初非番の朝
非番の朝。
「自分で朝食は済ませるので、私の分の準備は要りません」と南野にメッセージを送信し、まだ誰も起きてこない早朝の食堂へと向かう。
静まり返った食堂で静かに食事を済ませようとしていると、予想外の人物が姿を現した。
「おはよう、早いね」
「相原先輩……おはようございます。先輩も早いですね」
「あ、うん。なんだか目が冴えちゃってねー」
朝が苦手だったはずの相原先輩がこんな時間に起きてくるのは珍しい。
「……もしかして、私の足音で起こしてしまいましたか?」
「ううん、気にしないで」
「先輩、朝ご飯食べますか?」
「私、非番の朝は抜く派だから大丈夫。ありがとう。小早は今日、どっか出かけるの?」
「まだこのあたりの土地勘がないので、午後から少し福岡の街を見てまわろうかと」
「そっか! 福岡は初めて?」
「はい。第2基地は北九州なので、何があるのかよく分からなくて……」
「私、案内しようか?」
「いえっ、とんでもない……! 先輩も貴重な非番ですし、そんな申し訳ないですから大丈夫です」
あまりに急な提案に恐縮して断ると、相原先輩は「そっかー」と少しだけ残念そうに呟いた。
「おはようございます」
そこへ、あくびを噛み殺しながら片倉先輩――紫陽さんが入ってきた。
「あ、紫陽おはよー」
「片倉先輩、おはようございます。では……私はこれで失礼します」
「うん、気をつけて行ってきてねー!」
背後から掛けられた明るい声に軽く会釈だけを返し、自室へと戻る。
誰もいない、眩しすぎるほどの青空の下。
一人で黙々と基礎訓練をこなし、全身にじっとりと汗をかいた。
部屋に戻って手早く洗濯を済ませ、共同のベランダに衣類を干し終えると、食堂の方から先輩たちの賑やかな話し声が聞こえ始めていた。
その賑わいに振り返ることもせず、私は静かに基地を後にした。




