〜それが...…」
星一はマヤセにさっきのことを話す。
「そうゆうことですか...」
マヤセはフランをわかってるように呟く。
「フランのことを教えてくれないか?」
星一は真剣な眼差しでマヤセを見つめる。
「わかりました..….」
マヤセは少し考えてから返事をした。
「フランは、王女だから目立つ人って思ってるかもしれませんが、フランは、悪い意味で目立ってしまっているのです」
「悪い意味?」
「フランは王族ながら魔法が使えません」
二人はその言葉を聞き、目を見開いて驚く。
「だから、周りからは王族として見られていません。それに加えてフランのお姉さんは国を率いるほどの魔道士です」
フランは天才と謳われるお姉さんと比較される毎日を過ごしてきたのだった。
「でも、フランは諦めてないんです。いつか魔法を使えるようになって、今まで蔑んできた奴らを見返すために、お姉さんと肩を並べるために、日々鍛錬を続けています」
「………」
「今回のペア制度で、魔法を使える人に色々教えてもらえると、フランは楽しみにしていたんですが...…星一さんが魔法を使えないと知って、教わることはないと判断したんでしょう」
「そっか...」
星一はその話を聞いて、可哀想よりもなんとかしてやりたいという気持ちが込み上げてくる。
「ありがとう!なんとなくフランのことがわかったよ」
「お役に立てたなら何よりです!」
マヤセは星一になら任せても良いと言う顔をしている。
「明日はペアで授業があるので、ちゃんと仲直りしてくださいよ!!」
「ああ!ちゃんと向き合う覚悟はできてるよ」
星一はそう言ってその場を跡にする。
その後、フランを探すも見つからず、明日のペア授業の日を迎える。




