援護要請
ふと、昼間に大佐と交わした会話を思い出す。
大佐の話によれば、新潟付近でも大型の戦闘が発生しており、東日本からの応援を回すのは厳しい状況らしい。
となれば、立川基地のメイン戦力は新潟へ派遣されることになるが、一部はここ福岡第二基地にも割かれるはずだった。
そこで私は、その場で立川基地の中山教官へ直接連絡を取らせてもらった。
『もしもし、小早か?』
「教官、新潟の件を聞きました」
『あぁ……今、中山隊の立川待機メンバーを、九州と新潟に振り分けているところだ』
「教官ご自身は、ずっと立川に待機されるおつもりですか?」
『いや。桜木と俺、それに若手の教官陣は、教官であると同時に現役の兵士でもあるからな。いずれどちらかの現場へ派遣されることになる』
通信越しに聞こえる教官の声に、私は意を決して切り出した。
「……私情だと分かっているのですが、一つお願いがあります」
『どうした?』
「桜木教官と中山教官のお二人を、福岡第二基地へ派遣していただけませんか?」
一瞬の沈黙の後、教官が低く問いかけてきた。
『……理由は?』
「福岡第二の現状を見る限り、明らかに実戦経験の少ない者ばかりです。士官学校出身者も同様です。だからこそ、経験豊富な実戦派のお二人を臨時の隊長として組み込むことができれば、例え隊員の経験が浅くても、無駄な被害や死者を減らせるかと」
自らの経験と参謀としての冷徹な分析に基づいた進言。
教官は受話器の向こうで短く息を吐き出すと、納得したように呟いた。
『俺と桜木だけでいいのか?』
「はい、十分です」
『確かに、立川からは新潟の方へ主力を送ることになっているからな。福岡第二に誰を派遣すべきか悩んでいたところだ。……よし、上層部に進言してみよう。そちらの世田大佐にも確認を取らなければならんが』
「あ、世田大佐なら今お隣にいらっしゃいます。代わりますね」
受話器を大佐に手渡す。大佐はそれを受け取ると、落ち着いた声で話し始めた。
「中山中佐、あなたと桜木中佐の噂はかねがね。こちらとしても、お二人が来てくださるならこれほど有り難いことはない。……なに、そちらの基地の大佐には私からを通しておこう。なにせ士官学校時代の同期だからな。……あぁ、よろしく頼む。失礼する」
通話を終えた大佐は受話器を置くと、私に向かって優しく頷いてくれた。
「王子、大丈夫そうだ。二人とも福岡第二へ来てくれることになった。……それと、明光隊の面々は実戦経験がない。これまではシミュレーションでしか動けていないんだ。だから……頼んだぞ」
「はい。全員、無事に生還させます」
力強く答えたものの、22:00の出撃が刻一刻と迫るにつれ、胸の奥から押し寄せる緊張感は消えなかった。




