取り留めた
医師がICUから出てきて、俺と桜木に現在の病状を説明した。その言葉は深刻だったが、私たちが最も恐れていた「再起不能」という最悪の宣告ではなかったことに、心の底から安堵した。
「……関中尉の容態ですが、肺胞の広範囲な破裂と、急激な血圧上昇による毛細血管の損傷が見られます。ですが幸いなことに、脳内出血や心機能の永続的な不全は免れました」
医師の説明によれば、彼の肉体はボロボロだが、「神力使い」特有の高い自己再生能力と、若さゆえの回復力が期待できるという。肺のダメージも、適切な治療と神力による補助があれば、数ヶ月の静養で元に戻るレベルだそうだ。
「つまり、あいつはまた飛べるということで……?」
桜木の掠れた問いに、医師は力強く頷いた。
「時間はかかりますが、軍人として復帰することは十分に可能です。ただし、肉体以上に精神的なケアが必要になるでしょう。今回のような過剰なブーストを二度と起こさないよう、神力コントロールの再構築が必要です」
俺は、ベッドで眠る関の蒼白な横顔を見つめ、医師の言葉を噛みしめた。
「良かった……。本当にな……」
桜木が椅子に深く腰掛け、顔を覆った。俺も同じ思いだった。
彼が負ったダメージは決して小さくない。だが、それは「二度と飛べない傷」ではなく、「自分自身の弱さと向き合い、より強い軍人として生まれ変わるための試練」に留まったのだ。
「関、聞こえるか。お前はまた空へ戻れる。次はあんな無茶な飛び方ではなく、安宅が誇りに思うような、そして小早が安心して背中を預けられるような、そんな軍人になろうな。」
今はまだ、人工呼吸器の規則的な音が響く静かな部屋。
だが、その音は確実に、18歳の若き戦士が再び立ち上がるための鼓動を刻んでいた。




