破壊
不気味な粘鳴音と共に視界が断たれ、俺の身体は漆黒の闇へと引きずり込まれた。
「くっ……相変わらず、眠くなるな……ここは……」
肺の奥に滑り込もうとする空気は、あの時と同じ、甘ったるくも刺すような刺激を伴っていた。神経を麻痺させ眠気を引き起こす毒ガスと、獲物を溶かすための分解液が混ざり合った、この化け物の「胃袋」特有の死の残り香だ。
俺は即座に呼吸を限界まで抑え、残された酸素を脳にだけ回すように意識を研ぎ澄ませた。 ここで意識を手放せば、二度と立川の土を踏むことはない。
足元は、踏み込むたびにズルりと沈み込む弾力のある不気味な床。 粘膜に覆われた壁は神力を吸収し、俺の放つ「光」を無慈悲に呑み込んでいく。 暗がりの中、先が全く見えない迷宮のような内臓の壁を、俺は手探りで、しかし確実に奥へと進んだ。
……外では、中山が折れた足でシールドをだし、関と小早が命を削って道を作っている
あいつらを二度と絶望させないと誓ったはずだ。 かつてこの闇の中で自決を考え、中山に救われた情けない自分はもういない。
「――見つけたぞ」
ドク……ドク……と、大気を震わせるような重苦しい脈動。
薄暗い闇の最奥で、周囲の血管から神力を吸い上げ、生々しく拍動する巨大な核が、不気味な赤い光を放ちながら鎮座していた。
毒ガスに侵された身体は鉛のように重く、視界の端から眠気が襲ってくる。だが、俺は震える指先で武器を握り直し、渾身の神力を一点に収束させた。
「待たせたな。……すべてを終わらせて、全員で帰るぞ。これで……終わりだぁぁぁぁっっ!!!」
俺は弾力のある不気味な床を強く踏みしめ、全身の重みと全神力を一点に収束させて、生々しく波打つ「心臓」へと神力を突き立てた。
手応えは、肉を裂く感触ではなく、硬質な結晶が粉々に砕け散るような凄まじい衝撃だった。 次の瞬間、核が耐えきれずに真っ白な光と毒ガスを噴き出し、大気が激しく震動する。
敵の巨躯が断末魔のような悲鳴を上げ、内側から激しく痙攣するのが伝わってきた。 噴き出す毒ガスの激流に飲み込まれそうになりながらも、俺は光の奔流を見据え、その爆発的な圧力に身を任せて「出口」へと跳ねた。
漆黒の闇が裂け、視界が一気に真っ赤な夕焼けの色に塗り替えられる。
背後で巨大な化け物が、内側から爆ぜるように崩壊していく。 砕け散る装甲の破片は夕焼けに紛れたノイズのようだ。
空中で姿勢を制御しながら、俺は掠れた視線の先、俺の名前を叫びながらこちらへ急行してくる三人の影を捉えた。
……持ち帰ったぞ。勝利も……俺自身の無事もな
目が開けられない……凄く、眠いな……
俺は崩れ去る絶望の残骸を背に、仲間たちが待つ光の空へとただ、真っ直ぐに落ちていった。




