カミングアウト
全体ミーティングの場にその事実が告げられた瞬間、会議室の空気が目に見えて引き締まり、全員の顔に動揺と驚きが走った。
彼女たちが実戦を経験するのは、これが初めてだ。
民兵上がりのこの隊が前線に駆り出されるという現実——それは、各地の正規軍や基地の人手がどれほど深刻に不足しているかを暗に物語っていた。
重苦しい沈黙の中、相原先輩が咳払いをして口を開いた。
「……ここで小早から、誰が出撃組に派遣されるかを発表してもらおうと思う」
「はい」
私は一歩前へ出ると、全員の視線をしっかりと受け止めながら、あらかじめ頭の中で組み上げた布陣を読み上げた。
「この度は、この布陣で行こうと思います」
【出撃(海上迎撃隊)】
隊長:相原 桜花 軍曹
隊員:王子 小早 中尉、片倉 紫陽 上等兵、南野 楓 一等兵
【待機(基地防衛隊)】
* 隊長:鴨居 李子 伍長
* 隊員:菊名 桃菜 伍長、成瀬 夏純 二等兵
案の定、読み上げ終わると同時に室内がざわつき始めた。
そりゃそうだ。この隊で最大の攻撃力を誇る菊名先輩を外し、攻撃手は相原先輩しかいないのだから。
ざわつくみんなを制するように、私は淡々と理由を説明していった。
「菊名伍長を待機にしたのは、基地の防衛が手薄になるのを防ぐためです。万が一、海上の迎撃を網の目を潜り抜けて基地に敵が迫った場合、副隊長である鴨居伍長に現場の判断を委ねなければなりません。そこに菊名伍長の火力が不可欠です」
菊名先輩が眉をひそめつつも、自分の役割の重要性を理解したように口を噤む。
「また、南野一等兵を出撃に同行させるのは、過酷な前線において貴重な衛生手を確保するためです。基地側であれば、非常時には後方の駐屯病院から看護兵が駆けつけることができます。そして——」
私は一度言葉を切り、まっすぐ全員を見渡した。
「私、王子小早は、攻撃手として出撃組に組み込みました」
「……攻撃手!?」
相原先輩が思わず素声をあげた。
事前に二分割の案は伝えていたものの、私自身の役割(専門)までは教えていなかったため、驚くのも当然だった。
「はい。自分は……『両刀手』ですので」
その言葉に、会議室は先ほど以上の静寂とザワつきに包まれた。
両刀手——攻撃と援護の両方の神力適性を持ち、状況に応じてどちらの立ち回りもこなせる規格外の存在。立川基地の士官学校ですら一学年にひとりいるかどうかという激レアな存在だ。民兵として生きてきた彼女たちが、本物の両刀手に出会ったことなど一度もないだろう。
「どちらかと言えば援護手が得意なので、これまでは援護に回ることが多く……また、士官学校時代の教官が援護手だったこともあり、参謀・援護手として各地に派遣されていただけです。実際の現場では、攻撃手が足りないことよりも、優秀な援護手が不足していることの方が圧倒的に多かったですから」
自虐でも誇張でもない事実を語ると、隊員たちはゴクリと息を飲み、私の存在を「ただの年下の中尉」ではなく、死地を潜り抜けてきた「本物の幹部候補生卒」として再認識したようだった。
「出撃は今晩22:00。19:00に一度各地の応援部隊と共に本部に集まり、合同ミーティングを行います。……以上です」
頭を下げて説明を終えると、誰も反対の声をあげる者は気圧されていなかった。
控室へ戻り、自前の飛行装備の点検を始める。
指先を動かしながら、ふと自分の手が微かに震えていることに気づいた。
幹部候補生学校を卒業し、無数の訓練を積んできた私でさえ、本物の命がけの戦闘の前には、こうして体が自然と震えてしまう。
安宅くん……関……。
死んでしまったリーダーと、遠い立川で戦っているライバルの顔を思い浮かべる。
指先の震えを隠すように強く拳を握りしめ、私は今夜の決戦に向けて深く静かに息を吐き出した。




