特性を活かす
函館基地を離れるまで、残り二週間となった。
今日は、私の直属の上司であり教官でもある中山中佐との、久しぶりの面談だ。
「小早!」
部屋に入るなり、中山教官に大きな手で頭をわしゃわしゃとかき回された。
「お前の活躍、全部日吉大佐から聞いたぞ!」
教官の顔は、これ以上ないほど誇らしげだった。
函館での実戦と訓練を経て、私は一気に才能を開花させていた。最新の統計では、援護手ランキングで上位20位以内に食い込み、本来の専門外であるはずの攻撃手ランキングでも30位以内。
卒業から一年足らずの新人が、全軍でこれほどの順位に登りつめるのは異例中の異例だという。
面談の後、私は併設されている士官学校の訓練場へと向かった。
「王子先輩! 訓練、見学させてもらってもいいですか!?」
後輩たちの期待に満ちた眼差しに、私は少し照れながらも頷いた。
向かったのはシミュレーション室。実際の戦闘を予測した「戦闘模擬モード」のほか、援護、攻撃、それぞれの演練モードが選べる最新の設備だ。
私は「戦闘模擬モード:個人」を選択し、操縦桿を握る。
――開始。
四方から敵の影が現れる。
私は膨大な神力を惜しみなく機動に回した。
相手の攻撃を最低限のシールドで受け流しながら、敵の射程に入る前にその懐へと滑り込む。的確に心臓部を撃ち抜き、次へと転進。
最後の一体、ボスが現れたが、私にとってはもはや障害ですらなかった。
シミュレーターの風を切る音が止み、静寂が訪れる。
「……終わりました」
装置を外し、タオルで汗を拭きながら見学室へ戻ると、後輩たちのテンションは最高潮に達していた。
「早すぎる……」「あんな動き、教科書に載ってないですよ!」
教官までが、面白そうに目を細めて尋ねてくる。
「機動を極限まで速めて、相手に一度も撃たせないなんて、どこで勉強したんだ?」
私は少し考え、函館での日々を思い返して答えた。
「……函館基地での対人訓練です。あそこの先輩方に勝つには、機動を速めて、相手の弱点を突ける位置に誰よりも早く移動するしかなかったんです」
神力は飛行スピードを上げるほど消費が激しい。普通の人間ならすぐにガス欠を起こす戦法だ。
けれど、私にはそれだけの神力が有り余っている。
「神力タンク」という、かつては疎ましくさえ思った自分の特性が、今は確かな武器として私の翼を支えていた。




