長期派遣
まさか、直々に指名で連絡が来るとは思わなかった。
それだけ小早が各地の「巡業」で積み上げてきた実績が、外部にも届いているということだろう。
デスクに広げた書類には、派遣要請を出してきた部隊の名が記されている。
「……明光隊、か」
管轄の資料をめくると、少し珍しい構成に目が止まった。
隊員全員が若い女性、しかも民兵出身者だけで構成された部隊だという。
「軍の上層部も、広報の材料にするつもりか……」
俺は思わず苦笑した。神力使いという存在をより身近に、あるいは「華やか」に見せるための客寄せパンダ的な側面があるのだろう。だが、現場の切迫感はそれどころではないようだ。
要請の理由は、戦力バランスの崩壊。
最近、成瀬という新人の攻撃手を入れたらしいが、まだ練度が低く、部隊全体の戦力が不安定になっているという。
加えて、女性だけの部隊という特性上、派遣要員も女性を強く希望しているとのことだった。
「戦力なら攻撃手だと言いたいところだが……小早ならその穴を埋めて余りあるだろう」
小早は本来「援護手」だが、その膨大なと冷静な状況判断力があれば、攻撃手としても十分に一線級で戦える。
それに、今の小早の状態を考えると、この人事は「渡りに船」でもあった。
この一年近く、小早はほぼ一ヶ月ごとに全国の基地を転々とする過酷な生活を送ってきた。立川に戻ってくるのは、異動の合間のわずか数日。
そんな生活が続く中で、彼女の顔には隠しきれない疲労とストレスが滲んでいる。
特に、立川に戻るたびに関から拒絶され、「自分はもう必要とされていないのではないか」と思い詰めている様子は、見ていて忍びないものがあった 。
……長期の派遣なら、腰を据えて休める時間も増えるだろう。民兵主体の隊なら、正規軍の最前線ほど殺伐ともしていないはずだ。
小早を派遣すれば、不安定な明光隊の戦力は一気に底上げされる。そして小早自身も、見知らぬ土地の、同年代の女の子たちが集まる部隊で、少しは肩の荷を下ろせるのではないか。
俺はそんな「親心」に近い思いを抱きながら、承諾の印を書類に押した。
窓の外で、激しい雷鳴が轟いた。
「……もうすぐ雨になりそうだな」
外の景色が暗転していく中、私はリハビリに励む関のいる地下訓練場の方角を一度だけ見やった。
今はただ、この長期派遣が、小早の心を癒やす休息になることを願うしかなかった。




