終わりにしたくないという抵抗
1時間の休憩に入り、最初の30分をやり過ごしたところで、無性に空へ飛び立ちたくなった。
雲一つない快晴。こんな日に風を切って飛ぶのは、純粋に気持ちがいい。
上昇と降下を繰り返し、緩急をつけて自由に空中を舞う。
身体を包む風の感覚に身を任せていると、ふと、脳裏に安宅くんや中山班の仲間の顔が浮かんだ。
……懐かしいな
士官学校時代、放課後に神力が余っていたり回復したりすると、こうやってみんなで空中に飛び出して遊んでいたものだ。神力を使った鬼ごっこなんて、スピード感が桁違いで本当に面白かった。
「中山班は勇敢なヤツばかりだ」と、教官は事あるごとに誇らしげに自慢していたっけ。
でも――勇敢すぎたからこそ、あの日、みんな躊躇なく最前線へと飛び出していって、私一人を残して全滅した。
こうやって青空を飛びながら、記憶の中で思い浮かべることでしか、もう彼らと一緒にいることはできない。一緒に風を切ることも、笑い合うことも叶わない。
頬を叩く風に交じって、勝手に涙が溢れ出てくる。
どれだけ時間が経っても、あの日を「終わり」にすることなんてできない。……ううん、私自身が、終わらせたくなんてないんだ。
大きく宙を舞うと、太陽の光が驚くほど暖かく身体を包み込んだ。
まるで、背中を風がそっと押してくれているような気がした。
――みんな、大好きだよ。
心の中でそう空へ言葉を残し、ゆっくりと地上へと降り立つ。
「小早、お疲れ様」
足が地面に着くと同時に、声をかけてきたのは片倉先輩だった。
「片倉先輩!」
「今は紫陽でいいよ」
「……紫陽さん!」
優しく微笑む彼女に名前を促され、呼び直す。片倉先輩――紫陽さんは、この明光隊の中で唯一、私が本当の意図や立場を隠さずに心を許せる存在だ。
「自主練?」
「違いますよ。ただ……なんとなく飛んでいただけです」
どこか不思議そうな顔をする紫陽さんに「気にしないでください」と小さく笑って見せ、私はそのままその場を立ち去った。
胸の奥に残る温かさと切なさを抱えたまま、この後の訓練へと意識を切り替えるために。




