紫陽との再会
空港の到着ロビーには、事前に連絡を受けていた通り、迎えのスタッフと共に一人の年配の軍人が立っていた。その穏やかな佇まいに、私は背筋を伸ばして歩み寄る。
「福岡基地の世田だ。よろしく頼むね」
「明日より福岡第二基地明光隊に派遣となります、東京都立川基地戦闘補佐・中山隊所属、王子小早中尉です! よろしくお願いします!」
「王子中尉、車へどうぞ。移動中に話をしよう」
世田大佐は、かつてお世話になった日吉大佐と同じ系統の、優しそうなおじ様という印象だった。日吉大佐が「のほほんとしたおじいちゃん」なら、世田大佐はどこか「厳格だが温かい校長先生」といった趣がある。
基地までの約一時間、車中で世田大佐は様々な話をしてくれた。今、明光隊はちょうどパトロール任務に出ており、大佐が自ら迎えに来てくれたのは、月に数回しかない基地視察の日が偶然重なったからだという。
緊張していた私の心を解きほぐすような大佐の気遣いに、福岡での生活に少しだけ希望が見えた気がした。
基地に到着し、案内された個室で荷物を解く。
殺風景な机の上に、私は大切に持ってきた一枚の写真を飾った。
士官学校の卒業試験の後、三人で撮った写真。
真ん中で笑う安宅君、そして不器用な表情の関。
……頑張るね。安宅君、関。
今はもう空に還ってしまったリーダーと、立川で「つまらなそうに」リハビリを続けているライバル。二人に心の中で語りかけていると、廊下から聞き慣れた、懐かしい足音が近づいてきた。
「小早!」
「紫陽さん!」
勢いよく飛び込んできた片倉紫陽さんと、私たちはたまらず抱き合った。中学の部活を辞めた後も、唯一私を理解し続けてくれた、温かい体温。
「小早が本当に派遣されるなんて思わなかった! さっき世田大佐から聞いて、もう、居ても立ってもいられなくて!」
紫陽さんは以前会った時よりも凛々しく、それでいて変わらない笑顔で私を見つめていた。軍の人事は直前まで知らされない。彼女も、まさか中学時代の後輩である私が自分の隊に「中尉」としてやってくるとは夢にも思っていなかったのだろう。
「みんなでご飯を食べるから、食堂に行こう!」
「はい!」
紫陽さんの弾むような声に誘われ、私は彼女の後に続いた。
明光隊の他のメンバーが誰なのか、その時の私はまだ知らない。
紫陽さんがいてくれる。それだけで、私の福岡での生活は明るいものになると信じて疑わなかったのだ。




