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ダブルワールド  作者: 東城陽一
第一部 魔法編 1章:学園
10/60

10話:魔法と魔術

 マヤセは2人と顔合わせを済ませて学園の廊下を歩いていた。顔を少し下げて腑に落ちない様子だった。


 「二人ともいい人そうで良かった。でも、星一さんは魔法が使えないって聞いていたのに……」


 マヤセは星一から感じる異質な空気に違和感を感じていた。


 「あれは、魔法を使えない人が出せるような圧じゃない。もっと別の……もしかしたら、魔法を使えるフキさんより...いや、私より強いのかもしれない」


 これまで出会った中でも異質――だが、邪悪さは感じない。


 ほんの少し首を振り、考えすぎてると自分を言い聞かせた。しかし、心の底では違和感は消えないままだった。


 ******************


 朝が来る。


 星一とフキは早朝訓練で組み手をしていた。


 「少し休憩をしよう!」


 星一はそう言って、その場に座る。


 フキは息を切らし、汗を浮かべながらその場で仰向けに寝ている。


 星一は、手のひらを見つめ、真剣な口調で話す。


 「ここに来てわかったことがいくつかあるから話そう」


 フキは状態を起こし、体を向けて話を聞く姿勢をとる。


 「まず、なぜこの大陸の人たちには全員魔力が流れてると思う?」


 フキは首を傾げる。


 「それは...…生まれつきだから、じゃないのか?」


 星一は軽く首を振り、一晩考えて出した結論を話す。


 「この大陸の空気中には、ものすごく濃い魔力が満ちている。ここの人たちは、幼い頃からこの空気を吸って、成長とともに体が魔力に適応していく...その結果――誰もが魔力を持つ体になると俺は考えた」


 フキは目を丸くする。


 「じゃあ...…俺たちは知らないうちに魔力を取り込んでたってことか?」


 「そうゆうことになる。でも魔法を使えない人がいることに関しては、俺は環境とセンスが関係すると思う。まぁこれは憶測だけど、魔法の才能があっても環境次第で発現の有無は変わってくるってことさ」


 フキは自分の胸に手を当て、少し複雑な表情を浮かべる。


 「だから..….魔法を使える人は一部なんだな」

 

 星一は一呼吸置き、鋭い目でフキを見据える。


 「これまでの組み手と編入試験でフキの魔法を見て確信した。魔法と俺たち魔術師が使う魔術は、根本から仕組みが違う」


 「どう違うんだ?」


 ついに魔術について触れ出した星一に対して、フキは思わず身を乗り出す。


 星一は身振り手振りしながら、考えを語り始めた。


 「魔法は、身体中に巡る魔力を外へ放出し、それを風や炎などに変換して顕現させる力だ。つまり、体内の魔力を燃料にして、自然の力へと変換するんだ」


 フキは、自分の手に風を集め、小さな突風を生み出してみせる。


 「なるほど..….これが俺たち魔道士の魔法ってわけだな」


 星一は今度、自分の掌を見つめながら静かに語る。


 「対して魔術は--基本的に、目に見えない力を操る術だ。魔力を風や炎に変換するのではなく、魔力そのものを消費して現象を起こす」


 フキは混乱したように眉をひそめる。


 「魔力を消費? じゃあ魔術って魔力が尽きると使えなくなるのか?」


 星一は頷く。


 「魔力が尽きると使えなくなるのは魔法も同じはずだ」


 フキは自分の知らない知識を、目の前に目を輝かせている。


 「魔術は魔力の消費が大きい分、一撃の威力や効果が桁違いになる。だから500年前に1人で5人のエレメントマスターを倒した魔術師はよほど強力な魔術を持ってたんだろうな」


 フキはその言葉を聞いて、ゴクリと唾を飲み込む。


 「....…やっぱり、魔術師ってすげぇんだな!」


星一は淡い笑みを浮かべながらも、どこか寂しげな声で呟く。


 「すごい..….か。俺たちの大陸では魔術師の生存率は低いし、ここでもその凄さが恐れられてるんだろ?」


 フキは自分が魔術に対して興味があるだけで、普通の人は魔術師を恐れていることを忘れていた。それに、余計なことを言ってしまったのかもしれない。


 「...ごめん」


 「いや、全然大丈夫だよ」


 星一はフキにニコッとする。


 フキは少しホッとし、星一に質問する。


 「星一はどんな魔術を使うんだ?」


 「それはねぇ、俺との組み手で使わせれるようになったら教えてあげるよ!」


 フキはムッとして肩をすくめる。


 「なんだよ、それ...もったいぶってー」


 星一はフッと笑う。


 星一は話題を切り替え、地面に枝で簡単な図を描き始めた。そこには二人の棒人間と矢印が描かれる。

 

 「じゃあ代わりに、戦闘における魔法と魔術の違いを教えよう」


 「フキ、魔法ってどうやって攻撃する?」


 フキは考えるまでもなく答える。


 「そりゃあ風とか炎を飛ばして、遠くから攻撃するだろ」


 「その通り。魔法は遠距離攻撃が可能なんだ」


 星一は図に長い矢印を描き、棒人間の間を大きく離す。


 「でも、魔術は違う。魔力を変換しないから飛ばすことができないんだ」


 フキは首を傾げる。


 「じゃあどうやって攻撃するんだ?」


 星一は自分の掌を見せ、拳を握る。


 「魔術は効果を直接与えることで発動する。つまり、相手に触れない限り攻撃が成立しないんだ」


 フキは驚きに目を見開く。


 「え!? じゃあ.…..至近距離で戦うしかないってことか!?」


 「そうゆうこと。魔術師はどれだけ早く、的確に相手へ触れるかが全てだ。だから魔術は超近接戦闘向きなんだ」


 星一は地面に二人の棒人間を描き、その間をほぼゼロ距離で重ね合わせる。


 「まあでも例外は何人かいる。魔術を飛ばすことはできないけど、自分自身を強化する魔術であったり、武器を出したりする奴もいる」


 フキは魔術というこれまで求めていた情報知り、星一魔術が見たくてうずうずしてる。


 「星一に魔術を使わせるくらい頑張るよ!!」


 星一はその決意を楽しげに見つめ、頷いた。


 「いい目だ! 君が本気でここまで来れば...…俺も全力で応えよう」


 二人は話に夢中で、点呼の時間がもう迫っていることに気づいていなかった。


「話しすぎたな……」


 「今日はここまでにしよう」


 星一は早朝訓練の終わりを告げる。


 「勉強になったよ」


 二人は寮に戻り、点呼を終え、授業に向かう。


 「授業の後ってペアで鍛錬だよな」


 星一はフキに歩きながら聞く。


 「そうだよ! 今日から当分の間はペアの鍛錬の時間が多くなる」


 何を教えるか悩む星一であった。


 フキも自分が何か教えれるのか急に心配になるが、互いにノープランなことを知り、二人は見つめ合って笑う。


 「その時になってから考えるか!」

 

 と言いつつも星一はフランの魔力の使い方次第では、フキと同じことを叩き込むつもりでいた。


 「それがいい!」


 フキもそれに同調する。


 こうして授業に出席するのであった。

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