援軍到着
戦闘による全域の混乱と空域の封鎖に巻き込まれ、俺たちの到着は大幅に遅れていた。
本来なら、昼前にはこの福岡第二基地に足を踏み入れているはずだったのだが……。
「中山、今回のこれは……かなり酷いぞ」
並んで歩く桜木が、吐き捨てるように低く呟いた。
基地へ足を踏み入れた瞬間に飛び込んできたのは、凄惨という言葉すら生ぬるい地獄絵図だった。
次々と担架で運ばれてくる、全身血塗れの負傷者たち。神力を使い果たし、限界を超えた現実へと叩き落とされて死んだような目を浮かべる兵士たち。
幾多の死線を潜り抜けてきた俺たちでさえ一瞬言葉を失うほどの激しさが、その惨状から嫌というほど伝わって来た。
すぐに作戦室へと向かい、現時点での状況の共有を受ける。
殺気立った室内を見渡すと、そこにはかつて士官学校で教えた教え子の一人が、参謀として青ざめた顔で指示を飛ばしていた。
「そうか……状況は分かった。俺と桜木、それに関は、まだ動ける残りのメンバーを率いて出る。適当に編制を組んでくれ。お前たちは……」
俺の視線の先には、あの立川での惨劇を生き延び、今もなお戦場に残る元生徒たちの姿があった。
あの地獄を乗り越えてきた連中だ。このメンバーなら、一つの独立した頼もしい部隊として前線へ送り出せる。俺たちは手際よく出撃の手続きを進めていった。
小早は以前、「中山教官と桜木教官のお二人だけで十分です」と強がりを言っていた。
だが、それが小早なりの強がりであり、これ以上誰かを巻き込みたくないという悲痛な防衛本能から出た言葉だということくらい、俺には最初からお見通しだった。
——『あの世代の立川出身者を見たら、生き残りだと思え』
それは今や、軍の中で都市伝説のように囁かれている言葉だ。
それほどまでに、あの日の襲撃で多くの若く尊い生徒たちが命を落とした。だが……あの地獄を生き延び、今なお軍にとどまり続けている者たちの錬度と覚悟は、やはり他の兵士たちとは根本から一線を画している。
いま司令部で死人のような青い顔をしながら必死に指揮を執っている教え子にも、そしてどこかで無理を重ねているであろう小早にも……ほんの少しでいい、俺たちの存在で安心させてやりたかったというのが、俺の本音だった。
「よし、出撃の準備を急げ。……俺は一旦ここに残り、神力の回復を待っているメンバーをまとめて後から追いかける」
桜木たちを先発隊として前線へ送り出し、俺は残された負傷兵たちの待機所へと視線を向けた。
胸の奥に拭い去れない嫌な予感を抱えたまま、俺は拳を強く握りしめた。




