俺を守るな!
「小早っ!!」
通信機越しに響いたのは、鋭い破裂音と、続いて漏れ出た短い悲鳴だった。
視界の端、敵の放った不可視の衝撃波が小早の腹部を直撃し、彼女の小さな身体が大きくのけぞるのが見えた。
くそっ、よりによって、あそこかよ……!
「小早! 応答しろ! 呼吸しろ、小早!!」
呼びかける俺の耳に届くのは、ヒュー、ヒューという、喉の奥を掻きむしるような痛々しい喘鳴だった。 激痛による過呼吸だ。 肺挫傷の古傷だ。空気を吸うたびに肺にガラスの破片が突き刺さるような感覚に、あいつは今、暗闇の中で溺れている。
「今すぐ行く! 持ちこたえろ!」
俺は目の前の敵を振り切り、小早の元へ機動を翻そうとした。 だが、その瞬間、目の前の「超重装甲種」が漆黒の銃口を俺に固定された。
動けない……っ!
俺が今、攻撃の手を緩めれば、一瞬で敵の弾幕に飲み込まれる。すなわち「死」だ。 俺一人が死ぬならまだいい。だが、今ここで俺がポジションを放棄すれば、俺を信じて背後を守っているボロボロの小早も、足を折って障壁を維持している中山教官も、全員がまとめて蜂の巣にされる。
俺にできるのは、血の滲むような思いで引き金を引き続け、敵の意識を自分に釘付けにすることだけだった。
「っ……、はぁっ、……せ、き……、まえ……っ!!」
通信から、血を吐き出すような小早の声が聞こえた。
見れば、過呼吸で視界も朦朧としているはずのあいつが、震える指先を空中に伸ばし、俺が次の攻撃へ移るための神力のベースやシールドを無理やり刻みつけていた。
「小早……お前、……やめろ! もういい、俺を守るな!!」
叫びは爆音にかき消される。 小早は、脂汗で顔を真っ青に染めながら、俺が戦い続けるための「道」を作り続けている。 俺を死なせないために、自分自身が激痛で崩れ落ちそうになりながら、その命を削って俺の背中を支えている。
守られているのは、俺の方だ。
安宅が命を懸けて繋いでくれたあいつを、俺が守るって決めたのに。 いざとなれば、俺はあいつが苦しむ姿をただ見ていることしかできないのか。
「あああああああああああああッ!!!」
俺は己の無力さを呪い、咆哮した。
指先まで痺れが回っているはずの小早が作ってくれた、震える光の足場。 俺はその上に乗り、全身の神力を束ねる。
安宅、見てるか……。俺は、……情けなくて、死にそうだ。……でも、あいつが俺を信じてベースを作るなら、俺は一秒でも早く、この絶望をぶち殺すしかないんだ……っ!!




