被弾0
午後は、援護手だけで編成されたチーム訓練が始まった。
このチームのリーダーを務めるのは、副隊長の鴨居先輩だ。
参加メンバーは鴨居先輩、片倉先輩、南野、そして私の4人。
本来なら攻撃手である夏純がこの隊に配属されたため、手薄になった援護側の戦力を補うための配置換えだろう。普通に考えて、後方を支える援護手は攻撃手以上の人数がいなければ隊の運用が破綻する。援護が追いつかなければ、前線は一瞬で崩壊するからだ。
訓練内容は、シミュレーターを使った実践形式。
「2人1組でペアを組み、2人の攻撃手を後方からサポートする」というシチュエーションで、2チームに分かれてスコアを競い合うことになった。
ペア分けは、鴨居先輩と南野のペア、そして片倉先輩と私のペアだ。
先陣を切ったのは鴨居先輩と南野のペア。
画面越しに観察していると、鴨居先輩の立ち回りはどこか「捨て身」の傾向が強い。下手ではないし、必死さは伝わってくるが、訓練での無駄な動きや悪い癖はそのまま実戦での死亡率に直結する。被弾回数もやや多く、民兵の援護手にありがちな「身を削って前線を守る」悪手そのものだった。
一方の南野は手先が器用で立ち回りも上手いが、やはりレベルとしては民兵の域を出ない。動きに波があり、鴨居先輩にカバーしてもらうことでどうにか成立している印象が拭えなかった。
「小早、行こっか!」
「はい! よろしくお願いします、片倉先輩」
「がんばろ!」
「はい!」
順番が回り、シミュレーターのポッドに入り込む。
最初は片倉先輩の癖や射撃タイミングを掴むため、少し引き気味に様子を見ながら立ち回った。
観察してみると、片倉先輩もどちらかと言えば鴨居先輩と同じ「自己犠牲型」の立ち回りに近い。この隊は前線への依存度が高すぎるのか、援護手の意識改革が必要そうだな……などと冷静に分析を巡らせる。
だが、片倉先輩は私の唯一心を許せる相手でもある。彼女の動きの癖を把握すると、私は彼女が最も動きやすくなる位置へすっと滑り込み、絶妙なタイミングで射撃ラインをカバーした。
本来、援護手が「別の援護手」までフォローに回るのは立ち回りとして非常に難易度が高い。けれど、こうして戦況をコントロールする工夫は、純粋にパズルのようで楽しかった。
訓練が終了し、シミュレーターから降りる。
「すごいよ小早、被弾ゼロ!」
南野が駆け寄ってきて、感心したように私の成績データが印字されたスコアシートを手渡してくれた。
「ありがとう」
素直にシートを受け取るが、心の中では冷静に冷めた自分がいる。
――この程度のシミュレーション、士官学校なら1年目で叩き込まれる基礎中の基礎だ。
正規の士官学校を出ている人間なら、被弾5以下に抑えることなんて「出来て当たり前」だった。




