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非番明け

非番が明け、早朝のひんやりとした空気が明光隊の拠点全体を包み込んでいた。

昨日の私服での北九州散策から一転、私は福岡第二基地の制服へ身を包み、身だしなみを整える。

すでに早朝の基礎訓練は終えているが、今日からは再び「明光隊の巡業隊員」として、彼女たちの訓練と実戦任務に立ち会わなければならない。

朝食の時間、食堂へ向かうと、昨夜の非番でリフレッシュした様子の先輩たちが集まっていた。

「あ、王子! おはようー!」

「おはようございます、菊名先輩」

元気よく声をかけてくる菊名先輩に軽く会釈を返す。相原先輩や鴨居先輩も揃っており、すでに本日のスケジュールについての会話が交わされていた。

「よし、全員揃ったね! 今日の午前は昨日話した通り、集団での陣形・連携の再確認。そして午後からは、北九州上空の警戒ルートでの実戦的パトロールを行うよ!」

隊長の相原先輩が力強く宣言する。

午前の訓練は、昨日のシミュレーションで露呈した「攻撃手の暴走」と「援護手のキャパオーバー」をどこまで修正できるかが課題だった。


――屋外訓練場。

「菊名! 前に出過ぎ! 李子のカバーが届いてない!」

「分かってるって! でもこのスピードで叩かないと押し切られる!」

上空で交錯する相原先輩と菊名先輩の叫び声。

予想通り、菊名先輩の突進癖と相原先輩の強気な立ち回りは、民兵上がりの癖として深く染み付いてしまっている。そのため、後方でシールドを展開する鴨居先輩と片倉先輩の負荷が跳ね上がり、神力消費が目に見えて激しくなっていた。

やっぱり、根強いな……

私は指示された通り、成瀬(夏純)の斜め後方で最小限の神力を散らし、飛来する模擬弾を最小の動作で弾き落としていく。

「夏純、そのまま前線の二人とラインを平行に保って。焦って前へ出ると、鴨居先輩のシールドの射角を遮るよ」

「は、はい! ありがとうございます、王子先輩!」

骨伝導マイク越しに冷静に指示を出す。

私が夏純を完全に無被弾でカバーしているため、前線の一角だけは安定している。だが、チーム全体のバランスを見れば、相変わらずいつ誰が撃墜(落下)してもおかしくない危うさが漂っていた。

この程度の連携で午後からの実戦パトロールに出るつもりなのか……?

幹部候補生学校で叩き込まれた「生存率最優先」の戦術眼から見れば、ため息が出るような状況だ。

命を落とす危険性が最も高いのは「墜落」と「直撃による衝撃」。無理な突撃や雑な援護は、そのまま死に直結する。

訓練の合間の休憩時間、自前のアナライズ端末で記録映像を確認していると、片倉先輩――紫陽さんがタオルを持って近づいてきた。

「小早、やっぱりすごいね。小早が後ろにいると、夏純の動きが全然違うよ」

「……ありがとうございます、紫陽さん。でも、全体としてはまだ課題が多すぎます。特に前線と援護手の距離感が開きすぎです」

本音を口にすると、紫陽さんは困ったように苦笑した。

「ふふ、さすが士官学校出の中尉様だね。でも、私たちがここまで来られたのも、相原先輩達が命がけで引っ張ってくれたからなんだよ」

「……命がけだからこそ、無駄死にするような立ち回りは正さなきゃいけないんです」

言葉の端に、あの事故で失った中山班の仲間たちの記憶が重なり、思わず声が硬くなる。

紫陽さんはそれ以上追及せず、「午後のパトロールもよろしくね」と優しく私の肩を叩いて去っていった。

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